【オペラント条件づけ】断酒100日達成

執筆者:山崎 孝(公認心理師・ブリーフセラピスト・家族相談士)

一念発起して始めた断酒。先日100日を達成しました。まだ途中経過ではありますが、今回は成功するだろうという手応えを感じています。断酒を支援するスマホアプリ(冒頭の画像です)が役に立っています。うまくいっている理由を心理学の学習理論で説明してみたいと思います。

学習とは(永続的な行動の変化)

心理学では学習を「行動の結果生じた比較的永続的な変化」と定義します。学習のモデルの一つにオペラント条件づけがあります。私の断酒がうまくいっているのは、オペラント条件づけがうまく機能しているからです。

オペラント条件づけとは

自発的な行動(オペラント行動といいます)に対して報酬や罰を与えることで、その行動の増やすように、または減らすにように変えていくことです。子どもの良い行動をほめて継続を促したり、悪い行動を叱ってやめさせるのもそうです。

条件づけにはオペラント条件づけの他に、パブロフの犬で有名なレスポンデント条件づけがあります。学習理論を学ぶ際には通常、両者をセットで学ぶのですが、今回はレスポンデント条件づけは省きます。別の機会に説明したいと思います。

行動の結果(起きること)が、その行動の増減の原因になる

オペラント条件づけの特徴は、行動の後に生じる結果に応じて、その行動の増減が変化することです。先に原因があるのではなく、行動の後に(その行動の頻度に影響を与える)原因が生じます。

アプリは断酒何日目かをバッジで示してくれます。努力を重ねた日数がスマホを見るたびに目に入ります。これが励みになって継続できています。

強化子と弱化子(行動を増やす刺激と減らす刺激)

その行動を強化(増加)させる結果を強化子といいます。行動を消失(減少)させる結果を弱化子といいます。「お手伝いした⇒ほめられた(⇒お手伝いする)」の場合、「ほめられた」は強化子です。「いたずらをした⇒叱られた(⇒いたずらをやめる)」の場合、「叱られた」は弱化子です。

4つの随伴性(行動と結果の関係性)

「行動⇒結果」という関係性のことを随伴性と呼びます。行動の増加・減少という2つのパターン。行動の結果が強化子または弱化子の2つのパターン。随伴性には(行動の2つのパターン×結果の2パターン=)4つのパターンがあります。

4つのパターンとは「正の強化」「正の弱化」「負の強化」「負の弱化」です。

行動増加「強化」減少「弱化」です。刺激(強化子または弱化子)の出現「正」消失「負」です。刺激は強化子でも弱化子でも出現すれば「正」で消失すれば「負」です。

刺激の出現刺激の消失
行動の増加強化強化
行動の減少弱化弱化

4つの例をあげてみます。

  • 正の強化「お手伝いした⇒ほめられた(⇒お手伝いする)」
  • 正の弱化「いたずらをした⇒叱られた(⇒いたずらをやめる)」
  • 負の強化「薬を飲む⇒頭痛がなくなった(⇒頭痛になると薬を飲む)」
  • 負の弱化「いたずらをした⇒おやつ抜きになった(⇒いたずらをやめる)」

私の断酒は『アプリの購入』と『家族への断酒宣言』からスタートしました。「お酒を飲む⇒アプリ代金が無駄に・家族が失望(⇒お酒を飲まない)」という「正の弱化」からスタートしました。言い換えると「苦痛を避けるためにがんばる」です。

1ヶ月を過ぎたあたりから日々、達成感を感じられるようになってきました。「正の弱化」に変わりはありませんが、弱化子(自己嫌悪・失望)に加えて強化子(いいね・達成感)も刺激に加わりました。

オペラント条件づけに関して補足情報を紹介して今回のエントリーを終えます。

三項随伴性(行動を起こす前の環境も影響する)

行動を起こすの前の環境も行動に影響します。先行事象や先行刺激といいます。「先行事象(Antecedent)⇒ 行動(Behavior)⇒ 結果(Consequense)」の3つの関係性のことを三項随伴性といい、行動療法ではとても重要な概念です。

お酒をコントロールできない私でも人間ドックの前日は飲みません。しかし、このような先行事象は例外的です。通常の先行事象は仕事後の疲労やストレスを感じた状態です。これを変えるのはむずかしいです。お酒やタバコには依存性があるので更にむずかしいです。

先行事象を変えようと、お金を持たずに出勤してみました。お金を持たなければ帰宅時にお酒を買わないだろうとの考えです。ダメでした。いざというときのために持っているクレジットカードで買ってしまいました。

近接性(未来の大きな幸せより目の前の小さな幸せ)

部下や子どもをほめるときのコツは、望ましい行動が出現した直後にほめることです。時間が過ぎてからほめても効果が薄いです。1ヶ月前の行動をほめられても「今ごろ何?」となります。

ダイエットがむずかしいのは、結果が出るまでに時間がかかるからです。ケーキを食べると、直後に満足を味わえるからです。私のお酒も同じです。長い目で見ればやめるのが良いに決まってます。でも、飲んだ直後の満足に近接性で負けてしまいます。

断酒アプリが良いのは、『今日○○日目』と1日に何回も確認するからです。晩酌なしの夕食後、すぐに『今日○○日目』と確認できるのは強化子の出現に相当します。

連続強化と間欠強化(ギャンブルがやめられないのは)

強化子の提示によって行動を維持・増加させることを強化といいます。強化の方法には連続強化と間欠強化があります。

連続強化とは、行動の後に毎回強化子を提示することをいいます。間欠強化とは、行動の後に強化子を不規則に提示すること、あるときは提示して、あるときは提示しないことをいいます。

  • 連続強化
    • 行動 ⇒ 強化子○
    • 行動 ⇒ 強化子○
    • 行動 ⇒ 強化子○
    • 行動 ⇒ 強化子○
    • 行動 ⇒ 強化子○
    • 行動 ⇒ 強化子○
    • 行動 ⇒ 強化子○
  • 間欠強化
    • 行動 ⇒ 強化子○
    • 行動 ⇒ 強化子×
    • 行動 ⇒ 強化子×
    • 行動 ⇒ 強化子○
    • 行動 ⇒ 強化子○
    • 行動 ⇒ 強化子×
    • 行動 ⇒ 強化子○

行動を消去するには、強化子の提示を止めます。強化子の提示を止めるとすぐに行動が消去されるわけではなく、しばらくその行動が続きます。それから徐々に行動の頻度が減っていきます。

連続強化のほうが比較的速やかに消去され、間欠強化は中々消去されません。ギャンブルが中々やめられないのは間欠強化だからです。DV被害者が加害者から離れられないのは、加害者の時々のやさしさが間欠強化となっているからと言われています。

子どもの望ましい行動を強化するには、最初は連続強化で関わり、徐々に間欠強化へ移行するのが効果的かもしれません。