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アルコール依存症

子どもの頃、「アル中(アルコール中毒)」という言葉が一般的でした。毎日しっかり酔うまで飲んでいる人のことを「○○はアル中や」と言っていました。

中毒と依存症の違い

中毒とは、ある物質が体内に入ることによって身体に異常が起きている状態のことです。依存症とは、「やめたい」「やめなければ」と思っているけれどやめられない。自分でコントロールできない状態のことです。もう少し詳しく説明してみます。

「毒に中たる(どくにあたる)」から中毒

中毒の語源は「毒に中たる(どくにあたる)」だそうです。ある物質が体内に入ることによって身体に異常が起きている状態であるのは上述した通りです。食中毒などがそうです。依存症のように「やめられない」という意味はありません。

一時期、一気飲みによる急性アルコール中毒が世間を賑わせました。急性アルコール中毒とは、アルコールを一度に大量に飲酒することによって、血中のアルコール濃度が一気に高くなり、意識障害・血圧低下・嘔吐などを起こす症状です。

自分でコントロールできない依存症

依存症とは、やめたい、やめたほうがいい、やめなければならないと認識しているにも関わらず、やめられずに継続している状態です。また、(お酒などを)ほしい気持ち、もしくは(ギャンブルなどを)やりたい気持ちを抑えられない状態です。自分でコントロールできなくなっています。

依存症は、お酒や薬物など有害物質の摂取をやめられない物質の依存症と、ギャンブルや買い物などをやめられないプロセスの依存症の2つがあります。

物質の依存症の場合、身体に異常が生じているか否かは問いません。コントロール不能の状態であれば依存症です。いずれ身体や生活に支障が生じます。身体より先に生活に支障を来しているケースも少なくないでしょう。

わかりやすい中毒、わかりにくい依存症

中毒は身体に異常が生じています。本人だけではなく周囲も比較的容易に気づけます。一方、依存症の場合は、乱れるほど酔って他人に迷惑をかけるようなことはあまりありません。

アルコール依存症と、酔ったときに問題を起こすということとは異なります。それは「酒乱」であって、依存症とは違います。酔ったときにいくら問題を起こしたとしても、たまにしか飲酒しない人はアルコール依存症ではありません。逆に酔ったときに周りに迷惑をかけなくても、飲酒がコントロールできなければアルコール依存症といえます。むしろほとんどのアルコール依存症の人は、静かに酒を飲んでいるものです。

アルコールと依存 | e-ヘルスネット(厚生労働省)より引用

酔って問題を起こすことがなくても、毎日の飲酒は健康を損ないます。多量の飲酒は、肝臓、血圧、痛風など、身体に害を及ぼすのは確実です。

飲酒に費やす時間とお金を他に使えば、日々の生活が(特に精神的に)もっと豊かになっていただろうと思います。依存症は、自分だけではなく、家族など大切な人たちも傷つけます。大切な人たちとの関係を壊していきます。

アルコールに関連する諸問題を「アルコール関連問題」と言います。本人・家族・社会への影響があります。

アルコール関連問題

アルコールによる本人・家族・社会へのマイナス影響を具体的に考えてみたいと思います。

本人への影響

身体と心の両面に影響を及ぼします。

肝臓などの臓器に負担をかけています。高血圧、糖尿病などの生活習慣病は飲酒によるものが多いです。国立がん研究センターの評価では飲酒によるガンのリスク上昇は「確実」です。アルコール依存症とうつ病の合併は頻度が高く、自殺にも強い関係があります。

家族への影響

DVや虐待にアルコールが絡むことは少なくありません。アダルト・チルドレン(AC:機能不全家族で適切な養育を受けられずに育ち生きづらさを抱えている人)は元々、アルコール依存症の親に育てられた子という意味の言葉です。

