自信を持てないあなたへ ~「うまく頼る」が自信を育む

執筆者:山崎 孝
公認心理師・ブリーフセラピスト・家族相談士

多くの方が「自立とは、一人で生きていくこと」「人に頼らないこと」だと考えています。

しかし、それは誤解です。実は、本当の自立とは「依存先を増やすこと」なのです。この一見矛盾する考え方は、多くの専門家も支持する、より豊かで充実した人生を送るための重要な鍵となります。

はじめに ~ 自立と依存の新たな関係

「自立」という言葉を聞いて、あなたは何を思い浮かべますか?おそらく、多くの人が「一人で生きていくこと」や「他人に頼らないこと」をイメージするでしょう。確かに、自分の力で物事を成し遂げることは大切です。しかし、それだけが「自立」ではありません。

結論から言うと、「自立とは依存先を増やすこと」なのです。一見矛盾するようにも聞こえるこの言葉は、実は多くの専門家が支持する考え方です。

自立と依存は、相反するものではありません。むしろ、真の自立とは、自分の力で生きていく能力と、必要なときに他者の助けを借りる勇気の両方を持ち、それらをバランスよく使いこなすことなのです。

この投稿では、「自立」と「依存」の新たな関係を解説し、依存先を増やすことがいかに私たちの人生を豊かにし、自信を育むかについて、お伝えしていきます。

自立への誤解 ~ 一人で抱え込むことが自立ではない

人は誰にも頼らずに生きられるのか?

私たちは、自立とは「一人で生きること」「誰にも頼らないこと」だと考えがちです。社会で活躍する人々は、一見するとすべてを一人で成し遂げているように見えるかもしれません。しかし、それは自立への誤解だと言えるでしょう。

完全な自立など、現実には存在しません。人は、生まれた瞬間から親に頼り、成長するにつれて友人、教師、そして社会に頼るようになります。仕事では同僚や上司に頼り、困ったときには家族や友人に助けを求めます。

例えば、あなたが毎日食べている食事を考えてみてください。食材を育てた農家、商品を運んだドライバー、販売した店員、それぞれが役割を果たすことで、あなたの食卓が成り立っています。電気や水道などのインフラも同様です。

私たちは、意識せずとも多くの人々に支えられ、社会という大きなネットワークの中で生きているのです。

助けを求める力こそ、真の自立への鍵

自立とは、誰にも頼らないことではありません。むしろ、自分の力で生きる部分と、他者に頼る部分のバランスを上手く取ることこそが重要なのです。自分でできることは自分で行い、助けが必要なときには素直に周囲に頼れること。それこそが真の自立と言えるでしょう。

「自立とは依存先を増やすこと」という考え方は、一見逆説的に聞こえるかもしれません。しかし、この考え方を理解することで、私たちは自分の限界を認め、他者との関わりをより大切にできるようになります。

以下はこの考えを支持する書籍からの引用です。

自立とは、人をあてにしなくても自分の力で生きられることと、自分ではできないときに素直に人に援助を求める能力を意味します。

子どもの心のコーチング―一人で考え、一人でできる子の育て方 (PHP文庫)P35より引用

頼らないのが自立ではなく、助力が必要ならばそれをきちんと他人に伝えられることが自立なのです。

ニーチェ「ツァラトゥストラ」2011年8月(100分de名著)P55-56より引用

依存先を増やすことのメリット ~ 人生の選択肢と、心の支えを増やす

自立を目指す上で、依存先を増やすことは非常に重要です。多様な視点を取り入れ、助けを求められる環境を築くことができ、結果として、人生の可能性を広げ、心の安定にもつながります。

多様な視点や知恵が、あなたの可能性を広げる

依存先を増やす最大のメリットは、多様な人々と関わることで、様々な視点や知恵を得られることです。

私たちは、自分の経験や知識だけでは、物事を偏った視点で見がちです。しかし、異なる背景を持つ人々から意見を聞くことで、新たな発見や、自分一人では思いつかなかった解決策を得られることがあります。これは、問題解決能力を高め、個人の成長を大きく後押ししてくれます。

助けを求められる環境が、心の安定をもたらす

人は誰しも、困難な状況に直面することがあります。そんな時、信頼できる相談相手がいることは、心の大きな支えとなります。依存先を増やすことは、困ったときに助けを求められる環境を築くことにつながります。

例えば、仕事で大きなミスをした時、信頼できる上司や同僚に相談することで、解決策が見つかるだけでなく、精神的な負担も軽減されます。「自分は一人ではない」という安心感は、心の安定をもたらし、困難を乗り越える力となるのです。

