セックスレス相談の一例

執筆者:公認心理師・山崎孝

セックスレスは、夫婦・カップルのカウンセリングで多い相談の一つです。セックスレスの相談を受けたとき、どのような考えでサポートしているのか。一例を紹介します。

夫婦・家族をシステムとして捉える

家族療法(カウンセリングの方法の一つ)では、家族をシステムと捉えます。システム内の個人の問題は、システムの歪みによって生じていると考えます。システムの歪みを健全な状態に変化させることにより、問題解決を目指します。

「家族をシステムと捉える」「システムの歪み」について、夫婦と1人の子どもの3人家族を例に説明します。

家族はお互いに影響を及ぼし合っています。家族療法では、すべての相互作用をコミュニケーションと考えます。また、2者以上がコミュニケーションを行う(お互いに影響をお呼びし合っている)関係をシステムと呼びます。

また、家族システムは、夫婦システムや同胞システムというサブシステムから成ると考えます(同胞システムとは両親や兄弟姉妹等から成るシステム、サブシステムとは下位のシステム)。

システムの歪みとは

家族に起こる問題の一つに、子どもの不登校があります。不登校が起きたとき一般的には、不登校そのもの、または子どもに何らかの問題が起きたと捉えるのが一般的です。

家族療法では、不登校も家族システムの相互作用の一つであり、家族システムのバランスを保っている(かもしれない)と考えます。

不登校が起きている家庭のお話を伺うと、夫婦の関係が悪いケースがあります(注:あくまで一例です。すべてではありません)。

夫婦の関係が悪いとは、例えば日常的に、互いが不満をぶつけ合っているような状態です。

このような状態で子どもの不登校が起きるとどうなるでしょうか。夫婦は互いに配偶者へ向けていた関心(の一部または全部)を子どもに向けることになります。

お互いの関心が子どもへ向かうことで、夫婦の争いが沈静化します。

このように、不登校は問題ではなく、夫婦・家族システムの歪みが引き起こした結果と捉えるのが家族療法的な見方です。システムの歪みを健全な状態に変化させて問題(とされるもの)の解決を目指します。

夫婦システムの歪みによるセックスレス

夫との関係が悪い妻が子どもが密着して、夫は疎外感を埋めるために仕事の虫(仕事と密着)になる。これも歪みの一例です。仕事の代わりに、酒・ギャンブル・不倫・趣味を選択したり、セックスレス状態になることがあります。

対立ほどの悪化ではなくても、ちょっとした不満を積み重ねているうちに、配偶者に性欲を感じなくなってしまうことがあります。ちょっとした不満なので、「この程度ならガマンしよう」と飲み込めます。積み重ねているうちに、気がつけば性欲が起きなくなっていた。といったことがあります。

このような場合、セックスレスは問題ではなく、夫婦関係(夫婦システム)の歪みによって生じた結果と考えます。歪みを健全な状態に変化させることで解決を目指します。

※一例であり、唯一の方法ではないことを再度お断りしておきます。