執筆者:山崎 孝(公認心理師・ブリーフセラピスト・家族相談士)
うつ病の回復のステージ
うつ病からの回復は、一直線ではなく、いくつかのステージを経て進んでいきます。家族や周囲の方が各ステージを理解することで、戸惑いや焦りの気持ちをコントロールしやすくなると思います。また、適切なサポートを行いやすくなるはずです。
前駆期
- うつ病の症状が現れ始める時期です。
- 軽度の不眠や疲れやすさ、イライラ感などが現れる。
- 仕事や家事の能率が少し落ちたり、人付き合いを避けたくなったりする。
- この時期に気づいて対処することで、重症化を防げる可能性が上がる。
- ストレス管理や生活習慣の改善、周囲へのサポート要請が重要。
急性期
- うつ病の症状が最も顕著になる時期。
- 強い抑うつ感、興味や喜びの喪失、極度の疲労感などが現れる。
- 日常生活に著しい支障が出て、仕事や学業を休まざるを得なくなることもある。
- 医師や専門家による適切な診断と治療が必要不可欠。
- 十分な休養と、場合によっては入院治療も検討される。
- 自殺のリスクが高いため、周囲の見守りが重要。
回復期
- 症状が徐々に和らぎ始める時期。
- 少しずつ日常生活に戻れるようになるが、寛解にはまだ時間がかかる。
- 活動を慎重に増やしていくが無理は禁物。
- 短時間の散歩から始めて、徐々に外出時間を延ばしていくなど段階的な回復が望ましい。
- 治療を継続しながら、ストレス管理の方法を学んでいく。
- 焦って元の生活に戻ろうとすると再発のリスクが高まる。
寛解期
- うつ症状がほぼ消失し、通常の生活が送れるようになる。
- 仕事や学校などの社会生活に完全に復帰できるようになる。
- 再発のリスクがまだあるため、生活リズムの維持や定期的な通院が必要。
- ストレス対処法などセルフケアの技術を身につけて実践する。
- 睡眠時間の確保、適度な運動、趣味の時間の確保などを意識的に行う。
維持期
- 症状なく安定した状態が長期間続く時期。
- 健康的な生活習慣を維持し、ストレス管理を継続する。
- 定期的な経過観察を行いながら、必要に応じて治療の調整を行う。
- 完全な回復と言える段階ですが、生涯を通じての自己管理が重要。
- 再発の兆候に早めに気づき、対処できるよう、自身の状態を客観的に観察する習慣を身につける。
各ステージは個人によって期間が異なり、必ずしも順番通りに進行するわけではありません。時には後戻りすることもあります。大切なのは、自分の状態を客観的に観察し、必要に応じて専門家のサポートを受けることです。
早期発見・早期対応が重症化を防ぐ鍵となります。日頃から自分の心身の状態に注意を払い、変化に気づいたら周囲や専門家に相談することが重要です。