【ストレスと上手くつき合う】3段階のストレス反応

執筆者:公認心理師・山崎孝

ストレスに関する理論は複数ありますが、今日においても多大な影響を与えている理論の一つが、ハンス・セリエの汎適応症候群です。ストレスに対する反応を3段階に分けて説明するものです。

ストレス反応の3段階

汎適応症候群とは、あらゆる生物がストレスに反応して起こす一連の反応をいいます。

この理論は、ストレスを受けたときに、生物がどのように反応するかを、警告期抵抗期疲憊(ひはい)期の三つの段階に分けて説明しています。

警告期
ストレスを受けると一時的に抵抗力が低下しますが、その後、ストレスの原因に対して身体が反応し、対抗する準備をします。アドレナリンなどのストレスホルモンが分泌され、心拍数が上がり、血圧が上昇し、エネルギーが放出されます。

抵抗期
警告期の後、身体はストレス源に適応しようとします。いわゆる「戦うか逃げるか反応(闘争逃走反応)」によって脅威に対抗しようとします。この期間中はストレス耐性が高まります。しかし、この段階が長引くと、身体のリソースは徐々に消耗し始めます。

疲弊(ひはい)
長期間ストレスにさらされ続けると、身体は適応能力を超え、資源が枯渇します。戦うことも逃げることもできなくなります。この段階では、免疫系の機能低下や疲労感、うつ病など、様々な健康問題が発生するリスクが高まります。

慌てない慌てない

上図は冒頭の図の警告期の部分を拡大したものです。ストレスを受けると一時的に抵抗力が下がりますが、その後は対処に向かうことを示しています。

トラブルが起きて慌てて反応して、さらに事態を悪化させた経験はありませんか。私はあります。

抵抗力が低下しているときは、判断力も低下していると考えられます。その状態で選択する行動は、事態を好転させるどころか、さらに悪化させうることは想像に難くありません。

抵抗力が回復することを知っていれば、トラブルの対処行動の前に、抵抗力の回復を促すことから始められるかもしれません。以下の対処が考えられます。

  • 一時的な状態であると認識する:抵抗力の低下は一時的なものであり、適切な対処と休息をとることで回復します。この認識があると、過度に心配することなく、現状を受け入れやすくなります。
  • セルフケアを行う:抵抗力が低下している間に、自分自身の体と心を丁寧に扱うことが大切です。適切な休息、栄養、運動、そしてリラクセーションを取り入れることで、回復を助けることができます。
  • 悲観的になる必要はない
    • どうして自分だけ ⇒ 問題が起きるのは特別ではない
    • もうダメだ ⇒ 問題は解決可能なはず、まずやってみよう
    • たいしたことはない ⇒ 精神的苦痛は心の信号
    • すぐに何とかしなくては ⇒ 立ち止まって考えよう
    • 早く全部の問題を解決したい ⇒ 解決は時間がかかるもの
    • 絶対に解決しないと ⇒ できれば自信に、できなくても問題がはっきりする
  • サポートを得る:友人、家族、専門家など、信頼できる人々からのサポートを求めることができます。他人との繋がりは、心理的な安定感をもたらし、抵抗力の回復を促します。

セリエの理論は、あらゆる生体に共通する一連のストレス反応を説明するものです。

一方、同じストレス要因でも、人によって反応が異なります。この点に注目したのが、ラザラスとフォルクマンによる認知的評価モデルです。次回は認知的評価モデルを紹介します。