NHKのハートネットTVにて、依存症がシリーズで取り上げられていました。11月1日(水)はクレプトマニア(窃盗症)がテーマでした。
自助グループ
クレプトマニア(窃盗症)とは、経済的な利益を目的とするのではなく、衝動的に窃盗を繰り返す精神疾患です。罰すれば矯正できるものではなく、治療を必要とする病です。
番組の内容は上記のリンク先をご覧いただくことにして、個人的に印象に残っていることを紹介したいと思います。
依存症からの回復には、自助グループが最も効果的とされています。アルコール依存症の自助グループであるAA、ギャンブル依存症者の自助グループであるGAが有名です。
自助グループには依存症の当事者が参加します。自分の体験談を話したり、他者の体験談を聞いたりします。体験談に意見したり、意見されたりすることはありません。そのまま受け入れ、受け入れられます。自分を見つめ直したり、仲間同士励まし合いながら回復に向かいます。
クレプトマニア(窃盗症)の治療に関わってきた医師によると、両親の不仲や虐待など、いわゆる機能不全家族に育った経験を持つ人が多いそうです。人間関係で大きな傷つきを体験した人が多いということです。
自助グループの参加者がこのようなことをおっしゃっていました。
「人が薬」「他人との関係の中で回復していく」
人間関係で負った傷は、人間関係を通じて回復する。当事者の口から実感をもって発せられた言葉には重みがありました。
「人間関係で負った傷は、人間関係を通じて回復する」
現実は人と人との同意によって創られる
社会構成主義という心理学の立場から補足すると、現実とは他者との同意によって創られるもので、唯一の現実というものはありません。
海岸に流れ着いたであろう以下の瓶を例に説明します。
瓶を見つけたあなたが一緒にいる友人にいいます。
誰かがメッセージをしたためて海に流したのかも!!
あなたの言葉を受けて友人が言います。
ほんとだ!何か入っている。素敵!!ワクワクするね。
あなたと友人との間で、メッセージが託された素敵なものという現実が共有されました。
一方で、以下のような会話が交わされることもあるでしょう。
瓶を海に捨てるなんて、マナーの悪いやつがいるんだなあ。
本当ね。きれいな海を汚すなんてひどい。
マナーの悪い行為が行われたという現実が共有されました。
他者との関係において傷ついた自尊感情は、安全な場所で安心できる人と関わることによって癒やされていきます。依存症の場合、カウンセリングや医療は補助的なもので、自助グループが大きな役割を果たすと考えられています。