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悩みが解決するとき

先日、ある研究会に久しぶりに参加しました。時間がないを理由に足が遠のいていたのですが、心機一転、初心に返る、何でもいいのですが、改めることにしました。当日のお題は、「解決志向」アプローチという心理療法の勉強でした。

問題がなくならなければ悩みは解決しないのか?

私たちは通常、問題が起きたら原因を突きとめるなどして、問題を消失または小さくしようと試みます。多くの心理療法もこのような考え方をします。これを「問題解決志向」と呼ぶことにします。

「解決志向」アプローチでは問題を扱いません(もちろん、問題の内容など、問題に関わるお話はしっかり伺います)。

「いや、いや、問題を扱わなければ悩みはなくならないでしょ!」

そうおっしゃるのは当然だと思いますが、少しお付き合い下さい。

ある女性のお話です。Aさんとします。

Aさんには数年間、交際している彼がいました。交際期間が長い割には結婚の話も出ず、今では結婚したいとも思えず、惰性で付き合っているだけだなあと思っていました。

ある日、このままではダメだ。人生を前に進めなければと思って彼に別れを告げました。

何となく、彼はあっさり別れを受け入れるだろうと思っていました。しかし、彼は別れを受け入れてくれません。納得してもらおうとがんばりましたが、彼は「やり直そう」としか言いません。何度も電話やLINEが来ます。それが繰り返される日々に疲れ切ってしまいました。

そんな彼女を見かねた友人が、気分転換にと趣味のトレッキングに誘いました。それどころじゃないと気が進みませんでしたが、友人の熱心さに負けて、一度だけ付き合うことにしました。

当日、幸い天候に恵まれました。しかし、重い気持ちは変わりません。「しんどいなー、休日なのに」と思いながら登っていました。

しばらくすると、おいしい空気のせいでしょうか、きれいな景色のせいでしょうか、心と身体が目覚めてくる感じでした。しばらく忘れていたスッキリ感でした。頂上に着いた頃には、久しぶりに爽快感を味わっていました。

山を下りた頃には、トレッキングにすっかり魅せられてしまいました。その後、Aさんは同好会に入り、毎週のように山へ行くようになりました。同好会では仕事を離れた人間関係ができました。プライベートが充実すると、仕事にも活力を持って取り組めるようになりました。生活全体が充実していくようでした。

その間も彼の行動は変わっていませんでした。何度もAさんに連絡を取ろうとしてきました。しかし、Aさんが変わりました。彼の行動をあまり気にしなくなっている自分に気づきました。「別れる意志は伝えたのだから、後は彼自身の問題であって、私の問題ではない」と思うようになっていました。

Aさんは今でもトレッキングを楽しんでいます。仕事も充実しています。新しい恋愛が始まるには至ってませんが、今の自分はいい感じだなと思える毎日を過ごしています。

さて、Aさんの問題は解決したでしょうか?

Aさんに「解決しましたか?」と聞くと、「解決した」と言うかもしれません。「解決したというより、気にならなくなった」と言うかもしれません。

どちらでもいいですよね。問題が問題ではなくなったわけですから。

解決を構築する

上記の例から、以下のことが言えます。

  • 問題を解決しようとする努力が、かえって問題を維持することがる。
  • 問題そのものに対処しなくても、解決に至ることができる。

Aさんは彼に納得してもらおうとしました。それは誠実な姿勢とも言えます。決して悪いことではありません。しかし、解決する努力が悩みを深める結果になりました。

Aさんの充実度が増すにつれて、彼(と彼の行動)が気にならなくなっていきました。問題がなくなったわけではありませんが、Aさんにとって解決と言える状況が実現しました。

解決志向アプローチでは、問題が解決したとき、どのような現実が起きているか(解決像)を一緒に考えていきます。解決像の中に問題はありません。解決像が実現すると問題はなくなっています。

解決すると問題が問題でなくなっている、だから問題を扱う必要はない。これって、すごい発想の転換だと思いませんか。

当カウンセリングルームで多い相談の一つが「自分に自信がない」です。その場合も、「自信が育ったら、どのようなことが起きているでしょうか、どのようなことをしているでしょうか」と必ず解決像を伺います。

解決像が明確になると、目的地が明確になります。目的地が明確になると、そこへたどり着く具体的な方法を明確にしやすくなります。

何かに悩んだとき、この発想を試してみてはいかがでしょう。試す価値は大いにあるはずです。

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