『世界一やさしい依存症入門』の紹介とカウンセラーの人生経験

執筆者:公認心理師・山崎孝

『世界一やさしい依存症入門』の紹介

薬物依存症を専門とする精神科医・松本俊彦先生の『世界一やさしい依存症入門』を紹介します。ふらと入った図書館で目に止まって、読んでみると、これは手元に置いておきたいと思って購入しました。

※以下はAmazonと楽天ブックスのアフィリエイト広告です。

「14歳の世渡り術」と題するシリーズ本の1冊のようです。14才の読者を念頭に書かれたものですが、大人にも大変役に立ちます。おすすめです。

依存には、薬物への依存と行為(ギャンブル等)への依存があります。それぞれの具体例と依存に至る背景がわかりやすく説明されています。

薬物でも行為でも、最初はストレスなど苦痛を和らげる手段として用いられます。薬物による元気は「元気の前借り」と表現されています。薬物の効果が切れると、元気を前借りした分、更にしんどくなります。そのしんどさを補うために、更に服用するという本末転倒な状態になります。

ギャンブル等の行為は、最初はストレス解消の手段です。深く填まっていくにつれて、ギャンブルが目的になります。ギャンブルのため仕事を早く終わらそうといった状態になります。ダメだと思ってもコントロールが利かなくなっていきます。

そうになる「依存症のメカニズム」がわかりやすく説明されています。また、「依存症になりやすい人となりにくい人の違い」も説明されています。

私は過去、パチンコ依存症でした。何度も頷きながら読みました。興味を持たれた方には強くおすすめします。

カウンセラーの人生経験

「私は過去、パチンコ依存症で家族に多大な迷惑をかけました。しかし、今は克服してパチンコとは無縁の生活を送っています。この経験を活かして、同じ苦しみを抱えている人を助けたるたいです」という動機でカウンセリングをしてはいけない。

SNSにて、上記のような投稿を定期的に目にします。

「自分の経験を活かして」が望ましくないのは、自分の経験はあくまで自分個人のものだからです。他者に合うとは限りません。援助者が自分の経験を強調すると、心のエネルギーが落ちている人の害になることもあります。そうしなければならないと圧を感じたり、できると思えない自分を責めることも起こり得ます。

では、カウンセラーの人生経験がまったく役に立たないかというと、そんなことはありません。

先ほど紹介した松本俊彦先生は著書の中で、(執筆当時)ご自身がニコチン依存症であること、過去にゲーム依存症の時期があったことを述べられています。

理論は広範な現象に適用できるように、一般化を目指します。そのため、個別の具体的な事例から離れ、抽象的な概念で表現されます。その結果、専門家でない一般の人には理解がむずかしくなります。そんなとき、自分の経験を例に説明すると、多く人に伝わりやすくなります。

松本俊彦先生は、ご自身の(一般的に)恥ずかしい(とされる)経験を話されています。それは、説明のわかりやすさに加えて、先生や医療に対する親近感や安心感も読者に与えていると思います。

検索すれば知識は簡単に手に入ります。生成AIの普及により、より使いやすい形で知識を得られるようになります。そんな時代に人に求められるのは、単なる知識の発信より、その人の経験や経験に基づく考えになっていくはずです。

カウンセラーの人生経験は、使い方によっては毒になり、使い方によってはAIにできない貴重なツールにもなるはずです。