【目標達成】行動の習慣化

執筆者:公認心理師・山崎孝

大阪では今年のゴールデンウィークも緊急事態宣言下で迎えることになりました。政府は1年間、何をしてきたのだと憤りを禁じ得ませんが、自分がコントロールできないことを嘆き続けるのは非生産的です。しっかり嘆いて愚痴ったら、コントロールできることに焦点を当てる自分でありたいと思います。

新年度がスタートして1ヶ月が過ぎようとしています。外出を控えざるを得ないゴールデンウィークは、今年の目標を振り返るのに良い機会になるかもしれません。

目標達成の鍵の一つは、目標達成をもたらす「行動の習慣化」にあります。行動を習慣化する方法を紹介したいと思います。

モチベーションは続かない

心理学では、感情を3つに分けて理解します。情動・感情・気分の3つです。強度と持続性の違いで分類します。

強度持続
情動強い短い
感情中程度中程度
気分弱い長い

情動の代表は怒りです。強くて短いとはどういうことか。アンガーマネージメント(怒りのコントロール)を用いて説明します。

アンガーマネージメントには「6秒ルール」といわれるものがあります。強い怒りが起きている状態で理性的な対処は困難です。むしろ状況を悪化させかねません。怒りのピークは6秒程度です。6秒をやり過ごすと理性が働きやすくなり、冷静な対処が可能になります。

アンガーマネージメントの「6秒ルール」

  • 怒りのピーク状態では理性が働かない。
  • ピーク状態で冷静な対処は困難。かえって悪化させることも。
  • 怒りのピーク状態は6秒程度。
  • 6秒をやり過ごすと徐々に冷静さが戻ってくる。
  • 強い怒りが生じたときは、心の中で6秒を数えるなどしてやり過ごす。

「やるぞ!」というモチベーションは情動です。強いです。しかし、持続力に欠けます。

モチベーションだけに頼ると続かない

目標を立てても三日坊主で終わるのは、(強いけれど持続性に欠ける)モチベーションだけに頼るからです。

「10kgやせる」目標を決めて、「毎日5kmのジョギング」の計画は、身体を動かす習慣がない人にはハードルが高いです。モチベーションが高い間はできるでしょう。しかし、高いモチベーションはせいぜい数日しか続きません。三日坊主で終わって当然と言えます。

(ダイエットには「毎日5kmのジョギング」より、食習慣の改善が重要度も優先度も高いです。ここではわかりやすさを優先してジョギング例に用いています)

行動を習慣化するには継続が必要です。継続期間には様々な説がありますが、行動変容ステージモデルでは、6ヶ月を過ぎると新しい行動が習慣となり、その習慣を維持するステージに入ったと考えます。

モチベーションに頼ってはいけないのではありません。目標を設定してスタートを切るにはモチベーションが必要です。スタートを切ってからは、モチベーションに頼らない戦略が必要になります。

モチベーションがなくてもできる行動から始める

新しい行動が習慣になるには、6ヶ月間の継続が必要とします。6ヶ月の間にはコンディションが悪い日もあるでしょう。そのような状態でも継続するには、がんばらなくても絶対にできる程度の行動からスタートすることです。

「毎日5kmのジョギング」にがんばりが必要であればハードルを下げましょう。運動の習慣がない人なら、「毎日5分のウォーキング」で良いと思います。出勤時、もしくは帰宅時に少々遠回りすれば容易に達成できます。

私は現在、筋肉量の増加を目標の一つとしています。太りにくい体質を目指してます。そのために「日替わりで『スクワット10回』または『腕立て伏せ5回』」から始めました。

スクワット10回としましたが、20回やりたくなった日は20回やります。20回を3セットやりたいときはやります。乗らないときは10回で終わります。そして自分にOKを出します。出せます。

注意が必要なのは欲張らないことです。20回3セットを行った日は気分はいいです。モチベーションが上がります。そこで「明日から20回3セットを基本にしよう」と思うと、できない日が必ず来ます。そうなったら10回に戻せばいいだけですけど。

がんばらなくてもできるレベルが向上したと感じたらレベルを上げます。上げすぎたと思ったら戻します。

プチご褒美を自分に与える

プチ達成感を得るために、タスクリスト(スマホアプリを利用しています)にスクワットと腕立て伏せを加えています。完了のチェックを入れて、「よーし、今日も完了」と思うことで、プチ達成感を得ています。プチ達成感は、明日の実行に向かわせる小さなモチベーションになります。

認知行動療法の基礎となる理論の一つに学習理論があります。学習理論の主要な概念の一つにオペラント条件づけがあります。オペラント条件づけを私のスクワットを例に説明します。

スクワットは私の自発的な行動です。自発的な行動の結果が快(達成感)ならば、その行動は増加します。結果が不快(関節痛など)ならば、その行動(スクワット)は減少します。これをオペラント条件づけといいます。

整理すると以下のようになります。原因があって行動するのではなく、行動の結果がその行動を起こす(または起こさない)原因になります

【行動】 ➡ 【結果が快】(原因) ➡ 【行動】増加

【行動】 ➡ 【結果が不快】(原因) ➡ 【行動】減少

私のスクワットに当てはめると以下のようになります。

スクワット ➡ 完了のチェック(快) ➡ スクワット増加

行動(スクワット)の後、快の結果(完了のチェック)が得られました。この結果は行動(スクワット)を起こさせる原因として作用します。

この循環を作るためにタスクリストを活用しています。方法は何でもいいです。行動を増加させる快の刺激を意図して自分に与えるとより有効です。

積み重ねるプロセスに意味がある

昔、自己啓発セミナーにハマったことがあります。「一瞬で○○できる!」のようなキャッチフレーズが流行した頃でした。あるとき講師が、「みんな『一瞬で○○できる!』といったものに興味を引かれるけれど、本当に価値があるのは積み重ねで、それを軽視する風潮があるよね」と言いました。

「いや、ちょっと待って!『一瞬で!』ってキャッチフレーズで受講生集めておいて」と思いましたが、当時に「やっぱりそうやなあ」と思いました。

当カウンセリングルームでは、「自分に自信がない」という相談を受けることが多いです。「一瞬で」何かができて自信がつく人は少ないです。「たまたま、うまくいっただけ」となりやすいです。

しっかり積み重ねてきた結果の成功は自信につながりやすいです。望む結果にたどりつけなかったとしても、しっかり積み重ねてきた過程は自信につながりやすいです。小さな行動の継続は、必ず心の栄養となり、自尊感情を育てます。

おまけ(ダイエットについて)

ダイエットで最も重要なのは食事です。専門家でも何でもない私ですが、これは断言します。特に中高年の肥満の大半は食べ過ぎのはずです。

食事について一つ提案したいのは、食べるときは食べるだけに集中することです。スマホもテレビもおしゃべりも控えます。すべての食事をそうするのは無理があるでしょう。無理のない範囲で取り入れます。

丁寧に味を感じながら、丁寧にお腹の具合など身体を意識しながら食べます。すると、「腹八分目くらいだなあ」「ここらで終わるのがいい具合だなあ」などと感じやすくなります。

スマホ、テレビ、会話に意識を取られると、自分の内側に意識が向かなくなります。気がつけば「お腹いっぱい」「お腹パンパン」なんてことが、私には頻繁にありました。

興味がある方はお試し下さい。