実家問題

執筆者:山崎 孝(公認心理師・ブリーフセラピスト・家族相談士)

夫婦に起こる問題の一つに、嫁姑問題に代表される実家に関わる問題があります。嫁姑の関係が問題になるのは、例えば姑による息子夫婦への過度な干渉や介入です。その背景には、あいまいな境界があります。境界の問題を中心に、カウンセリングに持ち込まれる実家問題を紹介します。

境界

自分の家族と他人の家族の間にある内外の境界、家族内で親子の間にある世代間境界

境界とは、何かを他と区別するものです。個人レベルでは自他の境界があります。夫婦・家族関係において重要なのは、内外の境界世代間境界です。

上図は結婚前の妻(彼女)と夫(彼)の家族と境界を示しています。妻(彼女)家族と夫(彼)家族との間の境界が内外の境界です。家族内での親子間の境界が世代間境界です。

子どもが独立すると親との間に内外の境界が引かれる

結婚によって息子・娘は新しい夫婦として独立しました。親との間に内外の境界ができることになります。

あいまいな境界は干渉や介入を容易にする

この境界があいまいになると、親の過剰な干渉や介入を招きやすくなり、それが夫婦の危機に発展することがあります。

両親と子ども夫婦の境界があいまいになる原因は、

  • 親が子離れできない
  • 子が親離れできない
  • 子どもが親への経済的依存から抜け出せない
  • 親子が共依存関係になっている
  • 2世帯同居のため境界があいまいになりやすい

などが考えられます。

2世帯同居であっても適切な境界が必要

2世帯同居であっても適切な境界が必要です。起きやすいのは、夫婦で決めるべき事柄に親の干渉を許すことです。親に決定権を奪われてしまうこともあります。

子どもの教育方針は夫婦で決めるべきものです。それが夫と夫の親で決められると妻は疎外感を感じます。夫婦の関係性に悪影響を及ぼすのは想像に難くありません。

親に経済面で頼っている同居の場合、干渉を拒否しにくい心理状態になるのもやむを得ません。このケースの夫の立場の人は、同居前に決定権の話を親とすり合わせしておくことが望ましいです。

親の介入が子ども家族の三角関係を招くことも

このようなケースが続いて夫婦の関係が悪化すると、妻は子どもを自分の味方につけようとすることがあります。このような1対2の関係を三角関係といいます。どちらか一方だけの味方につきたくない子どもは苦しむことになります。

実家に関わる問題の多くに境界の問題が見られます。実家との関係性については、結婚を決めたときに話し合いをしておくのが望ましいです。交際時に違和感を感じているなら尚更です。

参考ページ結婚前カウンセリング

その他の実家問題

同居・近居

同居・近居には経済的メリットや、子育ての協力を得られるなどのメリットがありますが、一方で、ここまで述べた家族の境界、プライバシー、自立性、日常生活の様々な側面に影響を及ぼします。

同居の場合は生活空間を共有することで生じる摩擦や、家事分担、生活リズムの違いなどが問題となります。近居の場合、頻繁な往来や干渉により夫婦の独立性を保てず、問題になることがあります。

これらのメリットとデメリットのバランスを取ることが、良好な家族関係を維持する上で重要となります。

介護

介護は身体的、精神的、経済的に大きな負担を伴います。時間、労力、経済的資源の配分だけでなく、家族の役割分担、個人の生活の質、キャリアへの影響など、多岐にわたる側面を持ちます。また、介護に対する考え方や価値観の違いが、家族間の対立を引き起こすこともあります。

早い段階から家族で話し合い、将来の見通しを立てることが望ましいです。地域の介護サービスや支援制度について情報を収集し、専門家のアドバイスを受けることも必要です。介護は長期にわたる課題であり、状況の変化に応じて柔軟に対応していくことが求められます。

子育て

子育ては、実家との関係で摩擦が生じやすい分野の一つです。祖父母の愛情や経験に基づく助言は貴重である一方、それが過度になると夫婦の育児方針と衝突し、ストレスの原因になります。また、世代間での育児観の違いや、現代の子育て事情に対する理解の差が、対立を引き起こすこともあります。

育児・教育方針を夫婦で統一させるのがむずかしいこともあります。夫婦で統一できていない状態で実家の干渉を許すと問題がこじれるのは想像に難くありません。育児に限ることではありませんが、まずは、夫婦の主体性を保つことです。

