【心理カウンセラーのダイエット】減量を目標としない・自分に自信がつく

執筆者:山崎 孝(公認心理師・ブリーフセラピスト・家族相談士)

最盛期は2年数ヶ月前の 80kg でした。今年8月の人間ドックでは 67.7kg でした。ダイエット成功と言えると思います。ダイエット成功によって、自分に自信がつく副次的な効果もありました。気づきを得ましたので是非紹介したいと思いました。

ダイエット成功と自信の両方を手にするポイント

つくづく思うのは、方法より心構え・考え方が重要であることです。リストアップしてみます。

  1. 目標は行動の変化と習慣化。
  2. モチベーションに頼らない。
  3. がんばらなくてもできることを。
  4. 良い食生活や行動が習慣化すると自分に自信がつく。

4つ目の自信は心構えではありませんが、カウンセラーとしての私のテーマであり、自身の支援はライフワークでもあるので、あえて書かせていただきました。

1. 目標は行動の変化と習慣化

何kg減量という数値そのものは結果です。数値を目標にしません。結果を導く行動の習慣化を目標にします。なぜなら、結果が持続しなければ意味がないからです。ある期間、必死に追い込んでがんばって、やめた途端にリバウンド。それならやらない方がマシです。

結果が持続するには、体重を維持する行動を習慣化する必要があります。習慣化のために重要なのは、モチベーションに頼らないことです。「がんばらない」ことです。次の項目で説明します。

2. モチベーションに頼らない

人がある習慣を身につけるには、平均66日間の継続が必要とする、ロンドン大学のフィリパ・ラリー博士らの研究(※1)があります。ダイエットに成功して結果を維持する行動を習慣化するには、少なくとも約2ヶ月間、その行動を継続する必要があります。

モチベーションに頼らない理由は、2ヶ月もの間、忙しい毎日を過ごしながら、モチベーションを維持するのは困難だからです。スタート時は高いモチベーションで取り組んだけれど、そのモチベーションが持続されない経験をした人は少なくないでしょう。

心理学において感情は、「気分」「感情」「情動」の3つのレベルに分けられます。強度は「気分」⇒「感情」⇒「情動」の順に強くなります。持続性は「情動」⇒「感情」⇒「気分」の順に強くなります。

「気分」は強度が弱いけれど、長く持続します。「情動」は強度が強けれど、持続しません。感情は強ければ持続力が弱く、弱ければ持続力が高いのです。

「ダイエットするぞ!」と盛り上がっているのは強い感情です。持続力に欠けます。モチベーションに頼ると挫折しやすいのです。

(※1)Phillippa Lally, Cornelia H. M. van Jaarsveld, Henry W. W. Potts and Jane Wardle, October 2010, How are habits formed: Modelling habit formation in the real world, European Journal of Social Psychology, Vol 40 Issue 6

3. がんばらなくてもできることを

失敗する典型例は、大きなこと、もしくは多くのことをやろうとすることです。それらを実行するにはモチベーションが必要です。継続するのは困難です。モチベーションに頼らないためには、がんばらなくてもできる簡単なことから始めることが重要です。

がんばらなくてもできることとは、疲れていてもできて当然というレベルのことです。私は有酸素運動が割と得意で、毎日の自転車通勤またはジョギングを習慣化することができました。しかし、筋トレが苦手です。筋肉量が足りないことがわかったので、筋トレを習慣化する必要性を感じています。

筋トレの効果を最大限に発揮するには「限界の回数×3セット」が必要とされています。例えば腕立て伏せをしているとき、上腕三頭筋(腕立て伏せで使われる筋肉)のすべてが使われているのではないそうです。休んでいる部分もあるそうです。すべてを使うのに3セット必要とのことです。

その理屈はわかりました。しかし、苦手な筋トレを「限界の回数×3セット」なんて、とてもできません。有名な「小さな習慣」の著者は、腕立て伏せ1回から始めたそうです。1回なら私もがんばらなくても、疲れていてもできます。

