最も優れた心理療法は?

執筆者:公認心理師・山崎孝

インターネットが普及し始めた頃、「いずれ、新聞やテレビなど既存のメディアは、インターネットに取って代わられるのでは?」という声がありました。

(今のところ)そんなことにはなっていません。それぞれが得意とする領域を、状況やライフスタイルに合わせてうまく利用している人が大半でしょう。新聞社がニュースサイトを運営するのは、速報性などの領域では、インターネットが勝るからです。

以前参加した”ある心理療法”の学会でのことでした。発表者の一人が、「○○療法(”ある心理療法”以外の療法)なんて、△△なのでやってられませんから!」という、その療法に対する批判とも否定とも取れる発言がありました。その発言を聞いてイヤ~な気持ちになったのは愛嬌だとしても、途中で帰ってしまったのは大人げありませんでした。スミマセン。

私のカウンセリングの柱は、認知行動療法と来談者中心療法です。ケースによって、クライエントによって、どちらの方法を取るかを決めています。ただし、この2つに固執しているわけではありません。精神分析の知見を用いることも多いです。人は誰でも家族の一員です。家族療法をより学ぶことも個人的課題の一つと考えています。

情報を得ようとするとき、新聞に固執するのではなく、テレビに固執するのでもなく、目的に適った方法を用いるのが合理的です。

心理療法にも、それぞれが得意とする領域があります。すべての領域において最も優れた心理療法などないと思います。それが、1つの心理療法に固執しない理由です。

すべての心理療法に精通するのは到底不可能なので、柱となるものを持つことになります。その上で、自分が扱うケースへの対応力が向上するのなら、他の療法を取り入れていこう、引き出しを増やしていこうと考えています。