【悩みの解決】問題そのものの解決が困難なとき

執筆者:山崎 孝
公認心理師・ブリーフセラピスト・家族相談士

反すう思考が悩みを大きくする

悩みを解消するためには、問題そのものを解決しなければならないと考えていませんか。

もちろん、問題そのものの解決がベストな場合も多いでしょう。しかし、すべての問題がすぐに解決できるわけではありません。あるいは、そもそも解決が困難な問題もあります。そのようなとき、「問題解決以外」の方法で悩みを軽くする必要があります。

ストレス対処法(ストレスコーピングと言います)には、大きく2つの方向性があります。

  • 問題焦点型の対処:問題の原因を直接取り除いたり、状況を変えたりするアプローチ
  • 情動焦点型の対処:気持ちの整理や緊張をほぐすなど、感情面に働きかけてストレスを和らげる

問題そのものに対処できない場面では、後者の情動焦点型の対処が重要になります。たとえば、人に話を聞いてもらう、気持ちに寄り添ってもらう、趣味やスポーツなどでストレスを発散するなどの方法です。これらをうまく取り入れることで、悩みの「苦しさ」を和らげていくことができます。

「悩み」と「問題」を切り離して考える

悩みが長引く人は、「問題を解決しなければならない」「問題を放置してはいけない」という考え方が強い傾向があります。もちろん、その考え方が悪いわけではありません。しかし、繰り返しになりますが、すぐに解決できない問題、そもそも解決できない問題があることも現実です。

一方で、切り替えが早い人は、悩みと問題をうまく切り離して考えています。

  • 問題そのものは時間をかけて対処するしかない。
  • しかし、だからといって苦しい気持ちに縛られる必要はない。

悩んでも事態が変わらないのであれば、「問題は問題」「悩みは悩み」と切り分けられるほうが、健康度が高くなります。健康度の高さと対処力の高さは概ね比例するはずです。

問題解決には時間がかかることが多い

問題を解決するには、職場の人間関係、経済的な事情、環境の変化など、さまざまな要素が絡んでいます。そのため、すぐには解決できないことがほとんどです。

  • 人事異動で苦手な上司と一緒になった場合、当面その上司と仕事を続けるしかありません。短期間でこの状況を変えるのは難しいでしょう。
  • あるいは受験に失敗したからといって、直ちに結果を覆すことはできません。

このように、問題そのものの解決が難しいとき、「悩みを別の方向から軽くする」ことが必要になります。

「悩み」は「苦しみを伴う思考」

悩みとは、問題によって生じる「苦しみを伴う思考」です。

  • 問題が発生する
  • そのせいでつらい気持ちになる
  • 頭の中で「どうしよう」「なぜこうなった」と何度も反すうしてしまう

この「反すう思考」(同じ考えを何度も繰り返してしまうこと)こそが悩みの正体です。何度も考え込むほど、苦しさが増幅します。

反すう思考が解決を遠ざける

反すう思考は、悩みを深刻化させます。気づくと、一日中頭の中で同じことがぐるぐる回っている状態です。

  • 思考能力が低下しやすく、仕事や勉強などに集中できない
  • ミスが増え、さらに落ち込む
  • 新たなトラブルが生まれ、悩みが増える

反すう思考は私たちのパフォーマンスを下げ、結果的に問題解決から遠ざけてしまいます。

問題解決以外の悩みの解決方法

以下は問題解決以外の対処法の例です。目新しいものはないと思います。中には「意味があるのだろうかと」感じることがあるかもしれません。しかし、何度も見たり聞いたりするのは、それが有効で活用し続けられているからです。

  • 話を聞いてもらい、共感を得る
    • 同僚や友人、上司、カウンセラーなどに気持ちを話すことで、心が軽くなります。
    • 「自分だけじゃない」と分かるだけでも安心感が生まれ、孤立感が和らぎます。
    • 話すことで思考や感情が整理されて、気づきが起こりやすくなります。
    • 周囲の人が協力的で、具体的なサポートを得られることも少なくありません。
    • 相談することで、新しい視点や情報が得られることがあります。
  • 心と身体をリフレッシュする
    • スポーツやカラオケ、マッサージ、サウナなどの活動で体をほぐすと、頭の中のモヤモヤも軽くなります。
    • 過度な飲酒は避けながらも、自分に合った適度な発散方法を見つける、用いることです。
  • 考え方を柔軟にする
    • 「どうにかなるさ」「最悪の事態にはならないだろう」と開き直ります。
    • 「このピンチを成長の機会に」と捉え直します。
    • 時間が解決した経験を思い出すことで気持ちが軽くなることがあります。

