
「モヤモヤしていたことを話せてスッキリした」「映画の主人公が自分の気持ちを代弁しているように感じた」 感情を表現することによって、抑圧されていた感情が解放されて、心が洗われる体験をカタルシス効果といいます。
流して浄める
カタルシスはギリシャ語の「κάθαρσις」(katharsis)に由来する「精神の浄化」を意味する言葉です。抑圧された感情を表現して、解放して、心が浄化されることを意味します。
元々は、アリストテレスが『詩学』で悲劇の効果を説明するために用いました。精神医学・心理学の分野で最初に用いたのはブロイアーとフロイトです。ヒステリー(転換性障害・解離性障害)治療において、抑圧された感情を自由に表現することによる回復効果を記述しました。
語源的には「排泄」と「浄化」を意味し、「体内の有害物質を瀉出(しゃしゅつ)すること」または「宗教的な浄め」をさすとのことです(第36回 カタルシス | 10分でわかるカタカナ語(三省堂編修所) | 三省堂 ことばのコラム)。
便秘が解消してスッキリを連想しました(下ネタ失礼!)。
絵を描く、音楽を聴くも感情の表現です。それらの行為によって感情を開放することも可能です。絵画療法・箱庭療法・音楽療法・サイコドラマなどの芸術療法に活かされています。
感情の解放

フロイトの理論によると抑圧とは、社会的に受け入れられない感情や欲求、思考を無意識の中に押し込めることで、心理的な不快や社会的な不都合から自分を守る機能を果たしています。その心の働きは概ね効果的ではありますが、行き過ぎると心身に支障を来すことがあります。
「話して、聴いてもらって、スッキリ」は、抑圧された感情が解放されたことによるものです。気持ちをしっかり表現して、受け止めてもらった上でのフィードバックは、更なるカタルシス効果をもたらすことがあります。それもカウンセリングの一部です。
感情の解像度が上がる

抑えつけられて疲弊しているときは、感情表現が乏しくなりがちです。上図の左側がそのイメージです。
抑圧された感情の解放が進むにつれて、心が緩んでいきます。心が緩むにつれて、思考の柔軟さが戻ってきます。ただ「しんどい」としか表現できなかったのが、どのようにしんどいのか表現が豊かになります。
それが上図の右側のイメージです。この状態を感情の解像度が上がると表現しました。
感情の解像度が上がることによって、多くのものが得られます。
気持ちが軽くなる
言葉にすることで整理が進みます。何が何だかわからない状態から抜け出すだけでも心が軽くなります。整理できると一息つけます。解決に向かう体制が整います。
自己理解が深まる
一つの言語化をきっかけに、「話しながら気づいたのですけど」と様々な気持ちを言語化されていくことがあります。それは自己理解を深めていくプロセスでもあります。自己理解を深めて、自己解決に向かうケースもめずらしくありません。
サポートを得られやすくなる
周囲の人にとっては、本人が何にどのように困っているのかが具体的になればなるほど、有効なサポートを提供しやすくなります。逆に解像度が低いときは、的外れのサポートを提供されて、逆にしんどくなってしまうこともあります。
関係の発展
解像度が上がって表現が豊かになると、相手が気持ちを理解しやすくなります。夫婦などのコミュニケーションが悪循環を繰り返しているとき、お互いもしくは一方が、解像度が低いまま話していることがあります。解像度が上がれば相互理解が促進されます。
カタルシス効果を得るには
カタルシス効果を得るには、安全な環境であることが必要です。安全な環境とは、批判されない、否定されない、評価されない、共感的に理解される場所と関係性であることです。その時間は日常を離れて対話に集中できることも含みます。