メンタルヘルス対策セミナーに参加しました

執筆者:公認心理師・山崎孝

大阪商工会議所主催のメンタルヘルス対策セミナーに参加してきました。自分のために記録しておきます。

第1部:日産自動車におけるメンタルヘルス活動の紹介

赤裸々に公開しているので資料は外部に出さないで下さいとの前置きがありましたので詳細の紹介は控えますが、「こころの耳」での紹介ページより概要をある程度つかめると思います。

職場復帰支援の取り組み事例 第6回:日産自動車株式会社(神奈川県横浜市)|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト(うつ病・自殺対策を含む)|厚生労働省

上記ページに紹介されているように、職場復帰支援の取組に特徴がありました。大きく2つの特徴があると思います。

  1. 8時間勤務できる状態まで回復してからの復帰(リハビリ出勤なし)
  2. リワーク施設の積極的な活用

リハビリ出勤を採用する企業が多数派だと思いますが、日産自動車では採用していません。上記ページにて紹介されているように、リハビリは必要であるが、再発しないとの判断材料がなければ復職可の判断ができないからとのことです。

そのために、リワーク施設を積極的に活用されています。しかしながら、現状リワーク施設の数が少なく、申込みから入所まで3ヶ月ほどかかるケースもあるそうです。自前のリワーク施設を持つことまでされています。ビジネスチャンスがあるのかも?なんてことをぼんやり考えていました。

以上を確実に実施するために、職場復帰プログラムの適用者を就業規則で明確に規定しています。事業者が方針を明確に示し明文化することがメンタルヘルス対策の第一歩です。どのように就業規則に織り込むかは、大阪でしたら大阪産業保険推進センターが相談を受け付けています。

以上の特徴を持ちながらもメンタルヘルス対策を推進するにつれて、いわゆる第一次予防(メンタルヘルス不調者を出さないための取組)、第二次予防(早期発見、早期対応)の比重が高くなってきたとのことでした。

第2部:メンタルヘルス対策の最新動向

第2部は、産業医によるメンタルヘルス対策の最新動向でした。特に発達障害と非定型(新型)うつに焦点を当てた内容でした。前半、スライドを読むだけの話が続いて少々退屈しましたが、後半は興味深い内容でした。

発達障害

「大人の発達障害」という言葉を見る機会が増えました。発達障害は先天的なもので、大人になってから発症するようなものではありません。

軽度の発達障害の場合、子ども時代は「変わった子」「わがままな子」ですまされて発見されにくいことがあります。子どもや学生なら、会社と違って特定の友人とのみ付き合ったり、一人で過ごすことも可能です。知的水準が高く成績優秀の場合はなおさら気づくことが難しくなります。

そのような人たちが社会に出て企業や組織の一員となったとき、対人関係や仕事においてトラブルを抱えることがあります。そうして初めて医師などに相談して発達障害であるとわかることがあります。「大人の発達障害」と言われるのはこのようなケースです。周囲の理解を得ることが難しく、二次障害としてメンタル不調になることがあります。

人事労務管理者など事業場内産業保健スタッフはもちろん、周囲が発達障害を理解することが必要となります。

新型うつ

精神科の間で、「本当のうつ病はどこへ行ってしまったのだろう?」という言葉が交わされることがあるそうです。「新型(非定型)うつ」の増加です。このタイプのうつに悩まされている企業は少なくないと思われます。休業中に旅行して真っ黒に日焼けして復職してくる、などの例です。下記のページに特徴が詳しく紹介されています。

いわゆる現代型・新型と呼ばれるうつ病-うつ病の診断 | utsu.jp ~うつ病と不安の病気の情報サイト~

「未熟型」という表現もありました。思春期などにクリアしておくべき課題を持ち越したまま社会に出てきたというニュアンスがあるようです。個人や家庭内でクリアしておくことを企業がやるのは・・・という感情が生じるの責められないと思います。しかし、時代の変化として受け入れざるを得ない現実もあります。

従来のうつ病患者には、励ましは負担になるので避けたり、業務負担の軽減を行ったりします。しかし、新型うつに関しては、激励禁忌の見直し、安易な軽減措置は逆効果とする専門家もいます。アメリカに新型うつは存在しないそうです。真っ黒に日焼けして復職するような人は解雇されるからです。

対処法の例として、メンター・ブラザー・エルダー制度と呼ばれる「一緒にがんばろう」というものがあります。やはり、まずは方針を明確にして、就業規則に明文化することからになると思います。まだ試行錯誤の段階にあると認識しています。