親のエゴ

執筆者:山崎 孝(公認心理師・ブリーフセラピスト・家族相談士)
楽譜
By: LizaCC BY 2.0

なぜ、オーディションを受けない!!

息子が所属する吹奏楽部は明日からオーディションです。約180名の部員の中から、全日本吹奏楽コンクールを目指す55名を選抜するオーディションです。

1年生の時は、残念ながら実力及ばず。

2年生の昨年は、前年に3年連続出場を果たしたことによる、いわゆる3出制度によるお休み。仮に出場してても、先輩がとても上手で彼のメンバー入りはむずかしかったでしょう。

3年生の今年、彼は担当パートで一番上手という噂を聞いてました(はい、親バカです)。メンバー入りを期待してました(はい、親バカです)。

昨日の朝、息子にオーディションの話を振ると、「受けない」と言います。

驚きました。

「なんでやねん!!」と心の中で叫びました。

「毎日朝練してるやん!!」
「それって何のためなん!?」

という声が心の中に響いてました。

モヤモヤしてるうちに息子は出かけました。

カウンセラーともあろうものが

彼は2年生の頃から音楽系の大学を目指してました。顧問の反対にもめげず、初志貫徹する意志を示してました。

ところが、今年になって進路を変えたようです。とても残念で、先生と異なる視点からアドバイスしたい欲求に襲われました。でも、親があれこれ言うのはやめようとガマン。理由も聞きませんでした。

そして、今回のオーディション辞退。我ながら「なぜ!?」と思うほど心が乱れました。夜に改めて息子と話すまで、落ち着かないモヤモヤした一日を過ごしました。

そして、気づきました。

私の期待と願望ばかりで、「彼にとってどうなのか」という考えがないことに。

全国に縁のなかった私の学生時代。息子に己の夢を託していたのですね。その夢が叶えられないとわかった瞬間、感情に翻弄されていました。

親の心配は燃え尽き症候群

夜、帰宅した彼に理由を聞きました。

「裏方の仕事をしたいから」と言います。

彼は昨年あたりから、楽譜の手配、演奏の録音、その他の裏方の仕事も担当してます。やってるうちにおもしろくなってきて、将来そのような仕事をしたい気持ちが強くなったと言います。今年はコンクールもマーチングも辞退して、裏方に集中すると言います。

それを聞いて、残念な気持ちが消えたわけではありませんが、とりあえず安心しました。

彼の吹奏楽部はとてもレベルが高いのですが、音楽系の難関大学に合格するのはほんの一部。合格しても将来プレーヤーとして活躍できるのはその中の一部。そんな現実があり、顧問は飛び抜けた実力を持つ生徒以外には音楽系の大学をすすめません。

顧問が生徒の将来を考える気持ちは理解できます。ありがたいと思います。信頼もしています。ただ、心配もあるんですね。

彼らの休日は年間10日もありません。3年間を文字通り吹奏楽に捧げています。そんな彼らが音楽系以外の大学へ進学すると、燃え尽き症候群になるのでは?という不安があるのです。

なので、やりたいことがあるとわかって少し安心しました。

息子に夢を託しすぎ

思い返してみれば、私の大学時代は燃え尽き症候群気味で自信を喪失していました。息子には充実した大学生活を送ってほしいという思いがあります。

ここにも、息子に己の思いを託している心がありました。

親の人生も背負わされたら子どもはたまりませんね。

心理学に興味を持って、カウンセラーにまでなって、日々勉強を重ねて、ようやく自己受容に至ったと思ってました。でも、まだまだですね。

道は長い。けど、楽しい。