夫婦の危機が起こるとき

執筆者:公認心理師・山崎孝

夫婦の危機のきっかけになるのは、家族ライフサイクルの移行期、家族間の境界があいまいさ、決定の仕方(パワー)、子どもを巻き込む三角関係などがあります。

家族ライフサイクルの移行期

家族のライフステージが変わるときは、特に危機が起きやすいです。

例えば、子どもの誕生です。夫と妻の役割に加えて、父と母の役割が生じます。妻が母の役割もしっかり担っているのに、夫が父の役割をあまり果たしていないとき、妻が不満をためるのは想像に難くありません。

実家との境界があいまいになると、夫婦で決めるべきことに、実家の介入を許してしまうことがあります。

実家との境界があいまいになる

家族とは一つの国のようなものです。国に国境があるように、家族にも外部との境界があります。境界には、家のような物理的な境界と、「わが家のプライバシーに干渉しないで下さい」のようなときに顕在化するような目に見えない境界があります。

結婚とは、それぞれが育った国を出て、2人で新しい国を創るスタートと言えます。結婚によって、育った国の住民ではなくなりました。新しい国と育った国の間に境界を引く必要があります。

家庭のことを夫婦以外で決定する

この境界があいまいな場合、外部(親など)からの過剰な介入を招くことがあります。例えば、夫婦で決めるべきことが、夫(または妻)と親で決められて、妻(または夫)には事後報告されるようなケースです。

「親は俺たちの(私たちの)ためを思って言ってくれてるのに」の言葉が良い結果につながることはほとんどありません。多くの場合、「あなたの家族は誰なの?」と返ってくるか、言葉にしないで飲み込むかです。いつか、飲み込めなくなって溢れ出すかもしれません。

家庭の決定は夫婦で行うものです。決定の内容が正しくても、決定のプロセスが誤っていれば、夫婦や家庭の関係性において誤りです。

子どもを巻き込む三角関係

夫婦の関係がうまくいかなくなると、一方が子どもや実家の親との結びつきを強めることがあります。【夫 vs 妻と子】のような1対2の関係を三角関係といいます。

【夫 vs 妻と子】の三角関係になったとき、夫が拠り所を家庭の外に求めることがあります。拠り所に選ばれるのは、仕事、趣味、お酒、ギャンブル、浮気などです。

子どもが両親の仲を取り持つ役割を担うなど、親子の立場が逆転することがあります。子どもの心の発育に悪影響を及ぼすことがあります。