社会への影響

厳罰化により飲酒運転による交通事故は減少しましたが、近年下げ止まっています。背景にアルコール依存症が指摘されています。公共交通機関での駅員などへの暴力はお酒がらみのことが多いです。日本社会がお酒に寛容すぎるという指摘もあります。

アルコール依存症の3つの症状

アルコール依存症には、精神依存、耐性、身体依存の3つの症状があります。

精神依存

飲まないと物足りない、飲まなくてはいられない、という状態です。家にお酒がなければ、わざわざ買いに出かけます。朝に「今日は休肝日にしよう」と考えても、夜には何かと理由をつけて飲んでいます。お酒に対する渇望を止めるのがむずかしくなります。

耐性

毎日飲んでいると強くなって酔いにくくなります。十分に酔いを得るのに飲酒の量が増えます。そのまま継続すると身体依存が形成されます。

身体依存

お酒を飲むと呼吸や脈拍などが影響を受けます。身体依存の状態になると、お酒が体内にある状態が通常であると身体がみなすようになります。お酒が体内にあっても身体が正常に機能するようになります。逆に、お酒が切れると離脱症状が現れるようになります。

お酒の離脱症状は、脈拍が速くなったり、発汗・イライラ・手が震えたりする症状です。こうなると、離脱症状が起きないようにするためにお酒を飲むようになります。さらに悪化していく悪循環に陥ります。

否認の病

依存症は「否認の病」と言われます。自分が依存症であることを認めません。「やめようと思えばいつでもやめられる」とか「仕事上、お酒をやめるわけにはいかない」などと考えます。否認の克服が回復へのスタートです。お酒をコントロールできないと認めることです。

【治療】断酒が基本

アルコール依存症治療の原則は断酒です。今後の人生において一切お酒を飲まないことです。近年、減酒治療が注目されてきているそうですが、すべての患者さんに適用できるものではなく、軽症で合併症がない場合などに限られるようです。

治療は3段階

治療は、「解毒期」「リハビリ期」「アフターケア」の3段階に分けられます。入院治療が多いです。薬物治療と心理療法や自助グループ参加の心理社会的治療が行われます。心理社会的治療が柱となります。

解毒期

離脱症状や合併症の治療を行います。薬物治療が行われます。体調が落ちついてくると心理社会的治療が行われます。

リハビリ期

お酒に関する心理教育、個人心理療法、集団心理療法など心理社会的治療が中心となります。断酒が本格的にスタートします。

アフターケア

リハビリ期を終えて退院した後も断酒は一生続きます。医療機関への通院、自助グループへの参加を継続します。特に患者同士が支え合う自助グループへの参加が欠かせないとされています。

自助グループ

自助グループとは、共通の問題を抱える人たちがお互いに支え合い、問題を克服していく集まりです。メンバーが集まって体験談を語り、聞きます。専門家による治療などは行われません。断酒継続には自助グループへの参加が欠かせません。

アルコール依存症の自助グループには、AA(アルコホーリック・アノニマス)と断酒会があります。

AA(アルコホーリック・アノニマス)

アメリカが発祥の世界的な団体です。世界中にグループがあります。

アルコホーリック・アノニマスを日本語に直訳すると「匿名のアルコール依存症者の会」です。アノニマスの名の通り、参加者の匿名性が重視されています。参加者は名前を名乗る必要がありません。

参加できるのは依存症者本人のみです。献金で運営されているため会費はナシ、無料です。家族や友人を対象としたAl-Anon(アラノン)という自助グループがあります。

断酒会

AAを原型として日本で生まれた自助グループです。各地の断酒会を公益社団法人「全日本断酒連盟(全断連)」が統轄しています。本人だけではなく家族も参加します。会員の会費で運営されています。

ハームリダクション

繰り返しになりますが、アルコール依存症の治療は断酒が原則です。近年、薬物をやめさせるのを目的とするのではなく、使用により困っていること、苦しんでいることの減少を目的とするハームリダクションが注目されています。減酒治療はハームリダクションによる治療と考えられます。

参考ページ

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