これくらいのサイズから始めるのです。1回なら効果がない? 0回より遙かにマシです。何より無理なく継続できます。合い言葉は「がんばらないで継続」です。効果云々の前に習慣化です。

1回と決めていても、調子が良い日は5回、10回とやってしまうものです。とは言っても「今日10回できたから、明日から10回にしよう」と考えてはいけません。挫折の元です。1回を続けます。増やすのは「疲れていても5回くらい普通にできる」と感じるようになってからです。

この話を知人にすると、前述の「小さな習慣」に書かれていることと同じやんって言われました。読んでみるとまさにそうでした。興味がある人は読んでみて下さい。ただ、情報量が多くて、あれもこれもやりたくなってしまいます。がんばりすぎに注意が必要です。

がんばらないでできることでも、泥々に疲れていたり、体調を崩したなどが原因で、できないことがあるかもしれません。「まあ、いいか」と流せる人のほうが継続できる傾向があるそうです。「ええ加減は、いい加減」なのでしょう。

4. 自分に自信がつく

ダイエット成功によって、自己効力感(能力についての自信)が向上します。「できる」という実感ですね。加えて、効果を維持する行動の習慣化は、自己肯定感(自尊感情、あり方や存在の自信)を育てます。新しい習慣が身につくとは、まさにあり方の変化だからです。

頭ではわかっていたことですが、今回のダイエットで体感することができました。「最近、自然に腹八分目で食べてるなあ」と気づくと、自己肯定感に良い影響を及ぼします。このような効果もあるのだという気づきは大きな収穫でした。

私のダイエット履歴

私のここまでの取り組みを振り返ってみたいと思います。

今年の人間ドック

ダイエットを意識し始めたのは、体重が 80kg の大台に乗った2年前のことです。

自転車通勤と挫折

2018年3月、カウンセリングルームを淀屋橋から現在の江坂へ移転しました。自宅の千里中央から電車で3駅です。自転車通勤を決意したのは6月。交通費削減とダイエットの一石二鳥を狙いました。注文した自転車の納車が7月9日でした。

2018年8月7日、人間ドックで測定した体重は 76.3kg でした。1ヶ月で3kgほど痩せたことになります。数字だけ見ると成功かもしれません。しかし、がんばりすぎました。ひざ痛が起きました。冬になって、寒さを理由にして挫折してしまいました。

がんばると(がんばりすぎると)、このようなことにもなります。

食事量は減らさず野菜を増やす

毎日お酒を飲んでいました。おそらく30年間くらい。帰宅時にスーパーへ寄って、お酒とおつまみを購入するのが日課でした。バーボンが好きなのですが、(肥満抑制が期待できる)赤ワインに変えました。

残念ながら赤ワインの効果はありませんでした。

要因は2つです。1つ目は、食べながら飲む習慣があることです。2つ目は、飲酒量をコントロールできないことです。飲むと食べるがセットですから、飲酒量をコントロールできなければ、食事量もコントロールできません。毎日腹一杯、腹十二分目まで食べることも珍しくありませんでした。

医師の診断は受けていませんが、自分ではアルコール依存症だと思っています。

お酒をやめるのは不可能だと思ってました。食べる量を減らすのも無理と考えて、サラダを中心とする野菜を必ず食べるようにしました。からあげ6個ではなく、からあげ3個とサラダというようにしました。サラダだけの日も作りました。

サラダとドレッシングだけでは味気ないです。サラダチキン、フライドオニオン、チーズなどをトッピングして、美味しく食べられるようにしました。余計なものを入れないのが良いのはわかります。でも、続けやすさを優先しました。一定の効果があると思います(信じたいです…)。

自転車通勤再開

2019年の春頃から自転車通勤を再開しました。自転車通勤だと寄り道しなくなる。寄り道しなければお酒を買えない。お酒がなければ食料が減るだろう。そのように考えました。せっかく自転車を買ったのにもったいという気持ちもあります。