いずれも問題そのものが解決しているわけではありません。しかし、悩みのサイズが小さくなるほど、思考能力や行動力は回復し、長期的には問題解決につながりやすくなります。

悩みが大きいときは、最後の「考え方を柔軟にする」を自力で行うのが困難なことがあります。そのようなときは、誰かに話を聞いてもらったり、ときにはカウンセリングを利用することが有効です。

一つ事例を紹介します。

パワハラ上司に苦しみながらも異動までカウンセリングで持ちこたえた女性

その女性は、明らかにメンタルヘルス不調に陥っていました。今にも尽きてしまいそうな気力を振り絞りながら、その日一日を何とか耐えて凌ぐ毎日を過ごされていました。

メンタルクリニックの受診を勧めてみましたが、ご本人がおっしゃるには古い体質の職場で、心の病への偏見があり、受診することで評価への悪影響が懸念されるとのことで、受診を受け入れてもらうことはできませんでした。

ご本人がおっしゃるには、会社の制度上、今年度末でその上司は異動するはずだから、何とか現状のままがんばりたい。カウンセリングでは、話を聞いてもらって、苦しい気持ちに寄り添ってもらえたら良いとのことでした。

約半年間通われました。目論見通り上司は異動になりました。カウンセリングを必要としない程度に回復されて終了となりました。

100%の解決を目指すと逆に遠ざかる

「上記の方法は根本的な解決ではない」「100%の解決ではない」と思う人もいるかもしれません。その通りですが、それは「白黒思考」(すべてが完璧に解決しないと意味がない、という極端な考え方)に陥っている可能性があります。

  • 白黒思考は、現実には困難な「完璧な解決」を求めてしまい、かえってストレスを増やします。
  • 完璧な解決ができない状況でも「少しでも心を軽くする」「少しでもエネルギーを保つ」ことが大切です。

悩みを小さくすることができれば、頭の疲れも回復し、今より冷静に対策を考えられるようになります。結果として、長い目で見れば問題解決に近づくのです。

変えるのではなく、幅を広げる

カウンセリングをしていると、「性格を変えたい」「考え方を変えたい」と訴えられる機会がしばしばあります。

そのようなとき私は、「変えるのではなく、幅を広げると考えてみませんか」と提案します。

今の性格や考え方は、これまでの人生において形成されたものです。今も持ち続けているのは、これまでの人生において役に立つ場面があったからです。まったく役に立たなかったのであれば、どこかで捨てているはずです。

今悩んでいるのは、その性格や考え方で上手く対処できない状況に置かれてしまったからです。それなら、上手く対処できる考え方を追加して、「自分の幅を広げる」のが良いと思いませんか。

最後に

問題がすぐに解決できない場合、私たちは「悩みの苦しさ」をどう和らげるかを考える必要があります。悩みは「思考の苦しさ」でもあるため、気持ちを楽にする方法を取り入れることで、結果的に問題解決の可能性も高まります。

  • 反すう思考に陥らないように、適度に気分転換する
  • 誰かに話を聴いてもらって、感情面でのサポートを受ける
  • 新しい行動パターンを試して「幅」を広げる
  • 完璧を目指しすぎず、まずは「悩みのサイズを小さくする」ことを目標にする

これらの取り組みは、レジリエンス(回復力)を高めることにもなります。

また、カウンセラーなど専門家の手を借りることも選択肢の一つです。カウンセラーは、悩みの整理やストレスマネジメントを専門としています。問題解決が困難な状況でも、あなたの気持ちを少しでも軽くし、前に進むためのお手伝いができるはずです。

悩みを抱えたまま日々を過ごすのはつらいことです。だからこそ、「問題解決以外の解決」も視野に入れ、心の健康を守りながら、あなたなりのペースで乗り越えていくことを考えてみて下さい。

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