【自分に自信がない】恋愛を通して自信を育てる

執筆者:公認心理師・山崎孝

恋愛は「自他尊重のコミュニケーションを身につける機会」「自信を育てる機会」「自己理解と自己受容を深める機会」「自己成長する機会」になります。

この投稿について

「自分に自信がない 恋愛できない」などのキーワードで検索して、このページにたどり着かれたと思います。一般的な内容とは少し異なる提案をしたいと思います。

この投稿は以下の読者層を想定しています。
  • 20代から30代の男女
  • 恋愛において自信を持てず、改善するための情報を探している
  • 生活全般において自己肯定感を高めたいと思っている
  • 自己理解と自己受容を深めたいと思っている
  • 内面を成長させたい意欲を持っている
  • 対人関係のスキルを向上させたいと思っている

自信のなさが恋愛に与える影響

自信がないことによる影響人それぞれです。自分自身への影響(=問題・困りごと)を明確にするのは、解決へ向かうのにとても重要です。

恋愛前と恋愛中

  1. 機会の逃失:相手へのアプローチをためらわせて、チャンスを逃しやすくなります。
  2. コミュニケーション:気持ちや考えを口にすることを躊躇して、誤解やコミュニケーション不足を引き起こすことがあります。
  3. 自己開示の恐れ:悪印象を持たれる恐れから、自分の本音や弱みを見せられないことがあります。
  4. 依存性:恋人に依存して自己肯定感を得ようとして、健康な関係を築く上での障害になることがあります。
  5. 関係の不均衡:相手に過度に譲歩したり、自分の意見を主張しなかったりすることで、関係が不均衡になることがあります。
  6. 嫉妬や不安の増加:相手の行動や関心に対して不安を感じやすく、嫉妬深くなりがちです。
  7. 自己犠牲の傾向:自分を犠牲にして相手を喜ばせようとして、ストレスや疲労を蓄積させることがあります。

上記は具体的な事例をまとめて抽象化しています。例えば、

  • お茶や食事に誘うことはできるけれど、その先へ進むアプローチをためらう
  • お茶や食事に誘うこと自体をためらう

は、どちらも【1.機会の損失】に含まれています。

恋愛が終わった後

こちらも上記と同様に抽象化しています。

  1. 自己価値のさらなる低下:恋愛が終わると、その終わりを自分のせいと捉えがちです。自己評価をさらに下げる原因となり得ます。
  2. 回復に時間がかかる:失恋から立ち直るのに長い時間がかかることがあります。
  3. 次の恋愛への恐れ:失恋経験が傷となり、新しい恋愛への恐れや不安を抱くことがあります。
  4. 依存的な関係の繰り返し:依存的なパターンを新しい関係でも繰り返す傾向があります。
  5. 過去の関係への執着:過去の恋愛関係を理想化し執着して、新しい関係に進むのを妨げることがあります。

繰り返しになりますが、自信がないことによる影響人それぞれです。自分自身への影響(=問題・困りごと)を明確にするのは、解決へ向かうのにとても重要です。

自分に自信がない原因

自分に自信がない原因を考えるとき、自信のなさの改善を考えるとき、「自信喪失の起因」と「自信不足の持続要因」を認識することが重要です。

自信喪失の起因

自信を持てなくなった原因には様々なものがありますが、以下は一般的に自信の低下に大きな影響を与えると認識されています。

  1. 生育環境:親や教師からの厳しい批判や過度の期待、他者との比較は、自己価値観の形成段階において深い影響を及ぼすことがあります。
    【例】幼少期に親から絶えず「他の子と比べてできが悪い」と言われ続けた子どもは、大人になっても自分を低く評価する傾向があります。
  2. 失敗体験:失敗や否定的なフィードバックの繰り返しは、自己効力感を低下させ、自信を喪失させる原因となります。
    【例】新しい仕事に挑戦したが失敗し、それ以降新たなチャレンジを恐れるようになったケースです。
  3. 社会的比較:SNSなどでの他者との比較は、現代社会において劣等感を引き起こす主要な要因です。
    【例】SNSで友人たちの成功を見て、自分の成果が十分でないと感じることがあります。
  4. メンタルヘルスの問題:不安障害、うつ病などの心理的な健康問題は、自己評価や自信に大きく影響を及ぼします。
    【例】不安症により社会的な場面での自信が低く、避けるようになる場合です。
  5. 否定的な自己対話:自分自身に対する否定的な内的対話は、自信を低下させる重要な要因です。
    【例】自分に対して「何をやってもうまくいかない」「私はダメな人間だ」と繰り返し言い聞かせる状況です。
  6. 肯定的な経験の欠如:自分の能力や価値を肯定する経験の不足は、自信を築く機会を奪います。
    【例】自分の成功を認めず、常に自己を過小評価することです。
  7. 社会的支援の欠如:家族や友人などの社会的ネットワークからの支援や肯定的なフィードバックが不足している場合、自信を育む土壌が不足します。
    【例】仕事での成功を友人や家族と共有できず、自信を感じる機会が少ないケースです。

