空気を読みすぎると自分の気持ちがわからなくなる

執筆者:山崎 孝(公認心理師・ブリーフセラピスト・家族相談士)

空気を読むのに長けている人は、細かい気配りができて、周囲に良い印象を持たれることが多いようです。一方で、自分の気持ちを後回しにしてしまうのか、「自分の気持ちがわからないんです」という人もいらっしゃいます。

そのような人は、気配りができるので、周囲と良い関係を築いていることが多いです。一方で、自分の気持ちを表現しない(できない)ので、関係が深まらないこともあります。

言葉にする前に身体で感じている

聴くたびに涙腺が緩む『【合唱曲】COSMOS』です。

この曲を聴くと感動で身体が反応します。涙がジワーッとあふれそうになります。

私を感動させて、身体に反応を起こさせるのは何か?

息子が所属していた吹奏楽部の定期演奏会で演奏・合唱されました。そのシーンが脳裏によみがえります。「みんな生命(いのち)を燃やすんだ 星のように 蛍のように」という歌詞は、私の残りの人生のありたい姿です。

この曲を好きな人は多数いると思いますが、思い入れや感動ポイントは人それぞれでしょう。「メロディが美しい」「歌詞が好き」「卒業式で合唱した」等々。

YouTubeでストリートピアノを聴くのが好きです。最もお気に入りは以下です。

ド素人の感想です。一音一音をとても丁寧に弾いている感じがします。一音一音をとても大切にされているのだろうと思います。派手な弾き方より感動を覚えます。

何を伝えたいのかというと、人が気持ちを表現するときは、まず身体で感じて、次にその感じを言葉で表現しているということです。

自分の気持ちがわからない人も身体で感じているはず

「自分の気持ちがわからないんです」という人も、身体で感じているのは同じだと思います。その次の言葉で表現するのを、意識的に、または無意識に避けていると思われます。考えられる要因としては、自分の気持ちを表現する機会を持てなかった、表現しないのが安全な環境で育ったなどがあります。

例えば、親の考えに異を唱えられない・許されない環境では、自分の気持ちや考えを表現すると自分を危険に晒すことがあります。そのような環境で自分を守る方法として、自分の考えや気持ちをスルーして、相手や周囲が望む言動を選択します。それが習慣になっている人がいます。

繰り返しになりますが、身体で感じているはずです。その感じに耳を傾けずに(耳を傾けて言葉にすると危険だから)、なかったことのようにスルーして、相手が満足する言葉や行動を探して、それを実行します。その積み重ねで「自分の考えがわからない」自分になっていくと考えられます。

常に焦点が周囲など自分の外に向いていて、自分の内側に焦点を当てる機会が少ない、もしくは当てていないのかもしれません。「自分の気持ちがわかる」ようになる練習の一つは、身体の声に耳を傾けることです。そのときにできなくても、後で振り返って身体の声に耳を傾けてみましょう。

身体の声を聴いて食レポの要領で表現する

身体の声に耳を傾けたら、テレビの食レポのように表現してみましょう。ただ「いい曲と思います」ではなく、「懐かしい感じがして好きです」「軽快なリズムがやる気を高めてくれるようです」など(下手ですみません)。練習です。表現が稚拙でも問題ありません。

空気を読んで、意に沿わないのに全体に合わせてしまったときは、後に振り返ることでトレーニングになります。「どのような気持ちになったのだろう」と自分自身に感情を問いかけ、「どのような考えやイメージ」が浮かんだのだろうと自分自身に問いかけます。そうして言語化を行います。

カウンセリングでは、トレーニングを積み重ねて新しい習慣にするお手伝いも行っています。