
執筆者:山崎 孝
公認心理師・ブリーフセラピスト・家族相談士
夫婦関係をより深いものにしていくには、日々の具体的な実践が欠かせません。このページでは、カウンセリングの実践から得られた、関係を深めるための取り組みについて説明します。
実際のカウンセリングでは、まず夫婦の日常生活での具体的なコミュニケーションの様子をお聴きした上で、それぞれのご夫婦の生活リズムや価値観に合わせた実践方法をご提案させていただいています。ここでご紹介する方法は、そうしたカウンセリングの経験から得られた知見をもとにしています。
コミュニケーションは、スキルだけでは十分ではない場合が多々あります。
忙しい時間帯、食事の支度をしながら、または他の作業をしているときなどの状況では、気持ちが急いでいたり、イライラしやすかったりするため、安心して話すことがむずかしくなります。無理して話し合いを試みると、かえって関係を悪化させることもあります。
特に今の時代は、共働き等々の要因で、じっくり話し合う機会を持つのがむずかしい現状があります。それでも関係を育むにはコミュニケーションが必要です。そのためには、話し合いの仕組み作りが重要になると考えています。
「お互い時間に余裕ができたときに話し合おう」では、その機会が訪れることがあるのだろうか?と感じるほど多忙なご夫婦にお目にかかることもあります。スケジュールに「夫婦の時間」を入れることをおすすめします。
後で触れますが、ただ時間を確保するだけでは足りないことが多いです。子どもや家事など、気が散る要素をできるだけなくして、二人で話せる環境を確保することが大切です。
ダメなコミュニケーションの一つに、相手の話に被せて最後まで話をさせないことがあります。聴き手と話し手を明確にして、聴き手は相手の理解に徹するなど、意味ある対話のためのルールを設定すると有効です。
限られた時間になるでしょうから、自分の話だけで終わらないように公平な時間配分も意識する必要があります。ま
重要なのは、ヒートアップせず冷静に話すことです。自宅よりカフェなど外部の施設で行うと、感情的になりにくいメリットがあります。
話し合いに集中できる環境を作ることは、効果的な対話の重要な前提条件です。
家事や育児、仕事の連絡など、様々な事柄が気になってしまう状況では、深い対話を行うことがむずかしくなります。「後で食器を洗わないと」「子どもが起きてこないかな」といった考えが心の中にあると、相手の話に十分な注意を向けることができません。
そのため、話し合いの時間は、他の事柄から一時的に解放され、対話だけに集中できる環境を意識的に作ることが大切です。繰り返しになりますが、自宅以外の場所(カフェなど)で行うのは有効です。
関係を深める実践において、重要なのは継続性です。「記念日に豪華な食事」「たまの休日に特別なデート」といった大きなイベントも確かに大切ですが、それ以上に価値があるのは、日々の小さな気遣いや対話の積み重ねです。
「おはよう」の挨拶に込める感謝の気持ち、帰宅時の短い会話、食事中の何気ない対話など、小さな実践を毎日続けることが、より深い絆を育んでいきます。大きな1回の行動より、小さな100回の積み重ねの方が、関係性に与える影響は大きいです。
夫婦関係を深めていく過程は、まるで庭づくりのようなものです。毎日の小さな手入れの積み重ねが、やがて美しい花を咲かせ、実を結びます。日々の対話や気遣いという水やりに加えて、お互いの成長を支え合い、共に新しい思い出を作っていくことで、関係はより豊かに、より深いものへと育っていきます。
ここでは、お二人の関係をさらに深めていくための具体的な方法をご紹介します。これらのすべてを実践しなければならないということではありません。できることを継続して取り組むことです。がんばらなくてもできるくらいのことが長続きします。良い結果をもたらすことが多いです。
この記事で紹介した実践方法は、一般的な指針として参考にしていただけるものです。しかし、実際の夫婦関係では、それぞれの生活リズムや価値観が異なりますので、カウンセリングではまず具体的な日常生活の様子をお聴きした上で、お二人の状況に最適な実践方法をご提案させていただいています。
関係を深めるための実践方法について悩まれている方は、まずは具体的な生活状況を含めてご相談いただければ、専門家の立場から適切なアドバイスをさせていただくことが可能です。
関係を深める実践には、継続的な努力が必要です。一度にすべてを完璧にしようとせず、できることから少しずつ始めていくことが大切です。