有用感が自尊感情(自己肯定感)に影響する日本人

執筆者:山崎 孝(公認心理師・ブリーフセラピスト・家族相談士)

ある経営者のコメント

とあるサイトに、日本人には能力主義より、年功序列が合っているとする経営者のコメントがありました。日本人の自尊感情(自己肯定感とほぼ同意)の特徴をあらわしていると思いました。

この記事です。

要点は以下です。

  • 自分自身は能力至上主義者。
  • 能力主義で従業員も幸せになると思っていた。
  • 失敗したら?成果が出なければ?と不安になる人が圧倒的に多かった。
  • この仕事にはこの給料というように、成果に左右されない感を出すと効率的になった。

さらに、年功序列が適応的である理由があげられています。

  • ある年に入社した若者は、あれこれ言うだけで仕事をしない問題児。
  • 自分でやるほうが早いので、彼に仕事を回すのをやめた。
  • 3ヶ月くらい経つと、彼は自ら周りの人たちの仕事を手伝い始めた。
  • 海外ではありえない。仕事しないで給料をもらって「ラッキー」と思うだけ。
  • 日本人の多くは自分の仕事がなければ他人の仕事を手伝う。
  • 日本人は先に結果を求めると萎縮する。そもそも能力が高い人は全体の1%。年功序列のほうが力を発揮する。
  • 誰に言われるまでもなく「働かなければ」と思う民度の高さは年功序列に適応的。

このコメントを読んで頭に浮かんだのは、自尊感情(自己肯定感)について、他国には見られない日本人特有と思われる特徴です。

日本の若者の自尊感情(自己肯定感)の特徴

他のページでも紹介していますが、内閣府による『我が国と諸外国の若者の意識に関する調査 (平成30年度) https://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/ishiki/h30/pdf-index.html (2020年1月2日閲覧)』という調査があります。この調査内の「人生観関係」の章に、自尊感情(自己肯定感)に関する調査結果が報告されています。

調査の目的は「我が国の若者の意識と諸外国の若者の意識を比較することにより、我が国の若者の意識の特徴及び問題等を的確に把握し、子供・若者育成支援施策の検討の参考とすることを目的とする(原文ママ)」となっています。

自尊感情(自己肯定感)に関する内容について簡単に要点を紹介します。

  • 調査は「日本、韓国、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデン(計7カ国)」の「満13才から満29才までの男女」を対象に行われた。
  • 自尊感情(自己肯定感)に関する設問は「私は、自分自身に満足している」。
  • 上記設問に対する回答を「そう思う(4点)」から「そう思わない(1点)」まで1点刻みで点数化した場合、日本の若者の平均値が2.31だったのに対して、他国の平均値は3.07だった。
  • 自尊感情(自己肯定感)に影響を与える要因は、「長所」「主張性」「挑戦心」の3つが日本を含む各国の若者に共通していた。
  • 日本の若者だけに見られる特徴は「有用感(自分が役に立っている感覚)」が比較的強く影響していること。他国の若者には、ほとんど関連がなかった。

問題児の彼は「有用感」に動かされたのかも?

経営者のコメントに問題児のエピソードがありました。彼が自ら周囲の仕事を手伝い始めた理由は、単にヒマだったのかもしれません。同調圧力のようなものに動かされたのかもしれません。まったくの主観ですが、私は「有用感」も影響していると思います。

彼があれこれ言って仕事をしないのは、失敗によって自尊感情が傷つくのを怖れる気持ちがあるのかもしれません。一方で、3ヶ月も仕事を与えられなければ、自尊感情が傷つくでしょう。

彼が自尊感情を回復する方法として、周囲の仕事の手伝いを(無意識に?)選択することもありえるのではないかと思いました。

「有用感」を満たす「ありがとうカード」

感謝や賞賛の気持ちを書いたカードを相手に渡す。渡した数が多い人は表彰されるなどのインセンティブがある。「ありがとうカード」とか「サンクスカード」などと呼ばれます。そのような制度を採用している企業が増えているそうです。

相手の良いところに焦点が当たりますから、コミュニケーションが良くなるのは容易に想像できます。カードをもらった人は有用感が満たされるでしょう。自尊感情も満たされるはずです。

自信(自尊感情・自己肯定感)は他者との関わりを通じて育つものですが、有用感の影響を受ける日本人は、特にその傾向が強いのかもしれません。