自信不足の持続要因

自信のなさを持続している要因には様々のものがありますが、代表的なものとして以下に7つをあげました。これらは自信の不足が持続する原因として一般的に認識されています。

  1. 体験の回避:自信がないことにより、新しいチャレンジや社交的な場面を避ける傾向。この回避行動は自信を高める機会を失わせ、不足を維持します。
    【例】断るべき要求を断らずにいると、前も受け入れたからとますます断りにくくなります。自信不足の維持すると同時に、自信を更に低下させることにもなります。
  2. 否定的な自己対話:自己に対する否定的な内的対話は、自己評価を下げ、自信の不足を強化します。
    【例】何か小さなミスをした際に「私はいつも間違いばかり」と自分自身を責め続ける場合です。
  3. 社会的比較:特にSNSなどでの他者との比較は、自己評価を低く保ち、自信の不足を維持します。
    【例】同僚が昇進したことを知り、自分のキャリアが停滞していると感じ、自信を失います。
  4. 過去の失敗への固執:過去の失敗体験に過度に焦点を当てることは、現在の自信を低下させ続けます。
    【例】以前の恋愛関係がうまくいかなかったことを何年も引きずり、新しい関係を築く自信が持てない状況です。
  5. 肯定的フィードバックの無視または割引:他人からの肯定的なフィードバックを無視するか、その価値を低く評価することは、自信不足を強化します。
    【例】上司からの肯定的な評価を「彼はただ親切なだけ」と一蹴し、自分の成功を認めない場合です。
  6. 完璧主義:高すぎる基準を設定し、それを達成できないことによる自信の損失。
    【例】自分の仕事が完璧でなければ価値がないと感じ、常に不満を抱えて自信を失う状態です。
  7. 社会的支援の欠如:支援的な社会的関係の不足は、自己肯定感の形成に必要な外部からの肯定を提供しません。
    【例】重要な試験に合格したにも関わらず、周囲からの祝福や支持が得られず、その成果に自信を持てないケースです。

自信を育てるための一歩

過去や他人は変えられないかもしれませんが、現在の自分は変えられます。

過去に起きた自信喪失の起因変えられないかもしれませんが、現在起きている自信不足の持続要因変えられます。維持要因を理解し、それらに対処することで、自信を育てていく道が開かれます。

自信を持つことは、一晩で達成できるものではありません。それは、小さな成功を積み重ね、失敗から学び、肯定的な自己対話を実践することから始まります。

また、周囲の支援を求め、受け入れることも重要です。自分自身に優しく、一歩一歩自信を築いていく過程を楽しむことが大切です。自信は、自己受容と自己成長の旅の中で育まれるものです。

自信がないことによる悪影響と持続要因を改善する

繰り返しますが、自信を育てる方法は、自分に起きている悪影響と、悪影響を持続している要因の改善です。

以下は女性をデートに誘えない男性Aさんとの会話例です。

  • Aさん
    「気になる女性がサークルにいて、彼女も僕に良い印象を持ってくれていると思います。食事に誘ってみたいのですが、勇気が出ません」
  • カウンセラー
    「何があれば誘えると思いますか」
  • Aさん
    「自分に自信がつけば誘えると思います」
  • カウンセラー
    「自信がつけば何が変わりますか」
  • Aさん
    「断られても、ダメージを受けないと思います」
  • カウンセラー
    「断られると、どのようなダメージを受けますか」
  • Aさん
    「男性として魅力や価値がないと否定された気持ちになります」
  • カウンセラー
    「それは怖いかもしれませんね」
  • Aさん
    「そうなんです。断られるのが怖いんです」
  • カウンセラー
    否定される怖さがAさんを躊躇させるのですね」
  • Aさん
    「はい、そうです」

Aさんに起きている自信がないことによる悪影響断られるのが怖いことです。持続要因は傷つくかもしれない体験を避ける(誘わない)ことです。以下の悪循環が予想されます。

  1. 断られるのが怖い
  2. 誘わない(体験の回避
  3. 短期的には傷つかない
  4. 誘わなかった後悔から自信低下
  5. 更に断られるのが怖い
  6. 更に誘わない(体験の回避
  7. 短期的には傷つかない
  8. 誘わなかった後悔から更に自信低下
  9. <以上を繰り返す>

体験の回避を繰り返すと、不安怖さ増大することがわかっています。もはや恋愛に向かえないことも起こりえます。

自信低下の持続要因の中でも、体験の回避の影響力は大きいです。恋愛に限りません。

例えば、職場の人間関係でつまずくなどすると、転職によって葛藤を回避する人がいます。転職を繰り返した結果、通勤圏に働き場所がなくなってしまうという極端な例もあります。

