うつ病と間違いやすい状態

執筆者:山崎 孝(公認心理師・ブリーフセラピスト・家族相談士)

人生には誰にでも落ち込む時期があります。大切な人との別れ、仕事の失敗、進路の悩みなど、辛い出来事の後に気分が落ち込むのは自然なことです。通常の落ち込みとうつ病の違いをあげてみます。

一時的な落ち込みとの違い

【持続期間】
通常の落ち込みは数日から1週間程度での回復が多いが、うつ病は2週間以上続く。

【症状の程度】
通常の落ち込みは日常生活をある程度こなせるが、うつ病では仕事や学校、家事に著しい支障が出る。

【気分の変化】
通常の落ち込みは楽しい出来事があれば一時的に気分が良くなるが、うつ病ではそのような変化が乏しくなる。

2週間以上の持続、日常生活に著しい支障が生じているのが目安になりますが、自己判断は控えるべきです。精神科医による正確な診断が前提です。

他の精神状態との違い

【適応障害】
明確なストレス因子(例:転職、離婚)に対する反応として現れる一時的な症状。ストレス因子が解消されると比較的早く回復する。

【不安障害】
不安や心配が主な症状で、うつ病のような持続的な気分の落ち込みは見られない。ただし、うつ病と不安障害は併存することがある。

【双極症・双極性障害(躁うつ病)】
うつ状態と躁状態(異常に気分が高揚する状態)を繰り返す。うつ病との違いは躁状態の有無。ただし、特に双極症II型の場合、うつ状態が主な症状となり、軽躁状態は短期間で目立たないことが多く、うつ病と診断されることがある。

症状が気になる場合は、専門医による正確な診断を受けることが重要です。自己判断は控えるべきです。適切な診断があってこそ、最適な治療を受けることができます。

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カウンセラーのメッセージ

心はどこにあるのでしょうか。脳や心臓を指す人もいますが、「人間」という言葉が示すように、心は「人の間」、人間関係の中にも存在します。これは、私が依拠する家族療法の理論とも一致する考え方です。

人間関係は、心の傷の原因にも、そして癒しの源にもなります。多くの悩みは人間関係から生じますが、同時に、人間関係を通じて癒されます。例えば、上司の言葉に傷つき、同僚や友人に話を聞いてもらってリフレッシュする経験は、まさにこのことを示しています。

しかし、「日々の生活が息苦しい」「自分らしく生きるのが難しい」といった深い悩みや、家庭内トラウマのような心の傷には、単に話を聞いてもらうだけでは不十分な場合があります。専門的なサポートが必要となります。

同時に、安心・安全な場所(人間関係)も重要です。自由に話せ、否定されず受容され、無用なアドバイスをされない環境が、大きな悩みや深い心の傷の回復を可能にします。

私がライフワークとする自信も人間関係を通じて育まれます。自信には「自己効力感」(能力的な自信)と「自己肯定感」(存在や人格への肯定的評価)があります。特に自己肯定感の問題を解決するには、そのままの自分でOKという体験を積み重ねる必要があり、これは人間関係を通じてしか得られません。

私は、専門的なサポートと安心・安全の人間関係を提供することを通じて、あなたの心の健康に貢献します。

このページの執筆者
山崎 孝(公認心理師)

親バカのカウンセラー / 人に原因を求めるのではなく、人と人との相互作用の悪循環に求めます。人に優しいカウンセリングをモットーとしています。

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