寄り道しないのは最初の1週間程度でした。結局、飲酒を抑える効果は得られませんでした。しかし、時期が良かったのか、爽快感を得られるようになりました。遠回りして距離を増やしました。自転車に乗らない日はジョギングするようになりました。

タイムが伸びてモチベーションが上がるなどの要因で、ちょっとがんばりすぎました。幸い、がんばりすぎによる弊害は起きませんでした。元々、有酸素運動が好きだからかもしれません。今では完全に習慣化しています。

2019年6月撮影

2019年8月の人間ドックでは70.9kgでした。

断酒

停滞期になりました。70kgを切れません。8月から12月まで現状維持が続きました。

12月のある日、Twitterで断酒をサポートするスマホアプリを見つけました。そのアプリを見た瞬間「(不可能と思っていた断酒を)できるかも!」と感じました。12月22日から断酒を開始しました。今日(9月2日)で255日継続中です。

断酒開始日からの経過時間を表示するだけのアプリです。

禁煙したとき、吸いたくなる度に「今日で約○○日。断念したら○○日がムダになる」と自分へ言い聞かせてました。日にちはざっくりでした。このアプリは正確な日数を毎日言い聞かせてくれます。その効果は体験しなければわからないかもしれません。いい買い物でした。

腹八分目

断酒によって、食事時間が短縮されました。飲みながらダラダラと食べていたのです。食事量が急に減ることはありませんでしたが、徐々に減っていって、腹八分目で終えるようになってきました。それに比例して、徐々に体重が減り始めました。

あっさり70kgを切りました。2020年8月の人間ドックでは 67.7kg でした。

この生活を続ければ大丈夫という実感を得ると、あまり体重を気にしなくなりました。多少食べ過ぎて体重が増えることはあります。しかし、それは一過性のもので、普段の食生活に戻れば体重も戻る確信めいたものがあります。

体重は毎日測るようにしています。しかし、増減で一喜一憂することはありません。体重は自分の健康や食生活の状態を把握する指標と捉えています。前日から1kg以上グンと増えることがあります。最近の生活習慣を振り返りなさいというサインと思うようにしています。

ダイエットによって自己効力感と自己肯定感が向上した

最初にも触れましたが、ダイエットがうまくいって、自分に自信が持てるようになりました。もちろん絶大な自信を持てるようになったのではなく、「最近の俺って、ちょっといい感じ」という自信です。

自転車通勤の時間が短縮されたり、ジョギングのペースが向上したりして、56才になって体力の向上を経験しています。人間、限界は当然ありますが、限界は自分が思っているところより、もっと先にありそうです。自己効力感(できる自信)と自己肯定感(自分の存在を承認できる)の両方が向上しました。

断酒も自己効力感と自己肯定感の両方を高めてくれました。カウンセリングやコーチングの練習をするとき、相談者の役割をすることがあります。相談者役のとき、よくお酒について相談していました。残念ながら改善したことがありませんでした。不可能と思いこんでいたからでしょう。

それが8ヶ月以上継続しています。飲まないことが日常になっています。単なる成功体験は自己効力感のみを高めます。自分のあり方を変える成功体験は自己肯定感も高めてくれます。そのような体験は久しぶりです。カウンセラーとして、コーチとして良い経験をできました。

これから

まだ標準体重(約64kg)に達していないので、そこへ到達するための新たな行動の習慣化を目標としています。ズバリ「筋トレ」です。

ノーブランドの安価な体組成計を使用しています。骨格筋(手足などを動かす筋肉)が少ないと体組成計が言います。筋肉が少ないのです。痩せると脂肪と筋肉の両方が減るので仕方ありません。しかし、筋肉が少ないと太りやすいです。これからの目標は筋肉を増やすことです。

自転車やジョギングの有酸素運動は比較的好きな運動です。なので少々キツくても楽しみながら取り組めます。しかし、筋トレは苦手な運動です。これからがモチベーションに頼らない、がんばらないダイエットの真価が問われるステージかもしれません。

折に触れて進捗をアップしたいと思います。