不倫のカウンセリング:再構築をサポート

執筆者:山崎 孝
公認心理師・ブリーフセラピスト・家族相談士

不倫・浮気からの再構築をサポート

突然の不倫の発覚。信じていたパートナーの裏切りに、心が引き裂かれるような痛みを感じているのではないでしょうか。

「なぜ、私が…」
「これからどうすればいいの…」
「この痛みはいつまで続くの…」

そのような思いで押しつぶされそうになっているあなたへ。

また、過ちを犯してしまい、パートナーの深い悲しみに向き合う中で、自分を責め、どのように接してよいのか分からず苦しんでいる方もいらっしゃるでしょう。

不倫による深い心の傷は、必ずしも時間が解決してくれるものではありません。しかし、適切なケアと支援があれば、回復への道があります。実際に、多くの方が同じ痛みを乗り越え、新たな関係を築いています。

当カウンセリングルームでは、経験豊富な公認心理師が、お二人の状況を丁寧に理解し、回復に向けた具体的な道筋を一緒に見つけていきます。

心の傷を理解する

傷の大きさの認識は「された側」と「傷つけられた側」で大きく異なることが多いです

パートナーの不倫は、あなたの心に深い傷を残します。それは、単なる一時的なショックではなく、過去の幸せな思い出、現在の生活、そして未来への希望、すべてに影を落とす深刻なものです。ここでは、その心の傷と具体的に向き合っていきます。

関係の回復・再構築に向かうには、傷つけた側が傷の大きさと深さを理解すること、そのケアに努めることが欠かせません。ここでは、された側が負った傷をできるだけ具体的に説明します。結構な文章量になりますが、あえて省略せずに掲載します。

過去・現在・未来の傷

パートナーの不倫・浮気は、これまで築いてきた過去、そして現在、これから歩むはずだった未来にまで、広く深く影響を与えるものです。

ここでは、そうした「時間を越えて続く心の傷」を、過去・現在・未来という三つの視点から見つめていきます。

過去の傷

不倫・浮気は、現在だけでなく、過去の思い出にも影を落とします。それまで幸せだと感じていた出来事が、後から振り返ったときに痛みや疑念と結びついてしまうことがあります。

  • 一緒に過ごした楽しい時間が、嘘や裏切りのなかにあったように思えてしまうことがあります。
  • 記念日や家族の行事など、大切な日が苦しい記憶に変わってしまうことがあります。
  • これまで信じて積み重ねてきた関係の意味を見失い、「あのときの気持ちは本物だったのか」と自問してしまうこともあります。

知人にスマートフォン向けのショート動画作成を勧められたので、がんばって作ってみました。過去編・現在編・未来編の3つがあります。

現在の傷

不倫・浮気が明らかになったとき、多くの人は大きなショックと混乱を経験します。その影響は日常生活にも及び、心の落ち着きを失い、これまで普通にできていたことが難しく感じられるようになります。

  • 心が常に緊張状態にあり、不安や動揺が収まりません。
  • パートナーとの距離感が分からなくなり、会話や接触にぎこちなさを感じます。
  • 信頼していた人に裏切られたことで、心の居場所を失ったように感じ、深い孤独や虚無感に包まれることがあります。

未来の傷

不倫・浮気は、これからの人生に対する見通しや希望にも深い影響を与えます。未来を思い描くことが怖くなったり、再び誰かを信じることに強い抵抗感を持つようになったりすることがあります。

  • 「また裏切られるのではないか」「この苦しみはいつ終わるのか」といった不安がつきまといます。
  • 記念日や旅行など、楽しみな予定があっても、心から楽しむことが難しくなります。
  • 再び恋愛することや、新しい関係を築くことに対して、恐れや不信感を抱いてしまうことがあります。

このように、不倫・浮気による心の傷は「今この瞬間」だけの問題ではありません。過去・現在・未来にわたって影響を及ぼす深いものです。

以下は「過去・現在・未来の傷」をプレゼンテーション動画にまとめたものです。

トラウマ症状

パートナーの不倫・浮気は、心に大きなショックをもたらします。その衝撃は「心のケガ」とも言えるほど深く、時にトラウマ反応を引き起こします。

侵入症状(フラッシュバック、悪夢など)

突然、頭の中によみがえる不倫の場面や言葉。忘れたくても繰り返し思い出される記憶が、日常のささいなきっかけで襲ってくることがあります。夜眠ろうとしても、夢に現れて眠れないこともあります。

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過覚醒(警戒心の高まり、緊張、不安)

常に気持ちが張りつめた状態になり、周囲に敏感になったり、音や言葉に過剰に反応したりします。リラックスできず、身体もこわばり、疲れやすくなります。

危険・不安センサーが極度に敏感になっているとたとえることができます。これ以上の傷は、小さなものでも致命的になるかもしれません。だから、センサーの感度を最大にする必要があるのです。

