
執筆者:山崎 孝
公認心理師・ブリーフセラピスト・家族相談士
社交不安症の人は、自分がどう見られているかを非常に気にします。「失敗したらどうしよう」「恥をかいたらどうしよう」といった考えにとらわれがちです。自分に自信を持てないと訴える人の中には、社交不安症に相当する人もいらっしゃいます。
社交不安症(社会不安障害)とは、人と接する場面で強い不安や恐怖を感じる心の状態です。誰でも人前で緊張することはありますが、社交不安症の場合、その不安が日常生活に支障をきたすほど強くなります。
単なる「内気」や「シャイ」とは異なります。社交不安症は、医学的に認められた精神疾患の一つで、適切な治療やサポートによって改善が可能です。
これらの症状が強く、長期間(通常6ヶ月以上)続く場合、社交不安症の可能性があると考えられます。ただし、診断は精神科の医師が行います。カウンセラーは診断できません。また、症状の程度や頻度は人それぞれです。
カウンセラーは、医学的な診断基準を満たすか否かに関わらず、日常生活に支障を来していることの改善・解決をサポートします。
社交不安症の症状は人それぞれですが、日常生活の中での例をあげてみます。
これらの背景にあるのは、他人からの評価が心配でたまらない、悪い結果ばかりを考えて行動を制限するといった、思考のクセとも言えるものです。さらに、失敗を避けるために準備に過度に時間や労力をかけすぎて、生活に負担がかかります。
また、不安や緊張が心身にあらわれます。心の反応は、
スピーチ恐怖、対人恐怖、電話恐怖、視線恐怖、会食恐怖
等としてあらわれます。身体の反応は、
赤面、発汗、身体のふるえ、腹鳴恐怖、排尿恐怖、自己臭恐怖
等です。
これらの結果、特定の場面に限らず、生活全般に不安を感じる人もいます。
社交不安症は、単に「人見知り」や「内向的」といった性格の問題ではありません。先に紹介した厚生労働省のマニュアルによると、自然に寛解するのは30〜40%です。適切に対処しないと、日常生活のさまざまな面に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
社交不安症の影響は個人によって異なり、症状の程度や持続期間によっても変わります。しかし、適切な治療やサポートを受けることで、これらの影響を軽減し、より充実した生活を送ることが可能です。
社交不安症は決して珍しい問題ではありません。先にも触れましたが、厚生労働省の資料によると、生涯有病率は約13%とされており、7人に1人程度が生涯のうちに社交不安障害を経験しています。多くの人が同様の悩みを抱えています。あなだだけではありません。
社交不安症の正確な原因は、まだ完全には解明されていません。しかし、研究によると、複数の要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。生物学的要因、心理的要因、環境要因に分けられます。
原因の詳しい説明を省いて、抽象的な表現で済ませたのは理由があります。
社交不安症に限らず、心の病は原因の特定が困難です。そのため、特定の症状が一定期間にわたって持続することが診断基準として示されています。
原因がわかっても、日常生活の困難が解決するわけではありません。解決の取り組みが必要です。それなら初めから、「問題の消失=解決」に取り組むのが効率的で効果的です。
社交不安症の治療には、主に心理療法と薬物療法の2つのアプローチがあります。
心理療法では、思考と行動のクセを柔軟にすることを目指します。当カウンセリングルームでは、ブリーフセラピーと認知行動療法を折衷的に用います。
心理療法は通常、数週間から数ヶ月にわたって行われ、セッションの間の自己練習も重要な部分を占めます。
薬物療法は、大きすぎる不安を和らげる効果があります。主に以下の種類の薬が使用されます:
薬の種類や用量は、症状の程度や個人の状況に応じて専門医が慎重に決定します。
治療は通常、症状の程度に応じて段階的に行われます。
専門家のサポートに加えて、日々の取り組みも重要です。
カウンセリングでは、リラクセーション技法の指導や少しずつ苦手な状況に挑戦する計画づくりを一緒に行います。意思の力だけでがんばるのではなく、継続できる仕組みを作りながら解決に向かいます。
社交不安症の解決は、即効性を求めるのではなく、長期的な改善を目指すことが大切です。症状の改善には時間がかかることもありますが、継続的な取り組みにより、多くの人が症状の軽減や生活の質の向上を経験しています。
専門家のサポートを受けながら、自分のペースで着実に進んでいくことが、社交不安症の克服への近道となります。一人で抱え込まず、勇気を出して支援を求めて下さい。