パートナーと親の不和

パートナーと親の不和は、文化的背景の違い、コミュニケーションの齟齬、価値観の相違などの要因から生じます。それらが顕在化しやすいのは、結婚初期や子どもの誕生など、ライフステージが変わる時期です。 パートナーと実家の対立は、夫婦の間に板挟み状態を生み出し、夫婦関係そのものを脅かす可能性があります。

パートナーと実家の不和は、深刻な夫婦問題に発展することがあります。子どもをパートナーの実家に連れて行かないことを数年続けた結果、パートナーが夫婦を続けることに疲れて離婚を選択することがあります。

実家と距離を置くことで、夫婦問題としての深刻化を回避できている例もあります。しかし、問題が深刻化し、自力での解決が難しいと感じた場合は、専門家のサポートを受けることも検討すべきです。

夫婦カウンセリング(心理療法)について

当カウンセリングルームでは、夫婦の関係性・相互交流個人の思考と行動のパターンの双方に働きかけることによって問題解決をサポートします。家族療法・ブリーフセラピーによって夫婦の関係性・相互交流に働きかけます。認知行動療法によって、個人の思考と行動のパターンに働きかけます。

家族療法とは、家族など複数人から成る人間関係の関係性相互交流に焦点を当てます。関係の変化相互交流の変化を通じて、悩み・問題の改善・解決を図るカウンセリングです。

ブリーフセラピー(短期療法)とは、家族療法の一学派です。「短期」の名の通り、効果的かつ効率的な改善・解決を志向するカウンセリングです。

認知行動療法とは、状況や環境に合わせて思考行動柔軟選択することで、悩み・問題の改善・解決を図るカウンセリングです。

認知行動療法は、主に個人を支援する心理療法です。適応的な思考と行動を選択することによって解決を図ります。家族療法・ブリーフセラピーでは、問題は集団成員の相互作用にて生じていると捉えます。相互作用の変化を通じて解決を図ります。

カウンセリングのご案内

料金・その他詳細

個人60分:8,000円
90分:12,000円
夫婦・カップル90分:12,000円
お支払い方法現金・クレジットカード・電子マネー
備考税込価格、延長料金等ナシ、面接報告書は有料にて

電子マネーは一部お取り扱いできないものがあります。詳しくは詳細ページでご確認下さい。

カウンセリングの流れ

お申し込みから終結・フォローアップまでの流れについて説明しています。完全予約制で対面とオンラインの両方に対応しています。事前の手続きをオンラインで行うことにより、面接時間はカウンセリングに集中できるようにしています。

カウンセラーのメッセージ

心はどこにあるのでしょうか。脳や心臓を指す人もいますが、「人間」という言葉が示すように、心は「人の間」、人間関係の中にも存在します。これは、私が依拠する家族療法の理論とも一致する考え方です。

人間関係は、心の傷の原因にも、そして癒しの源にもなります。多くの悩みは人間関係から生じますが、同時に、人間関係を通じて癒されます。例えば、上司の言葉に傷つき、同僚や友人に話を聞いてもらってリフレッシュする経験は、まさにこのことを示しています。

しかし、「日々の生活が息苦しい」「自分らしく生きるのが難しい」といった深い悩みや、家庭内トラウマのような心の傷には、単に話を聞いてもらうだけでは不十分な場合があります。専門的なサポートが必要となります。

同時に、安心・安全な場所(人間関係)も重要です。自由に話せ、否定されず受容され、無用なアドバイスをされない環境が、大きな悩みや深い心の傷の回復を可能にします。

私がライフワークとする自信も人間関係を通じて育まれます。自信には「自己効力感」(能力的な自信)と「自己肯定感」(存在や人格への肯定的評価)があります。特に自己肯定感の問題を解決するには、そのままの自分でOKという体験を積み重ねる必要があり、これは人間関係を通じてしか得られません。

私は、専門的なサポートと安心・安全の人間関係を提供することを通じて、あなたの心の健康に貢献します。

このページの執筆者
山崎 孝(公認心理師)

親バカのカウンセラー / 人に原因を求めるのではなく、人と人との相互作用の悪循環に求めます。人に優しいカウンセリングをモットーとしています。

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