【エリクソンのライルサイクル理論】自分に自信がない原因を見つけるヒント

執筆者:公認心理師・山崎孝

「なぜ私は自分に自信がないのか」「どうすれば自信がつくのか」

エリクソンのライフサイクル理論から手がかりがつかめるかもしれません。

心は周囲との相互作用で育つ

発達心理学では、人間にはいくつかの発達段階があると考えます。複数の理論があります。有名なものの一つが、エリク・H・エリクソンのライフサイクル理論です。

エリクソンは、人間の心理は、周囲の人々との相互作用を通して成長していくと考えました。社会との相互作用を重視したことから『心理社会的発達理論』と呼ばれています。

人(の心)は周囲(社会)との相互作用を通して育ちます。「人」の「間」と書いて「人間」です。人は社会的な存在であることを示していると思います。

エリクソンの理論の3つの特徴

エリクソンの理論には以下の3つの特徴があります。

  • 8つの発達段階がある。
  • それぞれの発達段階に【発達課題】と【危機】がある。
  • 危機を乗り越えることによって【獲得】するものがある。

8つの発達段階とは以下です。

  1. 乳児期(0才〜1才半)
  2. 幼児期前期(1才半〜3才)
  3. 幼児期後期(遊戯期:3才〜6才)
  4. 学童期(児童期:6才〜12才)
  5. 青年期(12才〜22才)
  6. 初期成人期(22才〜35才)
  7. 成人期中期(中年期・壮年期:35才〜60才)
  8. 成人期後期(老年期:60才以降)

エリクソンの理論において有名な概念は「アイデンティティ(自我同一性)」です。アイデンティティという言葉は日常的に使われますが、その概念を提唱したのがエリクソンです。

乳児期(0才〜1才半)

  • 【課題】信頼
  • 【危機】不信
  • 【獲得】希望・期待

すべての動物の赤ちゃんは、無力で自力で生きていくことができません。とりわけ人間の赤ちゃんは、自力で歩けない状態で生まれます。母親など周囲の世話を受けて育ちます。

赤ちゃんは泣くことで周囲に助けを求めます。このとき、周囲から適切な世話を受けられると、周囲や世界に対する【信頼】が育まれます。信頼が育まれると、周囲や世界に対する【希望・期待】を獲得できます。

一方、泣いても周囲から適切な世話を受けられなければ、周囲や世界を信頼できず【不信】を抱くようになります。

幼児期前期(1才半〜3才)

  • 【課題】自主性
  • 【危機】羞恥心
  • 【獲得】意欲

1才半になると多くの子どもが歩けるようになります。子どもは好奇心の塊です。何でも一人でやりたがったり、新しいことを試してみようとします。そうして一人でできることが増えていきます。

このとき、親が挑戦する機会を与えて、適切にフォローすれば、子どもに【自主性】が育まれます。一人で出来ることが増えると、さらに新しいことに挑戦する【意欲】が育ちます。

親が先回りして挑戦の機会を奪ってしまうと自主性は育ちません。失敗を過度に叱りすぎると意欲は芽生えません。挑戦や失敗に対して【羞恥心】を覚えるようになります。

幼児期後期(遊戯期:3才〜6才)

  • 【課題】積極性
  • 【危機】罪悪感
  • 【獲得】目的意識

色々なことに興味を示す時期です。して良いこと、悪いことを教える躾は必要ですが、過度に抑えつけられた子どもは【罪悪感】を抱くようになります。

バランスのとれた躾は【積極性】を育みます。積極性が育まれると【目的意識】を獲得することができます。

学童期(児童期:6才〜12才)

  • 【課題】勤勉性
  • 【危機】劣等感
  • 【獲得】有能感

小学校生活を迎えました。授業や宿題の日々の積み重ねが学力を育てます。スポーツや芸術なども同じです。積み重ねが【勤勉性】を育み、自信を育てて、【有能感】を獲得します。

学校などの集団生活の中では、他者に劣る経験をすることがあります。劣っていることには適切なサポートが必要です。ただ叱るだけでは、【劣等感】を抱くことになります。自信を持てなくなります。

青年期(12才〜22才)

  • 【課題】アイデンティティの達成
  • 【危機】アイデンティティの拡散(混乱)
  • 【獲得】忠誠性

エリソンの理論で最も重要とされている概念が「アイデンティティ」です。アイデンティティとは、自分はこのような存在であると確信を持っている状態です。

自分自身の存在について、過去から現在に至るまでの一貫性があります。他者の自分に対する認識が、自分自身の認識とある程度一致している感覚があります。

【アイデンティティの達成】によって【忠誠性】を獲得します。人生観・価値観が明確で、それらに沿った決断や行動を確信して選択できるようになります。

アイデンティティを達成できないときの危機は【アイデンティティの拡散】です。自分は何者なのだろう、どこへ向かうのだろうと自分を見失っている状態です。

初期成人期(22才〜35才)

  • 【課題】親密
  • 【危機】孤立
  • 【獲得】愛情

社会に出て多くの人と関わりを持つようになる時期です。この時期の課題は他者と【親密】な関係を築くことです。親密な関係を築くことによって獲得するのは【愛情】です。

親密という課題をクリアできないときに陥る危機は【孤立】です。他者との関係が希薄で自分のことだけを考えて生きている状態です。

成人期中期(中年期・壮年期:35才〜60才)

  • 【課題】生殖
  • 【危機】停滞
  • 【獲得】世話

この時期の課題である【生殖】は次世代育成能力とも言われます。子どもを育てる、後進を育てる、コミュニティなどで時世代に貢献するなどです。それによって獲得する力は【世話】です。

一方、課題をクリアできないときに陥る危機は【停滞】です。「自分はこの人生で何を成し遂げたのか」「人生の足跡として何も残していないのではないか」といった虚しさや焦りです。

成人期後期(老年期:60才以降)

  • 【課題】統合
  • 【危機】絶望
  • 【獲得】英知

これまでの人生を振り返ったときに納得感や満足を得られるか。YESと答えられる人は自分自身や人生を【統合】する課題をクリアしたと言えます。それによって【英知(Wisdom、賢さ)】を獲得するでしょう。

自分に自信がなくて悩むのは青年期の人が多い

あるサービスを利用してデータを収集してみると、「自分に自信がない」というキーワードで検索する人の年齢層は、18才から34才が90%を占めていました。

アイデンティティの獲得でつまづく人が多いのかもしれません。もしくは、前の発達段階の課題をクリアしてないことがアイデンティティの獲得を妨げているのかもしれません。

課題はそれぞれのステージ(発達段階)でクリアしなければ取り戻せないということではありません。後のステージで取り戻せます。

他者との相互作用によって課題をクリアする

最初に申し上げた通り、エリクソンの理論は『心理社会的発達理論』と呼ばれています。心は他者との相互作用(社会的)を通じて育つことを意味します。

前のステージ(発達段階)から持ち越している課題があるとしたら、何らかの傷つき体験があるかもしれません。クリアするための他者との相互作用は、安全な他者から始めてステップアップしていくのが望ましいかもしれません。

カウンセリングやコーチングはそれに適した場所と言えます。興味がある方は一度ご相談下さい。