通常であれば、パートナーの帰宅がいつもより30分程度遅くても気になりませんが、この状態では不安がコントロールできなくなります。鬼電、鬼LINEは過覚醒がそうさせます。

回避・逃避(話題や場所を避ける)

不倫を思い出すような場所や話題、相手との接触などを無意識に避けるようになります。たとえば、テレビの浮気に関する話題を見られなくなったり、特定の場所に近づけなくなったりします。

感情の麻痺(感情が湧かない、実感が持てない)

感情がうまく出てこず、心が動かなくなったように感じることがあります。泣きたいのに泣けない、嬉しいはずのことにも反応できないなど、感情の機能が鈍くなったような状態です。

思考と感情の陰性症状(自責、他者への不信)

「自分が悪かったのではないか」と自分を責める気持ちや、「誰も信じられない」といった不信感が強くなります。自己評価が下がり、自信を失っていくこともあります。

これらの反応は、非常につらいものですが、大きなショック体験に対して心が自分を守ろうとする自然な反応でもあります。ただし、日常生活に支障が出るほどの強さで続いている場合には、心のケアや専門的なサポートを受けることが大切です。

対人関係の変化

パートナーの不倫・浮気は、本人だけでなく、その人の周囲との関係にも影響を与えます。傷ついた心は、これまで築いてきた信頼やつながりにまで影を落とし、人との関わり方に変化をもたらします。

社会や他者への信頼の喪失

「誰かを信じていたのに裏切られた」という経験は、他の人に対しても「いつか裏切られるかもしれない」と感じさせてしまうことがあります。人を疑う気持ちが強くなり、素直に頼ることや心を開くことが難しくなることがあります。

自分に対する信頼の低下(自己否定、自責)

「見抜けなかった自分が悪いのではないか」「自分に魅力がなかったのではないか」と、自分を責めてしまう気持ちが生まれやすくなります。その結果、自分への信頼や自己肯定感が下がり、自信を持てなくなることがあります。

交友関係の減少、孤立化

気持ちが落ち込んだり、人を信じることが難しくなったりすることで、人付き合いを避けるようになることがあります。話す気になれない、何を言われるか不安、と感じることで、以前は心地よく感じていた関係からも距離を取ってしまうことがあります。

家族との葛藤やすれ違い

実家の家族や親しい親族に対しても、素直に助けを求められなかったり、思いをわかってもらえないと感じてしまうことがあります。逆に、心配から過干渉になる家族とのやりとりがストレスになることもあります。

職場や地域社会での関係悪化

集中力の低下や気分の波により、職場での業務に支障が出たり、同僚との会話がしんどく感じられることもあります。また、地域の集まりなどに出ることが負担となり、人との接点がさらに減ることもあります。

このように、不倫・浮気の傷は、直接関係のない人との関わりにも大きな影響を与えることがあります。人間関係の変化に自分を責めすぎず、少しずつ心を整えながら、必要なときに助けを求めることが大切です。

感情の変化

パートナーの不倫・浮気は、感情の面にも大きな影響を及ぼします。強いショックを受けた心は、さまざまな感情を激しく揺れ動かせることになります。その感情の波に圧倒され、どう扱ってよいか分からなくなることも少なくありません。

抑うつ・悲嘆(気分の落ち込み、涙もろさ)

強い喪失感と絶望から、気分が落ち込み、涙もろくなることがあります。起きるのがつらい、何をしても楽しく感じられないといった抑うつ状態になることもあります。

怒り(パートナー、相手、不公平な状況への怒り)

裏切ったパートナーや不倫相手への怒りはもちろん、「なぜ自分だけがこんな目に」「正直に生きてきたのに報われない」といった理不尽さに対する怒りがこみ上げてきます。怒りの感情が収まらず、自分でもコントロールが難しいと感じることもあります。

焦り・混乱(現実をどうすればよいか分からない)

突然の出来事に、どう対応すればよいか分からず、焦りや混乱に陥ることがあります。何が正しいのか、自分はどうしたいのか分からなくなり、気持ちが定まらない状態が続くこともあります。

無力感(何をしても変わらないという気持ち)

どんなに悩んでも、状況が変わらないと感じ、「どうせ何をしても無駄」と無気力になってしまうことがあります。気持ちが空回りするように感じ、行動する意欲が失われていきます。

罪責感(自分のせいだと思ってしまう)

「私が至らなかったのかもしれない」「もっと早く気づいていれば」と、自分を責める気持ちが出てくることがあります。実際には不倫・浮気の責任はされた側にはないにもかかわらず、自責感を抱いてしまう人も少なくありません。

身体症状(不眠、食欲不振など)

