執筆者:公認心理師・山崎孝
家族ライフサイクルと夫婦の危機

個人と同様、家族にも発達・成長のステージあります。家族ライフサイクル論といいます。それぞれのステージ毎に発達課題があるのも同様です。ここでは7つのステージモデルを紹介します。
ライフステージの特徴
ライフステージには以下の特徴があります。
★各ライフステージに発達課題がある。
★発達課題の達成は次ステージの良いスタートをもたらす。
★ステージの移行期は家族関係が不安定になりやすい。
★ステージの移行期に家族の潜在的な問題が顕在化しやすい。
ステージ移行期の不安定さを乗り切ることで家族が成長・発展していきます。
安定 ➡ 移行期 ➡ 不安定 ➡ 解決 ➡ 安定 ➡(以下繰り返し)

カウンセラー
ライフステージの変化に合わせて夫婦も変化する必要があります。夫婦の一方が、または双方が変化に対応できないときに危機が起きやすくなります。
家族ライフサイクル論は、子どもがいる前提で構築されています。あらかじめご了承下さい。
1)独身の時期
家庭を持つ土台作りの段階です。この時期の主な発達課題は以下です。
- 職業を選択して経済的に自立する
- 友人や恋人たちと親密な人間関係を築く
- 親や実家から心理的に自立する
2)新婚の時期
異なる文化で育った二人が新しい文化をつくる段階です。
- 家庭生活、友人関係、仕事のバランスをとる
- 新たに夫婦のルール作りとルール・パートナーへの適応
- 夫婦の絆と原家族との絆のバランスをとりながら夫婦の信頼関係を強めていく

カウンセラー
夫と妻という役割ができます。実家との関係性が変わります。その変化に対応できなければ危機が起きやすくなります。結婚してからも実家べったりというのも、変化に対応していない例と言えるかもしれません。
3)乳幼児を育てる時期
子どもが安心できる関係を作っていく時期です。厚生労働省の調査によると、結婚5年未満の離婚率が最も高いという結果が出ています。新婚からこの時期に相当します。
- 親の役割を身につける
- 子育てをしながら夫婦の絆を保つ
- 祖父母や親族との関係を調整する

カウンセラー
子どもが生まれるというのは大きな変化です。夫婦にも大きな変化が強いられます。妻は否が応でも変化を強いられます。そのとき夫は・・・危機が起きやすい時期です。
4)学童期の子どもを育てる時期
子どもが小学生の時期に相当します。乳幼児の時期と異なるのは、学校など地域社会との関係ができることです。子どもの教育観の違いで対立が生まれやすい時期でもあります。
- 地域や学校などとの交流を深めていく
- 子どもの教育
- 親密さと明確な世代間境界を両立する
5)思春期・青年期の子どもを育てる時期
子どもがアイデンティティの確立に取り組む時期です。親との関係では、自立と依存の矛盾した要求を示すようになります。それまで問題が起こらなかった家庭でも、思春期にはそうはいかなくなることがあります。
- 子どもの進路や職業の選択
- 子どものアイデンティティの確立
- 子どもの自立したい欲求と依存したい欲求にバランスよく応える
- 親として夫婦が協力する
- 夫婦の将来を考え始める
6)子どもの巣立ちの時期
子離れの時期です。喪失感や悲しみを経験します。家庭は親子関係中心から夫婦関係中心に変わります。子離れできない場合、子どもへの過干渉、子ども夫婦の葛藤などの問題が起こり得ます。
- 子どもの自立を見守る
- 子どもの自立に伴う喪失感を受け入れる
- 子どもとの適切な距離感を保つ
- 夫婦関係を再編成する
7)老年期
老化、家族や親しい人の死別など、喪失体験を受け入れることがテーマになります。
- 老化を受け入れ対処する
- パートナーの老化や死に対処する
- 人生の振り返りと統合
- 自分の死への準備をはじめる
危機を機会に
それぞれの発達課題を完璧にクリアしている夫婦はまれだと思います。次の段階に持ち越しても、取り返す機会は必ずあると信じています。危機が顕在化したときこそ、取り返す機会と捉えたいです。
夫婦には血のつながりがありません。それぞれ異なる文化や習慣の中で生きてきました。違いに戸惑ったり、苛立ちを感じることは必ずあります。対立が起こるのはやむを得ません。むしろないほうが、一方がガマンを強いられているという意味で、不健全かもしれません。
健全な関係とは、対立が起きてもお互いが納得できる着地点に到達できることです。危機の顕在化は、そのような関係を作る機会とも言えるでしょう。
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【参考文献】
中釜洋子ほか 2008 家族心理学ー家族システムの発達と臨床的援助 有斐閣ブックス
平木典子・中釜洋子 2006 家族の心理ー家族への理解を深めるために サイエンス社
亀口憲治 2000 家族臨床心理学ー子どもの問題を家族で解決する 東京大学出版会