カウンセリングと心理療法

執筆者:公認心理師・山崎孝

カウンセリングは職業相談、進路相談から始まりました。心理療法は精神疾患の治療から始まりました。現在では、カウンセリングと心理療法を区別せずに、カウンセリングは心理療法を含むものとして捉えられています。

カウンセリングとは

カウンセリング(counseling)を直訳すると「相談」です。婚活カウンセラー、美容カウンセラーなど、様々な専門家による相談・援助行為も広い意味でカウンセリングに含むと考えられます。

カウンセリングは職業相談から始まり、後に進路指導や学校生活への適応など、教育現場における心理的援助に対して用いられるようになりました。

カウンセリングは、「人間は生まれながらにして、自己実現に向かって生きる力を備えており、自分で目標を定めて、それに向かって行動できる存在である」とする人間性心理学の影響を強く受けています。人間に対する信頼や人間性を尊重する姿勢が基盤となっています。

人間性心理学派を代表するカール・ロジャーズは「人間には本来、自己実現に向かう力が備わっている」と考え、カウンセラーの役割は「クライエントがその力を発揮する人間関係を提供すること」としました。

カウンセラーの役割は、アドバイスや解決策を提供することではなく、クライエントが既に持っている力を発揮して解決に向かう環境を提供すること、と言い換えることができます。

心理療法とは

心理療法は臨床心理学や精神医学を源とします。患者の問題や症状を専門家が「治療」するという色合いが強いものです。「専門性」と「治療」に焦点が当てられています。

セラピスト(心理療法家)は、認知行動療法、精神分析的療法、家族療法など、独自の理論と技法を訓練によって習得してクライエントを支援します。

現在は「カウンセリング 」=「カウンセリング+心理療法」

「カウンセリング」と「心理療法」が支援する領域には重なる部分があり、明確に線引きできるものではありません。現在は、カウンセリングは心理療法を含むものとして定義されています。

カウンセラーや医師が「カウンセリング」と言うとき、「カウンセリング+心理療法」を意味すると考えて間違いありません。実際、臨床心理士が活躍する代表的な現場は教育の場であり、スクールカウンセラーとしてです。

世界的にも同じ傾向にあります。精神疾患など精神的な障害の治療・改善に力を注いできたために、人生をより充実させる、実りあるものにする視点が欠けていたという自省からのようです。

<参考>
平木典子・藤田博康(編2019)『カウンセリング心理学』新曜社

以下のページもご参照下さい。