受け入れられる経験が、自信を育む

依存先を増やし、他者に助けを求めることは、「自分を受け入れてもらえる」という安心感や信頼感を育みます。誰かに頼り、それを受け入れてもらう経験は、「自分はここにいてもいいんだ」「自分は価値があるんだ」という自己肯定感、つまり自信へとつながります。

自立と依存の理想的なバランス ~ しなやかに生きるために

自立と依存は対立しない ~ バランスが重要

自立と依存は、一見すると相反するように思えます。しかし、実際には、両者はバランスを取ることが重要なのです。自立と依存は対立するものではなく、互いに補い合う関係にあります。真に自立した人とは、自分の足で立ち、同時に、必要な時には他者に助けを求められる人なのです。

自分でできることは自分でやり、助けが必要なときは素直に頼る

自立した人生を送るためには、自分でできることは自分で行うことが大切です。自分の力で問題を解決し、責任を持って行動することで、自信と自尊心を高められます。また、自分の能力を向上させ、より大きな目標に向かって前進することもできるでしょう。

一方で、必要な時に助けを求めることも、同じくらい重要なスキルです。誰もが、すべてを一人でこなすことはできません。時には、専門家の知見や、他者の支援が必要になります。そのような場合、適切に助けを求めることは、自立した人生を送る上で不可欠なスキルなのです。

他者への過度な依存は避け、自分の責任を果たす

ただし、他者への過度な依存は避けなければなりません。自分の責任を他者に押し付けたり、常に他者の助けを当てにしたりすることは、真の自立とは言えません。自分でできることは自分でやり、助けが必要な部分だけを他者に頼るというバランス感覚を身につけましょう。

自立と依存のバランスを取ることで、自分の力を最大限に発揮しつつ、必要なサポートを得ることができます。これは、健全な人間関係を築く上でも非常に重要なことです。

依存先を増やすための具体例

困ったとき、悩んだときの依存先として、以下のようなものが考えられます。

  • 家族や親しい友人
    • 信頼できる家族や親しい友人は、相談相手として頼りになります。彼らは、あなたの状況を理解し、精神的支援を提供してくれるでしょう。
  • 専門家(カウンセラー、医師、弁護士など)
    • 深刻な問題に直面している場合、専門家に相談することが有効です。カウンセラーは心理的な問題に、医師は健康上の問題に、弁護士は法的な問題に対処するための専門知識を持っています。
  • 職場の上司や同僚
    • 仕事関連の問題では、上司や同僚に相談するのが適切です。彼らは、似た状況に対処した経験を持っている可能性が高く、会社の方針に沿ったアドバイスをくれるでしょう。
  • 地域のサポートグループや団体
    • 特定の問題(依存症、疾病、育児など)に特化したサポートグループや団体があります。同じ問題を抱える人々と話をすることで、共感と実践的なアドバイスを得られます。
  • オンラインのフォーラムやソーシャルメディア
    • インターネット上には、様々な問題に関する情報交換の場があります。匿名性が保たれる場合もあり、気兼ねなく相談できるでしょう。ただし、情報の信頼性には注意が必要です。
  • ヘルプラインや相談窓口
    • 多くの組織や政府機関が、特定の問題に関する電話やオンラインの相談窓口を設けています。訓練を受けたスタッフが、適切な助言やリソースを提供してくれます。

これらの依存先は一例です。自分に合った依存先を、時間をかけて見つけていきましょう。また、誰かに頼ることは、その人に「頼られる」という役割を与えることでもあります。助け合う関係を築くことは、より豊かな人間関係を築くことにもつながるでしょう。

まとめ

  • 自立とは、「一人で生きること」ではなく、「依存先を増やすこと」
  • 依存先を増やすことは、多様な視点を得て、助けを求められる環境を築くことにつながる
  • 「助けて」と言えることは、弱さではなく強さ
  • 「助けてもらう」経験が、受け入れられる安心感を育み、自尊感情を高める
  • 自立と依存のバランスを保ちながら、柔軟に生きることが大切

当カウンセリングルームでは、「自分に自信を持てない悩み」のサポートを行っています。自信の悩みの背景には、アダルトチルドレンやHSPの影響が見られることもあります。それらのサポートに(手前味噌ですが)定評があります。詳しくは以下のページをご覧下さい。

参考文献・参考サイト
  • 菅原 裕子 2007 子どもの心のコーチング 一人で考え、一人でできる子の育て方 PHP文庫
  • 西 研 2011 ニーチェ『ツァラトゥストラ』 2011年8月 (100分 de 名著) NHK出版
  • 自立とは「依存先を増やすこと」|全国大学生活協同組合連合会(全国大学生協連) https://www.univcoop.or.jp/parents/kyosai/parents_guide01.html 2012年3月22日閲覧

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