感情の変化は、身体にも影響を及ぼします。眠れない、食欲がなくなる、逆に食べ過ぎてしまう、動悸や息苦しさを感じるなど、心身のバランスが崩れてしまうことがあります。

これらの感情の変化は、自然な反応であり、誰にでも起こり得るものです。大切なのは、自分の感情を否定せず、少しずつ丁寧に向き合っていくことです。

再構築の困難と希望

再構築の可能性は常にありますが、同時に困難も伴います

再構築は決して簡単な道のりではありません。「もう別れようか…」と考えることもあるでしょう。どちらの選択が正しいのか、迷うことがあるのは当然のことでしょう。

再構築を目指す道のりでは、以下のような困難が待ち受けています。しかし、それを乗り越えた先に新たな希望が見えることもあります。

傷つけた側が直面する困難

不倫からの再構築で直面する困難の一つが、傷つけた側が傷ついた心をケアすることのむずかしさです。残念ながら、ケアの主役は傷つけたパートナーです。カウンセラーは脇役・サポート役にしかなれません。

  • 怒りなど強い感情の対処
    • 傷ついた心が回復する過程では、怒りなどの強い感情を向けられることは避けられません。傷つけた側は受け止める必要があります。
    • しかし、怒りや悲しみが頻繁にぶつけられることで、疲労感や無力感を感じることがあります。受け止めきれず、逆ギレしてしまうこともめずらしくありません。
  • 新たな行動の習慣化
    • 信頼を取り戻すために行動を変えることが必要です。
    • しかし、人間は習慣の生き物です。過去の行動パターンから抜け出すのがむずかしいときがあります。
  • 罪悪感や自己嫌悪
    • 自分の行為が引き起こした結果に向き合うことは、強い罪悪感を伴います。「自分は許される価値がない」と感じ、関係修復への意欲を失いかけることもあります。

傷つけられた側が直面する困難

不倫をされた側は、先の紹介したトラウマに相当する傷を負い、また、再構築の過程で多くの葛藤に直面します。

  • 再発の不安
    • パートナーの言葉や行動に疑念を抱き、過剰に警戒してしまうことがあります。職場不倫のように毎日顔を合わせる状態なら尚更です。
    • 完全な安全を感じるのが難しいため、心が常に緊張状態になります。
  • 怒りや悲しみなど感情のコントロール
    • 感情の波が激しくなり、自分でもその制御がむずかしいと感じることがあります。
  • 新たな傷つき
    • 傷つけた側の「前を向こう」という言葉や、ときには逆ギレされることによって、新たな傷を負うことがめずらしくありません。

再構築における重要な要素

再構築を果たすためにはいくつかの重要な要素があります。

  • 心の傷のケア
    不倫による心の傷は、時間だけでは癒えません。きちんとケアしていく必要があります。
    • パートナーによるサポート:傷つけた側は相手の感情を理解しようと努めて、不安を軽減する行動を取らなければなりません。
    • 自分でケア(セルフケア):リラクセーション法など自分でのケアも必要です。カウンセリングではセルフケア方法の提案も行います。
  • お互いの理解と協力
    お互いの感情や考えを共有し、協力して再構築に向けた取り組みを進めることが必要です。
    • コミュニケーションの向上:感情的な対立を避け、冷静に話し合うことが必要です。
    • 感情のコントロール:怒りや悲しみを適切に表現し、相手を攻撃しない方法で表現します。
  • 専門家のサポート
    2人だけで解決するのはむずかしい場合が多いです。特にコミュニケーションが困難になります。専門家のサポートを検討して下さい。
    • カウンセリングの活用:専門家が間に入ることで、感情の衝突を穏やかにし、建設的な話し合いが進むことがあります。
    • 心理教育:不倫が引き起こす心理的影響について学ぶことで、状況を客観的に捉えられるようになります。

再構築は決して一夜にして成し遂げられるものではありません。数ヶ月、あるいは数年という時間がかかる場合もあります。しかし、多くの夫婦が再構築を果たしているのも事実です。カウンセリングは伴走者としてその過程を支えることができます。

再構築の3つのプロセス

再構築の3つのプロセスとは

不倫がもたらした深い傷を抱えたまま、関係を再構築していくのは決して簡単なことではありません。しかし、多くの夫婦が困難を乗り越え、再び信頼関係を築いているのも事実です。

再構築は一夜にして成し遂げられるものではなく、時間と努力、そして具体的なプロセスが必要です。ここでは、そのプロセスを3つのステップに分けて紹介します。

ステップ1:心の傷のケア

不倫によって負った心の傷を癒すためには、傷つけた側の積極的な取り組みが必要です。このプロセスは「心の傷を理解する」「不安を和らげる行動を取る」「感情を受け止める」の3つを柱としています。

