認知や行動は、修正するのではなく選択肢を増やす

執筆者:公認心理師・山崎孝

「認知行動療法は、ものの見方や行動パターンの選択肢を増やすことで、問題に落ち着いて対処し、ストレスの増大を防ぐことを目指す」という説明はいいですね。

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認知行動療法は、「思考(認知)や行動を変えることによって、問題や症状を改善する心理療法」と説明されることが多いようです。まったくの間違いとは言えないかもしれませんが、正確ではありません。

あなたの現在の思考と行動は、これまでの人生において役に立つ場面があったからこそ、今も持ち続けているのです。問題が起きるのは、これまでのやり方で対処できない出来事や状況が生じたからです。

問題が起きるのは、進学・就職・転勤・転職・結婚・出産・介護など、ライフステージの変わり目に起きやすいと言われています。

問題が起きた時に必要なのは、今までの思考と行動を捨てるのではありません。その状況や出来事に応じた現実的・適応的な思考と行動を選択することです。そのためには、思考と行動のバリエーションを増やすことです。

認知行動療法に取り組むと、物事は様々な見方ができることを体験します。様々な対処行動があり得ることを体験します。そうしてバリエーションを増やすことによって、選択することが可能になります。

今のあなたの見方や行動は、今まであなたの役に立ってきました。それを捨てる必要はありません。見方と行動のバリエーションを増やして、状況に応じて、現実的・適応的なものを選択することです。