気楽にやってみよう

執筆者:公認心理師・山崎孝

当カウンセリングルームは事業としてカウンセリングサービスを提供しています。利用者がいらっしゃるからこそ、事業を継続できます。利用していただくには、まずは存在を知ってもらわなければなりません。「知らない=存在しない」と同じだからです。

知ってもらう方法の一つがブログです。ブログのマメな更新はホームページ開設時からの目標でした。しかしながら、この数年まったくできていません。「何がそうさせるのだろう?」と、年明けからぼんやり考え続けていました。

気ままに楽しんで書いていた初期

ブログを書くのはいいのですが、日記のようなものを書くのか、専門的なことを書くのか、どうしようか?と考えました。

想定する読者は、初めてのカウンセリングを検討している人です。「初めてのカウンセリングで不安を感じるのは何だろう?」と考えると、あっさり決まりました。「カウンセラーは、どんな人だろう?」と多くの人が気になるだろうと思いました。

「私の人柄が表れるようなことを書く」に決めました。あれこれ考えずに、心理やカウンセリングにこだわらずに、気持ちの赴くままに書くことにしました。

私という人間を語るときに欠かせないのは、子育てに深い深い後悔を抱えていることです。叱って育てるならマシでした。怒って育てていました。子どもとの関係においては、後悔をどれだけ取り戻せるかが、残りの人生のテーマです。

うちの子は3人とも、中学から高校卒業まで吹奏楽に打ち込みました。文字通り打ち込みました。子どもたちの吹奏楽をできる限り応援するのは私の楽しみでもあり、贖罪の一つの形でした。

そのような背景から、当時のブログは吹奏楽の話題ばかりでした。頭より感情で書いていました。感情を垂れ流していました。文章が下手でも、気持ちは伝わるものだなあと思っていました。「私も吹奏楽をやっています(やっていました)!」と、クライエントさんから言われることがよくありました。

子どもたちの高校卒業とともに、吹奏楽熱が下がっていきます。私は吹奏楽ファンになったと思っていましたが、実は「わが子」の吹奏楽ファンでした。「わが子」がなくなると興味がしぼんでいきました。同時にブログの更新頻度が下がっていきました。

井の中の蛙

あるとき、『カウンセリングや心理に関係のない投稿は、検索エンジン対策的(SEO)にはマイナスになり得る』という情報を目にしました。それをきっかけに、SEOに意味のある投稿(=カウンセリング・心理に関する投稿を増やす)を意識するようになりました。

実は、10年前に開業した頃のほうが、今より自分の実力に自信がありました。

もちろん、勘違いです。単に無知だったからです。今より知識は貧弱で、スキルは未熟でした。それでも自信を持っていたのは、井の中の蛙だったからです。未熟で視野が狭くて全体が見えてないから勘違いしていたのです。

キャリアを重ねるにつれて視野が広がります。自分がいる世界は、こんなに広くて、こんなに深かったのかと気づかされます。現実に直面させられます。過去の自分が恥ずかしくなりました。思い上がりがもたらす事態を想像すると恐くなりました。

カウンセリングや心理に関する投稿をするのが恐くなりました。投稿が滞るようになりました。

過去の自分が恥ずかしくなると同時に、恐さを感じるようになりました。間違った情報を発信してはいけない。過不足なく正確に記述しなければいけない。そのような考えに、強く強く縛られていくようになりました。

カウンセラーの資格について

脇道に逸れますが、公認心理師と臨床心理士について説明させて下さい。

【公認心理師】心理職の国家資格。平成27年制定。平成29年第1回認定試験実施。
【臨床心理士】1988年資格認定開始。SCの資格要件など国家資格的に活用されてきた。

公認心理師資格が制定されるまでは、臨床心理士が国家資格に等しい位置づけでした。臨床心理士を国家資格にという声もあったそうですが、そうはならず現在、2つの資格が併存しています。

公認心理師と臨床心理士は名称独占資格です。医師や弁護士などの業務独占資格と異なり、無資格者もカウンセリング業に携われます。実際に、公認心理師でも、臨床心理士でもないカウンセラーは多数存在します。

【業務独占資格】有資格者のみ業務を行える。無資格者が業務を行うのは違法。
【名称独占資格】有資格者のみ肩書きを名乗れる。無資格者も業務を行える。

臨床心理士の資格は、大学院で所定の課程を修めて受験資格を得て、認定試験に合格して取得します。

公認心理師の受験資格も臨床心理士と同等ですが、過渡期の現在は特例措置があります。私は特例措置(5年以上の実務経験と現任者講習会受講で受験資格を得られる)を利用して公認心理師資格を取得しました。臨床心理士は未取得です。

臨床心理士から見ると、非臨床心理士カウンセラーの多くは、教育や訓練が不十分で危うく感じるのは当然なのかもしれません。臨床心理士による、非臨床心理士カウンセラーへの、批判の声が昔からあります。

すべての臨床心理士がそうなのではありません。資格にこだわらない臨床心理士も多数います。私のSV(スーパーバイザー)も資格にこだわらない臨床心理士です。

個人的には「ご自由に批判して下さい。答えはクライエントが出してくれます」と考えています。いや、考えていたはずでした。

批判が気になる

話を戻します。過去の自分が恥ずかしくなると同時に、恐さを感じるようになりました。すると、以前は気にならなかった、臨床心理士のTwitterが気になりだしました。非臨床心理士を批判するTweetです。自分が批判されているような気持ちになることが増えていきました。

すると、間違った情報を発信してはいけない、過不足なく正確に記述しなければいけない、という想いが益々強くなっていきました。下書するものの、「これで間違いないか念のために調べよう」を繰り返したり、「これも、あれも」と詰め込もうとしすぎたり、キリがなくなったり。。。

ますます書けなくなっていきました。

気持ちで書いてみよう

ここまで整理して、初心に返ろうという気持ちになりました。正しい情報は重要だけれど、過不足なくを追求するとキリがありません。そもそも、ブログの目的は私という人を知ってもらうためです。割り切って気持ちで書くことにチャレンジしてみます。