  • 心の傷を理解する
    • 傷つけられた側の痛みは予想以上に深刻です。先に述べた通り、現在だけではなく、過去も未来も傷ついています。こ傷の大きさや深さを理解することが、再構築の出発点となります。
    • また、理解した内容を言葉にして相手に伝えることも重要です。自分が理解していても、理解していることが相手に伝わらなくては意味がありません。
    • 心の傷は骨折と似ています。傷つけた側が前へ向かう準備ができてきても、傷つけられた側の骨がひっつくまで待たなくてはいけません。骨がひっつくには適切な治療と時間が必要であり、コミュニケーションがその役割を果たします。
  • 不安を和らげる行動を取る
    • 傷つけられた側は、再び裏切られるのではないかという不安を抱えています。この不安を軽減するには、傷つけた側が行動を変える努力が必要です。
    • ただし、これらの行動は独りよがりではなく、相手と話し合いながら進めるべきです。できない約束をしないことや、現実的な範囲で行動制限を受け入れる柔軟性が求められます。
  • 感情を受け止める
    • 傷つけられた側が怒りや悲しみをぶつけるのは、自然な回復のプロセスの一部です。これを逆ギレや防御的な態度で返すと、新たな傷を生む原因になります。しっかりと耳を傾け、感情を受け止める姿勢が必要です。
    • ただし、感情を受け止め続けることが難しい場合もあるため、その際はカウンセリングを活用することをおすすめします。カウンセラーは、感情を整理するサポートや、まだ言葉にされていない気持ちを引き出す手助けを行います。

ステップ2:協力関係の構築

不倫が発覚した直後は、夫婦間に「被害者」「加害者」という立場が生まれます。最初はやむを得ませんが、いつまでもその関係でいるわけにはいきません。再構築に向けた協力関係を築くことが必要です。

  • コミュニケーションの改善
    • 感情的な衝突を避け、冷静に話し合える環境を整えることが大切です。特に、傷つけた側は相手の感情に寄り添う努力が求められます。
  • 信頼関係の再構築
    • 傷つけられた側の不安や疑念を理解し、信頼を取り戻すための行動を積み重ねる必要があります。
  • 共通の目標を設定する
    • 「再び笑顔で過ごせる関係を築く」といった具体的な目標を共有し、それに向けて協力することが重要です。

ステップ1から大きな行動の変化はありませんが、質が変わってきます。不倫にのみ焦点を当てるのではなく、夫婦関係全体に焦点が移っていきます。

ステップ3:不倫の背景を理解する

再構築を目指す際には、不倫の背景を振り返り、再発を防ぐ取り組みを進めることも必要です。

  • 夫婦関係の振り返り
    • 不倫の背景には、夫婦間の問題が影響していることがあります。この場合、お互いの考えや感情を丁寧にすり合わせる作業が必要です。
  • 個人の課題の理解
    • 傷つけた側の個人的な背景(例えば、過去のトラウマや感情処理の苦手さ)が関与している場合もあります。これを理解し、向き合うことが再発防止につながります。個人のカウンセリングを行うこともあります。
  • 再発防止の具体策
    • 具体的な防止策を二人で考え、実行に移すことで、安心感を共有できます。「お互い忙しくても、週1回は夫婦で話し合う時間を確保する」などです。

再構築の過程は直線的ではありません。ここまでのプロセスを行ったり来たりするのはめずらしくありません。同じことを繰り返していると思うこともあります。しかし、そのたびに夫婦間の絆を深める機会にもなり得ます。

カウンセラーは、この過程を一緒に進む伴走者として、2人が完走できるようにサポートします。

夫婦カウンセリングの意義

カウンセリングルームで穏やかに話し合う夫婦と見守るカウンセラー

不倫による心の傷や信頼の喪失に直面したとき、夫婦やカップルだけで再構築を進めるのは困難なことが多いです。感情的な衝突や不信感の中で、前向きな対話を重ねることは簡単ではありません。こうした状況において、夫婦カウンセリングは有効な手段となります。

夫婦・カップルカウンセリングでは、専門知識を持つカウンセラーが第三者の視点からサポートします。以下のような役割を果たします。

  • 感情的な衝突を和らげる
    • 傷つけられた側の怒りや悲しみ、傷つけた側の罪悪感や防衛的な態度を冷静に整理し、双方が話しやすい安全な環境を整えます。
  • 建設的な対話を促進する
    • 客観的な第三者の立場から、お互いの感情や考えを理解し、傷の癒しや関係の再構築に向けた具体的なステップを話し合えるようサポートします。
  • 心理的な教育
    • 不倫がもたらす心理的な影響について説明し、再構築の過程で生じる課題に備える知識を提供します。

カウンセリングは「話を聞いて終わり」ではありません。カウンセラーは現状をしっかりと把握し、具体的なアドバイスや問題解決のためのサポートを行います。

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