男と女の瀬戸際外交

執筆者:山崎 孝(公認心理師・ブリーフセラピスト・家族相談士)

夫婦喧嘩

その気がないのに「別れる」や「離婚」を口にしてパートナーに要求を受け入れさせることを、ひそかに「男と女の瀬戸際外交」と呼んでいます。

このような事例をひそかに、「男と女の瀬戸際外交」と呼んでいます。

瀬戸際政策(せとぎわせいさく、英: Brinkmanship)または瀬戸際戦術(せとぎわせんじゅつ)とは、緊張を高めることにより交渉相手に譲歩を迫る政治手法である。外交分野においては瀬戸際外交(せとぎわがいこう)とも呼称される。

瀬戸際政策 – Wikipediaより引用

 

意見が対立したとき、彼女は言いました。

「○○してくれなければ、別れる!」

 

「別れる」選択肢がない彼に対して、彼女の「別れる」は破壊力抜群です。

彼は拳銃を突きつけられて、崖っぷちに追い込まれたような気持ちになります。彼女の要求を飲んで、つらさから逃れようとします。

 

効果を実感した彼女は、意見が対立するたびに「別れる」を用います。

初めて口にしたときは最悪の場合、別れを覚悟していたかもしれません。しかし、今は別れる気はまったくありません。要求を通すための手段としてのみ使っています。

そして、実際に彼は要求を飲んでくれます。

 

しかし、いつまでも続きません。

毎回、崖っぷちに追い込まれる彼の頭の中は、「別れたくない」から「別れたほうが楽だ」へシフトします。

ある日のケンカの最中、いつものように彼女は「別れる」と言います。

その言葉が彼を決断に向かわせます。そして言います。

「わかった、別れよう」

 

彼女がいくら謝っても彼の気持ちは変わりません。つらさ、悲しさ、怒りなど、色々な感情を抱えた彼女が一人でカウンセリングに訪れます。

彼女は言います。

「別れたくない!」
「あれくらいのことで!」
「どうすれいいの!」
「つらい」

 

彼に来てほしいと伝えて下さいとお願いすると、来てくれることが多いです。

彼は誰にも言わず一人で耐えていたのでしょう。つらかったこと、ガマンしたことなど、たくさん話してくれます。私は彼が心の内を整理して、自己理解を深めるお手伝いをします。

カウンセリングが終わると彼は、すっきりとした、晴々とした表情で言います。

「あれくらいのことで別れていいのか?と思ってましたけど、『良かったんだ』と確信が持てました」

 

ここまで来ると、カップルはもちろん夫婦でも修復は困難です。

 

その気がないのに「別れる」と言ってしまう人は、今すぐやめることをオススメします。先に悲劇が待ってるかもしれません。

言ってはいけないとわかっているのに止められない人がいます。彼、夫(または彼女、妻)を困らせることによって愛情を確かめようとする人もいます。

どちらも何らかの個人的な問題を抱えている可能性があります。取り返しのつかない事態になる前に、カウンセラーなどに相談することをオススメします。