恋愛における自信をつける方法

恋愛における自信をつける一般的な方法を、「認知面のアプローチ」と「行動面のアプローチ」に分けて紹介します。認知とは思考や受け取り方、考え方を意味します。

認知面のアプローチ

  • 自己理解の深化:自己の長所や価値観について深く考え、自己認識を高める。
  • ポジティブな自己対話:自己批判的な思考を減らし、肯定的な自己対話を通じて自己評価を向上させる。
  • 過去の成功体験の反芻:過去の成功体験を思い出し、それらを自信の源として利用する。
  • 自己受容:自身の短所や過去の失敗を受け入れ、自己の完全なる受容を目指す。

行動面のアプローチ

  • コミュニケーションスキルの向上:実際のコミュニケーションの場面でスキルを磨き、対人関係での自信を構築する。
  • リアルな目標設定:実現可能な小さな目標を設定し、それを達成することで自信を築く。
  • 外見への投資:外見に投資し、自己イメージの改善を図る。
  • 社交的な活動への参加:新しい社交的な環境に身を置くことで、自信を得る機会を増やす。

Aさんをサポートする場合

先ほど取り上げたAさんをサポートする場合、一例として以下のアプローチが考えられます。

  • 【認知面】誘いを断られると人格否定されたと感じるのは、白黒思考、結論の飛躍、拡大解釈といった偏った考え方(認知の偏り)によるものと考えられる。バランスの良い考え方を選択できるようにサポート。
  • 【行動面】いきなり食事に誘うのはハードルが高い可能性がある。ハードルの低い行動をいくつか設定して、階段を一段ずつ上がるようにして、怖くても行動する自分を育てる取り組みを提案する。

他のアプローチ

認知と行動の切り口の他に、以下のようなアプローチ方法が考えられます。

  1. 内向的アプローチ vs 外向的アプローチ
    • 内向的アプローチ:自己理解の深化、ポジティブな自己対話、過去の成功体験の反芻、自己受容など、自己の内面に焦点を当てた方法。
    • 外向的アプローチ:コミュニケーションスキルの向上、外見への投資、社交的な活動への参加など、他者や外界との関わりを通じて自信を高める方法。
  2. 短期的アプローチ vs 長期的アプローチ
    • 短期的アプローチ:即座に自信を高めることができる行動や思考の変更(例:ポジティブな自己対話、外見への投資)。
    • 長期的アプローチ:長い期間をかけて自信を築くための方法(例:自己理解の深化、社交的な活動への参加)。
  3. 自立的アプローチ vs 相互依存的アプローチ
    • 自立的アプローチ:自己受容、自己理解の深化など、他者から独立して自信を育てる方法。
    • 相互依存的アプローチ:コミュニケーションスキルの向上、社交的な活動への参加など、他者との関わりにおいて自信を築く方法。
  4. 感情的アプローチ vs 行動的アプローチ
    • 感情的アプローチ:自己受容、ポジティブな自己対話など、感情に基づく自信の構築。
    • 行動的アプローチ:外見への投資、リアルな目標設定など、具体的な行動に基づく自信の構築。

唯一の正解はありません。カウンセリングでは、たくさんの正解の中から、あなたにあった正解を一緒に探して、一緒に解決に取り組みます。

恋愛を通じて自信を育てる

冒頭で以下のように申し上げました。

恋愛は「自他尊重のコミュニケーションを身につける機会」「自信を育てる機会」「自己理解と自己受容を深める機会」「自己成長する機会」になります。

恋愛を「自信を育てる機会」と捉えてみませんか。

自信とは育てるものです。また、自信の多くは人間関係を通して育つものです。そのままの自分が受け入れられる自信は、実際に他者に受け入れられる経験で育ちます。

自分の長所を知るのも他者を通じてのことが多いです。長所とは、自分にとって当たり前でも、他者から見ると秀でているといったものです。自分では気づきにくいものです。

相手を尊重しながらも、ときには相手と異なる考えをしっかり主張して、お互いの理解を深めるアサーティブコミュニケーションは、ただの仲良しから、関係のステージをあげていくスキルです。

人は他者を通して自己理解を深めます。

他者との対話を通じて、自分自身を客観的に見る機会を得ます。他人からのフィードバックや反応は、自分自身の行動や考え、感情についての「鏡」となります。自分では気づかなかった自己の特徴や行動パターンを発見することができます。

他者とのコミュニケーションでは、自分の考えや感情を言葉にする必要があります。この言語化のプロセスは、自己理解を深める重要なステップです。自分の内面を言葉にすることで、曖昧だった感情や考えが明確になり、自己理解が促進されます。

当カウンセリングルームでは、問題や課題をクリアすることによって自信を育てるサポートを行っています。興味をお持ちの方は、まずは体験カウンセリングからお試し下さい。

まとめ

  • 自信がないことによる悪影響を明確にすることから。
  • 自信喪失の起因より自信低下の持続要因に対処する。
  • 体験の回避が自信低下の悪循環をもたらす。
  • 人は他者を通して自信を育てる。自己理解を深める。
  • 恋愛を自信を育てる機会として捉えてみませんか。