【行動変容ステージ】生活習慣の改善〜断酒4ヶ月突破〜

執筆者:山崎 孝(公認心理師・ブリーフセラピスト・家族相談士)

今日(2020年5月7日)で断酒137日目になりました。【行動変容ステージ】の4つ目の実行期に相当します。【行動変容ステージ】とは、生活習慣改善の保健指導に導入されているモデルです。対象者の状態に適したサポートを提供するモデルです。

行動変容の5つのステージ

行動変容ステージのモデルでは、生活習慣の改善において、本人の生活習慣の改善を行う意思と、本人が実際に行っている行動から、生活習慣の改善に対する準備性を評価します。そして、準備性に応じた支援を行います。行動変容ステージは以下の5つに分けられています。

  • 【無関心期】6ヶ月以内に行動変容に向けた行動を起こす意思がない時期
  • 【関心期】6ヶ月以内に行動変容に向けた行動を起こす意思がある時期
  • 【準備期】1ヶ月以内に行動変容に向けた行動を起こす意思がある時期
  • 【実行期】明確な行動変容が観察されるが、その持続がまだ6ヶ月未満である時期
  • 【維持期】明確な行動変容が観察され、その期間が6ヶ月以上続いている時期

無関心期から維持期まで順調に進むわけではありません。

  • 禁煙なんて考えたことなかったけど(無関心期)
  • 周囲に禁煙する人が増えて考えるようになり(関心期)
  • タバコの値上げをきっかけに禁煙しようと思って(準備期)
  • 一念発起して開始した(実行期)
    • 2週間がんばったけれど挫折した
    • または、家族のサポートや周囲の理解を得られて半年が過ぎた(維持期)

以下、行動変容ステージの各ステージを紹介します。

無関心期(前熟考期)

「6ヶ月以内に行動変容に向けた行動を起こす意思がない時期」と定義されています。簡単に言うと「生活習慣の改善に関心がない時期」です。

特徴

問題に気づいていないので行動を変える意思がありません。もしくは、気づいているけれど抵抗しているのかもしれません。家族や周囲が「少しはお酒を控えたら」とすすめても、「お酒は健康のバロメーターだ」などと反論したり、聞き流したりします。

サポート

このステージのサポートは信頼関係を作ることです。関係を作る方法としては、いわゆる受容と共感です。

夫

酒くらい飲まんとやってられへんわ

妻

毎日大変やね。お疲れさま。

「酒くらい飲まんとやってられへんわ」に対して「少しはお酒を控えたら」の助言は概ね反発されます。自分を理解してくれない人の話を聞きたいと思う人はあまりいません。

妻

見るからに疲れがたまってるので心配。お酒が増えるのも仕方ないよね。でも体調も心配。

夫

そうやな。確かに最近、飲み過ぎてるしなあ。目覚めも悪いし。

妻

うん。ちょっと考えてもいいかも。

夫

そうやなあ。どうするのがいいかな。

無関心なのは、自分の状態に関する情報不足の可能性もあります。押しつけがましい情報提供は拒否されますが、共感されてからの情報提供は受け入れられやすくなります。耳を傾けてくれる状態になったときに、相手が求める程度の情報提供を行います。

相手が求める以上の情報を提供するのは望ましくありません。押しつけがましくなります。ここでの目標は、(お酒の話をしても大丈夫という)信頼関係を作ること、相手に行動変容の意識が芽生えることです。

関心期(熟考期)

「6ヶ月以内に行動変容に向けた行動を起こす意思がある時期」と定義されています。「生活習慣の改善に関心はあるが、実行する意思がない状態」です。

特徴

問題と思っているけど行動には至りません。「やめたいけど、やめられない」「やめる自信がない」のように自信がなかったり、「やめるのがいいのはわかるけど、やめたくない」という相反する気持ちが同居する状態であったりします。

サポート

このステージも信頼関係の構築が重要です。情報提供は、行動変容のメリットをより具体的に伝えること。そして、「これならできそう」と感じるような自己効力感が高まる情報を提供します。医療機関などでは、取り組んでいる人たちを見る機会や新しい行動を体験する機会を提供する取り組むを行うところもあるようです。

自己効力感とは、ある結果をもたらす行動を「できる」という確信度のことをいいます。自己効力感が高まると行動を起こす可能性が高まると考えられています。

準備期

「1ヶ月以内に行動変容に向けた行動を起こす意思がある時期」と定義されています。「実行したいと思っている状態」です。

特徴

行動を起こすことに意欲的です。サポートが最も効果的な状態です。

サポート

このステージの人には実行の支援を行います。具体的な目標設定や行動計画作成を支援します。周囲に実行を宣言するように促すこともあります。カウンセリングやコーチングが効果的です。自己効力感を高めるサポートも行われます。

実行期

「明確な行動変容が観察されるが、その持続がまだ6ヶ月未満である時期」と定義されています。「実行しているけれど、持続することにまだ自信を持てない状態」です。今の私です。「やる!」という意志は絶対に必要だと思います。しかし、意志だけに頼ると失敗するのは経験済みです。

特徴

逆戻りが起きやすい時期です。先述した通り、「無関心期」に次いでサポートむずかしいのが「実行期」です。以前の私は「きっかけ➡実行➡挫折」を繰り返して、学習性無力感(自分は無力であると学習すること)に陥っていました。

サポート

継続していることを賞賛したり、実行している自分へのご褒美を促すなどのサポートを行います。行動を変えたことのメリットを振り返るなどして動機づけを維持します。

維持期

「明確な行動変容が観察され、その期間が6ヶ月以上続いている時期」と定義されます。「持続する自信を持っている状態」です。新しい行動が普通になっている時期です。維持継続するための外部環境を自分で選択できるようになっています。何らかの問題が起きても自分で解決して行動を継続します。

5つのステージを簡単に整理すると以下のようになります。

ステージ状態支援
無関心期関心がない●関心を持つように援助
需要と共感によって信頼関係を作る。相手が望む範囲での情報適用。
関心期関心がある●実行したいと思うように援助
信頼関係を作る。自己効力感が高まる情報提供。
準備期実行したい●実行に移す援助
目標設定や行動計画作成のサポート。
実行期持続が不安●持続する援助
実行を賞賛する。自分の褒美を与えること促す。行動のメリットを振り返る。
維持期持続に自信●援助の終了
これまでの努力を賞賛。継続を奨励。
参考サイト
  • 特定保健指導の実践定期指導実施者育成プログラム(実践的指導実施者研修教材|厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/info03k.html より)
  • 行動変容ステージモデル | e-ヘルスネット(厚生労働省) https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-07-001.html
  • セルフ・エフィカシーを高めるポイント | e-ヘルスネット(厚生労働省) https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-07-002.html
  • Prochaskaの行動変容ステージについて | がん対策研究所 https://www.ncc.go.jp/jp/icc/cancer-info/project/kinen-nurse/behavsci2.html