不倫から夫婦関係を再構築する

執筆者:公認心理師・山崎孝

不倫の終わりは解決でも、再構築のスタートでもありません。多くの場合、不倫された側はスタートラインの遙か後方にいます。再構築のスタートラインに着き、スタートを切り、何とかやっていけそうと実感する。その過程をサポートします。

不倫された側の苦しみ
  • 気がつけば不倫のことばかり考えている
  • ふとしたときにフラッシュバックする
  • 同じことを何度も問い詰めてしまう
  • 今この瞬間も何をしているのだろうと不安になる
不倫した側の辛さ
  • こんなに傷つけてしまって後悔しかない
  • どうすれば傷を癒やせるのだろう
  • 毎日責められて心が折れそうになる
  • 元に戻れる日は来るのだろうか

不倫によって負う喪失体験と心の傷

不倫によって負うのは、これまで2人で築き上げてきたものの喪失体験です。また、自分の存在や生活を脅かすほどの強烈なショック体験による心の傷です。

不倫による喪失体験

不倫・浮気は、これまで幸せだと思っていた夫婦生活や家庭生活を喪失させる体験です。また、過去の出来事や思い出の意味が変わってしまうことが、新たな喪失を招くこともあります。

夫婦生活・家庭生活の喪失

何だかんだありながらも、幸せと感じていた夫婦関係や家庭生活が一変します。

幸せな記憶の喪失
不倫が明るみに出ると、これまで幸せだと感じていた日々や出来事が色褪せて、疑念や痛みに取って代わられます。幸せな記憶が失われ、裏切られた感情に置き換わります。

安定した家庭生活の喪失
夫婦に生じる緊張感、不信感は、口にしなくても家族全員に伝わるものです。コミュニケーションの減少など招き、家庭の安心感が損なわれていきます。家庭が安心安全な場所でなくなると、特に子どもに悪影響を及ぼします。

過去の意味の変化

不倫の発覚によって、これまでの出来事や思い出が新たな意味を帯びることがあります。

記念日や特別な瞬間が痛みを思い出させる機会に
記念日や特別な瞬間が、不倫・浮気を知った後に、まったく違う意味に変わってしまうことがあります。例えば結婚記念日です。結婚記念日は過去の幸せを振り返り、未来への期待を共有する日です。不倫・浮気後は、裏切りの痛みを思い起こさせる日になることがあります。

共有した経験の価値の喪失
夫婦として共有した経験や成長の瞬間が、不倫・浮気によって価値を失い、痛みの源に変わることがあります。例えば、デートでよく行った場所が、裏切りを思い出すきっかけになることがあります。

喪失のケア

不倫から再構築に向かうには、喪失の痛みのケアがついて回ります。カウンセリングの場ではもちろんのこと、普段の生活で行うケアについても話し合われます。

不倫による心の傷

不倫・浮気された側の傷の深さは、した側の想像を大きく上回っているのがほとんどです。トラウマレベルのこともしばしばです。

トラウマ

トラウマとは、強烈なショック体験による心の傷のことです。PTSD(心的外傷後ストレス障害)として知られています。

PTSD(Post Traumatic Stress Disorder :心的外傷後ストレス障害)は、死の危険に直面した後、その体験の記憶が自分の意志とは関係なくフラッシュバックのように思い出されたり、悪夢に見たりすることが続き、不安や緊張が高まったり、辛さのあまり現実感がなくなったりする状態です。

PTSD|こころの病気を知る|メンタルヘルス|厚生労働省 より引用

自分の存在が脅かされる体験です。昨日まで安心・安全な世界が、危険な世界に変わった体験です。

トラウマによる症状

パートナーの不倫で傷ついている人にPTSDの症状を説明すると、「その通りです」と返ってくることがよくあります。不倫された方がよく訴えられるのは、以下の2つです。

侵入症状
フラッシュバックとして知られています。つらい記憶や感情が突然よみがえります。

過覚醒
不倫・浮気が起こるまでは、世の中は概ね安全でした。他人は概ね安全でした。不倫後は一変します。世の中と他人は概ね危険です。常に警戒していないと再び傷つけられてしまいます。そのため、危険を探知するセンサーがとても敏感になります。

心の傷のケアも継続して取り組んでいくものです。カウンセリングの場ではもちろんのこと、普段の生活で行うケアについても話し合われます。

心の傷のケアから始めて、これまでの関係を振り返る

不倫からの再構築は、何はともあれ、心に負った傷のケアから始まります。ある程度のケアがなされなければ、再構築へのスタートラインにも立てません。スタートしてからもケアは続きます。

二度と同じことを繰り返さないための取り組みとして、これまでの夫婦関係を振り返り、コミュニケーションの改善などに取り組むこともあります。