やる気を起こすには、やる気に頼らない

執筆者:公認心理師・山崎孝

やる気が出なくて先延ばし。「また、やってしまった」と自分を責める。自信が損なわれる。同じ思いをしたくないから手を付けるのが遅くなる。先延ばしする。その繰り返し。負のスパイラルです。

以前、やる気について書きました。今回はその続きに相当する内容です。

前回の振り返り

簡単に前回を振り返ります。

  • 集中している状態を「作業興奮」という。
  • 「作業興奮」を起こすには、とにかく「やる」しかない。
  • そのために、行動を起こしやすい環境を作る。
  • 思考は行動を静止する。考えなくても作業に入れるように段取りを整える。
  • 作業の単位を細分化する。
  • 作業スペースの整理整頓を行う。
  • スマホやPCなど不要なものをオフにする。

気がかりなことがたくさんあると先延ばしがおこりやすい

気がかりなことがたくさんあると、一つ一つが小さいものであっても集まれば大きくなります。それらが行動するエネルギーを消耗させることがあります。

【気がかりがたくさんあってエネルギーを消耗させている例】

  • 食生活が乱れていて改善しなければと思っている。
  • 体調が良くないので病院に行こうか迷っている。
  • 睡眠が浅くて何となく身体が思い。
  • 会いたくない男性(女性)からのお誘いを断りたい。
  • たまには帰ってきなさいと実家の親がうるさい。
  • 部屋を片付けたいのに手を付けられていない。
  • 友人のLINEに返信していない。
  • 恋人に別れを切り出せない。
  • 友人と言い争いをしてモヤモヤが残っている。
  • 懇親会に誘われているが行きたくない。
  • そろそろ買い換えなければいけない家電などがある。
  • 貯金ができていないので支出を見直したい。
  • カードを使いすぎて来月の支払が気になっている。
  • 机を片付けたいけれど手を付けていない。
  • 領収書を整理したいけれど先延ばししている。
  • 上司に言われた一言がずっと気になっている。
  • 返事待ちで停滞している仕事がある。
  • 上司や同僚に聞きたいけれど聞きにくい、聞けない。
  • 上司や同僚の物言いにガマンしている。
  • NOと言えなくて仕事を抱えすぎている。
  • スキルアップの勉強をしたいけれど時間がない。
  • やらなければならないことが多すぎてストレスフル。
山崎孝
山崎孝

たくさんあって、見るだけで「うゎー!」ってなりそうですね。

やることがはっきりしているのに手を付けられないときは、たくさんの気がかりが行動のエネルギーを削っているかもしれません。一度、気がかりを整理してみましょう。

気がかりを頭の外に出す

まずは気がかりのすべてを紙に書くなどして、頭の外に出してしまいましょう。

気がかりを書き出しましょうと言われても、ざっくりすぎて出てこないということがあるかもしれません。そんなときは以下の分類が役に立つかもしれません。

  • 仕事
  • 対人関係
  • お金
  • 健康
  • 精神
  • 余暇
  • パートナー
  • 環境

「何が気がかりだろう?」と考えるより、「仕事で気がかりなことは何だろう?」と、ある程度限定された質問のほうが答えが出やすいはずです。

上記の分類は例です。何でも構いません。あなたがしっくりくる分類で試して下さい。

すぐに取り掛かりたいものを3つ選ぶ

書き出したら、その中からすぐに取り掛かりたいものを3つ選びましょう。その3つだけタスクリストに残します。

3つ以外のものは忘れてしまいましょう。覚えていても手を付けられません。むしろエネルギーを消耗するだけです。PCやスマホなどに保存しておいて、3つが終わってから考えましょう。

【すぐに取り掛かりたいことを3つに絞ってみた】

  • 懇親会に欠席の返事をする。
  • 返事待ちの案件について取引先に聞いてみる。
  • 明日は飛び込みの仕事があっても事情を説明して断る。
山崎孝
山崎孝

スッキリしましたね。
「どれからやろう」と迷わず、すぐに取り組めそうです。

よくある先延ばしのパターンが以下です。

「さあ、やろう」と思う → (たくさんの気がかりのうち何からやろうと)あれこれ考える → あれもこれもと考えて決められない → やる気がなくなる

せっかくやる気になったのに、あれこれ考え始めて行動が静止します。考えずに即、取り掛かれる状態にすることがポイントです。

すぐに取り掛かりたいことを絞っておく → 「さあ、やろう」と思う → すぐに取り掛かる → 集中(作業興奮) → はかどる

その他

他に心がけたいことを付け加えておきます。

  • 効率を求めすぎない。効率的な方法探しに時間をかけすぎると何も進まない。
  • 完璧を求めない。30点から70点を目指す。

効率や完璧を求めすぎると最初の一歩を踏み出せません。あれこれ考えてしまいやすくなります。

まとめ

  • 気がかりなことがたくさんあると行動のエネルギーが削られる。
  • 気がかりを書き出して、すぐに取り掛かりたいことを3つ選ぶ。
  • 3つ以外のことは頭から追い出して、3つのことに集中する。
  • やる気を出すには、やる気に頼らない。仕組みや工夫に頼る。