【ウィズコロナ・アフターコロナ】メンタルヘルス不調になりやすい今こそストレスケアの意識が大事

執筆者:公認心理師・山崎孝

新型コロナウイルスの感染者が減少して、緊急事態宣言が解除されるなど、良い方向へ向かっています。状況の改善に伴って、私たちの緊張も緩和されていくでしょう。

緊張の糸が切れたときにメンタルヘルス不調になりやすい

ゴールデンウィーク明けに会社や学校に行けなくなるいわゆる5月病。新しい生活の緊張や疲れがピークに達して、ゴールデンウィークを機に張り詰めた緊張の糸が切れて、メンタルヘルス不調になることをいいます。

今は誰もが5月病になりやすい状態と言えそうです。ウイルス感染の不安、仕事や収入の不安、将来の不安、自粛生活等の疲労。自覚している、していないに関わらず、多くの人に緊張と疲労の蓄積があると思います。

より積極的にセルフケア(自分で行うストレスケア)を

ビフォーコロナには戻らないと言われています。この変化に順応するまで緊張と疲労が続くと考えておくのが良さそうです。

緊張と疲労が蓄積するとストレスへの対応力が弱まります。普段なら流せるような小さなことに怒りなどで反応してしまうことがあります。そのような反応が新たなストレスとなり蓄積されます。さらに反応しやすくなります。悪循環です。

そのような事態を避けるためにも、セルフケア(自分で行うストレスケア)の意識をより高めることが望まれます。

ストレスコーピング(ストレス対処行動)

ストレスを感じる事態に対して何らかの対処を行うことをストレスコーピングといいます。ストレスコーピングは大きく2種類に分けられます。ストレス事態に直接対処する「問題焦点化型コーピング」と感情に対処する「情動焦点化型コーピング」です。

問題焦点化型コーピング

ストレス事態に直接対処することによる対処です。

例えば、問題の解決法を考えたり、周囲に解決のアドバイスを求めたりすることです。転職や異動などでストレス源から離れるのもその一つです。偏った考え方に対処して苦痛度を下げるのもその一つです。

行政の支援も問題焦点化型コーピングです。先日ある件で市役所に問い合わせると丁寧に教えていただけました。事態を多面的に見る支援という意味でカウンセリングも問題焦点型と言えるかもしれません。

情動焦点化型コーピング

緊張や不安などの感情に対処するのが情動焦点化型コーピングです。

友人に話を聞いてもらう、カラオケ、ストレッチ、スポーツでスッキリするなどの気晴らし型。落ちつくカフェでくつろぐ、お風呂にゆっくり入る、深呼吸、瞑想など、身体を緩めることにより心を緩めるといった方法があります。

状態に適したコーピング

問題焦点型コーピングと情動焦点型コーピングのどちらが良いということはありません。私たちは状況に応じて意識的に、ときには無意識に両方を使い分けています。

考え方を変えてみるというコーピングは気持ちが落ちついているときに有効です。物事を色々な視点から見ることができるからです。

気持ちが高ぶっているときは誰もが視野が狭くなりがちです。そのようなときに考え方を変えようとしてもうまくいかないことが多いです。別の見方を思いつかないことによって新たなストレスを感じることさえあります。

そのようなときには、散歩して気分転換したり、身体をあたためたり、話を聞いてもらうなどの情動焦点型コーピングが有効です。気持ちが落ち着くと、考え方を変える、解決方法を考えるなどの問題焦点型コーピングに取り組みやすくなります。

セルフケアを習慣化する

おすすめしたいのは、ストレスを感じてからコーピングを行うのではなく習慣化することです。散歩、ジョギング、呼吸法、瞑想、何でもいいです。負担なく行えるものがいいです。

習慣化することによってストレス耐性が向上します。病気と一緒で、治療より予防のほうが少ないコストで大きな効果を得られやすいです。