執筆者:山崎 孝(公認心理師・ブリーフセラピスト・家族相談士)
ストレスと上手くつき合うために
日々の生活で感じるストレス。一つひとつが小さいからこそ、気づかぬうちに蓄積しやすいものです。気づいたときには、心も身体も動かないといったことがあります。ストレスケアのポイントは、セルフケア(自分で行うストレスケア)の方法を複数持つことです。
そもそもストレスとは
ストレスは、私たちの身体や心の安定を脅かす外部からの刺激に対する身体や心の反応です。自分自身をを守るためのものです。また、ストレスは必ずしも害ではなく、適度なストレスはパフォーマンスを高めることがわかっています。
ストレス反応は、危険に直面したときに自分を守るための自然な反応でもあります。闘争逃走(闘うか逃げるか)反応という言葉を聞いたことがあるかもしれません。動物が危険な敵に遭遇すると、まずは逃げて身を守ろうとします。追い詰められたときには、闘って活路を見出そうとします。
一方で、適度なストレスは、集中力やパフォーマンスを向上させます。締切があるからこそ、集中して取り組み、その積み重ねが能力を向上させます。適切な目標設定は意欲を高めます。目標を達成する過程が能力を向上させます。
同じ状況に置かれても、人によって感じるストレスには違いがあります。ストレスは単に出来事そのものによって生じるのではなく、個人がその出来事に対してどのように意味づけを行うかによって生じるものと考えられています。
ラザルスとフォルクマンの理論では、ストレス反応は2つの過程によって生じるとしています。第一に、その出来事が自分に脅威をもたらすかどうかを評価します(一次評価)。次に、その脅威に自分が対処できるか否かをを評価します(二次評価)。
自分に脅威をもたらすと評価して(一次評価)、その脅威に自分は対処できないと評価する(二次評価)と、大きなストレスを感じることになります。
ストレスのサイン
ストレスの原因となるものをストレッサー、ストレッサーへの抵抗をストレス反応といいます。ゴムボールを比喩に用いて説明されることが多いです。
日々の生活におけるストレッサーの一つひとつは小さいものであっても、徐々に蓄積して、気づかぬうちに大きくなっていることがあります。ストレスのサインに日頃から気を配り、適切に対処することが望ましいです。
ストレスケアの方法
ストレスに対して意図的に行う対処方法や戦略のことをストレスコーピングといいます。ストレスコーピングの方法は、問題焦点型コーピングと情動焦点型コーピングの2つに分けられます。
問題焦点型コーピングとは、ストレスとなっている問題そのものの解決によってストレスを解消することです。ストレス源が消失するので効果抜群ですが、解決には時間がかかることが多く、すぐに効果を得にくい場合が多いです。また、頼りにしていた上司が異動・転勤したなど、解決できない問題もあります。
情動焦点型コーピングとは、話を聞いてもらって気持ちがスッキリする、カラオケや運動などで気張らしするなどの方法です。様々な方法があり、すぐに実践できるものも多く、一つひとつの効果が小さくても、すぐに効果を得られるのがメリットです。一方で、問題そのものが解決したわけではありませんので、継続的な実践が必要です。
残念ながら、万能なストレスコーピング方法は存在しません。複数のコーピング手段を持ち、柔軟に活用することがセルフケア力を高めます。
一次予防としてのカウンセリングのすすめ
予防医学では、病気を未然に防ぐための一次予防、既に発生した病気を早期に発見し治療することを目指す二次予防、そして病気が進行したり、悪化したりするのを防ぎ、患者の生活の質を向上させるための三次予防に分けられます。
- 一次予防は、病気が発生する前にリスク要因を排除または軽減する取り組みです。健康な生活習慣の促進や予防接種がこれに当たります。
- 二次予防は、病気の早期発見と早期治療を目指します。定期的な健康診断やスクリーニング検査が重要です。
- 三次予防は、病気の悪化や合併症を防ぎ、患者の回復を支援する取り組みです。リハビリテーションや慢性病の管理がこれに含まれます。
当カウンセリングルームでは、一次予防としてのカウンセリングをお勧めしています。
二次、三次の段階になると、定期的な、中長期的な治療的取り組みを要することが多くなります。労力と金銭的コストが大きくなります。一次であれば、労力も金銭的にも、低コストでの予防が可能です。不定期に、思いたったときに、心のマッサージ感覚で利用される方もいらっしゃいます。
カウンセリングでは、安全な環境で自由に話すことによるカタルシス効果と、気持ちをマイナスにさせやすい思考や行動(のクセ・習慣)の対処をサポートします。セルフケアの向上をサポートします。