HSPのカウンセリング

執筆者:山崎 孝(公認心理師・ブリーフセラピスト・家族相談士)
大阪(吹田市)でHSPによる生きづらさを改善するカウンセリングを行っています。

HSP(Highly Sensitive Person)は、繊細な感受性を持ち、その特性によって生じるストレスや対人関係の課題に悩まれる方が多いです。当カウンセリングルームでは、HSPの特性を理解し、よりよい生活を送るためのサポートを提供します。

HSPは医学的な診断名ではありませんが、この概念が広がったおかげで、その個性による悩みを抱えている人たちが共通言語を持つことになりました。共通言語を持つことにより、自分だけが悩んでいるのではないと知り、同じような生きづらさを感じながらも乗り越えている人たちがいると知って、勇気を得た方も少なからずいらっしゃると思います。

HSPとは

HSPの定義と特徴

HSP(Highly Sensitive Person)とは、外部からの刺激に対して非常に敏感に反応する特性を持つ人々を指します。HSPの方は、他の人々に比べて感受性が高く、以下のような特徴があります。

  • 感受性の高さ:音や光、匂いといった感覚的な刺激に対して非常に敏感で、通常では気づかないような細かな変化を感じ取ることができます。
  • 深い共感力:他人の感情や状態に対して強い共感を示し、人々の気持ちを深く理解する能力があります。このため、対人関係においても感受性が鋭く、相手の感情を鋭く察知します。
  • 刺激への敏感さ:HSPの方は、日常のちょっとした変化やストレスにも強く反応しやすく、騒音や混雑、人混みといった状況で特に疲れやすくなります。

このように、HSPは特定の感受性の高さによって生活に影響を受ける一方で、他者に対する理解力や洞察力といった強みを持つ人々です。

HSPの歴史と研究背景

HSPの概念は、1990年代にアメリカの心理学者エレイン・N・アーロン博士によって初めて提唱されました。アーロン博士の研究によると、HSPの特性を持つ人々が全人口の約15〜20%に及ぶとのことです。

アーロン博士は、HSPの特性を「高い感受性」として理解し、これが個人の生活や健康にどのような影響を与えるかについて分析しました。彼女の研究により、HSPの方がどのようにして環境に適応し、ストレスを管理するかという理解が深まりました。

その後の研究において、HSPの方の脳が、感覚情報の処理において一般の人とは異なる活動が示されたとのことです。HSPは生物学的な特性であり、感受性の高さが個人の特性として尊重されるべきであるとしました。

HSPチェックリスト

以下はHSPのチェックリストです。以下の23項目のうち12個以上当てはまると、HSPである可能性が高いとされています。

  1. 自分をとりまく環境の微妙な変化によく気づくほうだ。
  2. 他人の気分に左右される。
  3. 痛みにとても敏感である。
  4. 忙しい日々が続くと、ベッドや暗い部屋などプライバシーが得られ、刺激から逃れられる場所にひきこもりたくなる。
  5. カフェインに敏感に反応する。
  6. 明るい光や、強い匂い、ざらざらした布地、サイレンの音などに圧倒されやすい。
  7. 豊かな想像力を持ち、空想に耽りやすい。
  8. 騒音に悩まされやすい。
  9. 美術や音楽に深く心動かされる。
  10. とても良心的である。
  11. すぐにびっくりする。
  12. 短期間にたくさんのことをしなければならないとき、混乱してしまう。
  13. 人が何かで不快な思いをしているとき、どうすれば快適になるかすぐに気づく。
  14. 一度にたくさんのことを頼まれるのがイヤだ。
  15. ミスをしたり物を忘れたりしないよういつも気をつけている。
  16. 暴力的な映画やテレビ番組は見ないようにしている。
  17. あまりにもたくさんのことが自分の周りで起こっていると、不快になり神経が高ぶる。
  18. 空腹になると、集中できないとか気分が悪くなるといった強い反応が起こる。
  19. 生活に変化があると混乱する。
  20. デリケートな香りや味、音、音楽などを好む。
  21. 動揺するような状況を避けることを、普段の生活で最優先している。
  22. 仕事をするとき、競争させられたり、観察されていると、緊張し、いつもの実力を発揮できなくなる。
  23. 子どもの頃、親や教師は自分のことを「敏感だ」とか「内気だ」と思っていた。

エレイン・N・アーロン 冨田香里訳 (2008) 『ささいなことにもすぐに「動揺」してしまうあなたへ。』 SBクリエイティブ より引用


HSPの特性と日常生活への影響

HSPの人は、その繊細な感受性ゆえ特性があります。これらの特性が日常生活や人間関係においてプラスの影響を与えることもあれば、ときには困難を感じる要因にもなります。ここでは、HSPの特性とその影響について解説します。

深く考える

HSPの方は物事を深く考える傾向があります。この特性にはいくつかのプラス面とマイナス面があります。

プラスの例

  • 独自の洞察力や問題解決能力:HSPの方は、多くの視点から物事を深く考えるため、独創的な洞察力や高度な問題解決能力を持つことがあります。この特性は、複雑な問題を解決する際に大きな力を発揮します。
  • 慎重で計画的な判断力:HSPの方は、何かを決める際にリスクをよく考慮し、慎重に行動するため、リスクの少ない選択ができることが多いです。
  • 豊かな創造力:深い思考は創造的な発想につながることがあり、芸術やアイデアの発想において優れた能力を発揮します。

マイナスの例

  • 過度の心配や不安感:HSPの方は、物事を深く考えすぎることで、ネガティブな結果に対する心配や不安が強くなることがあります。これが、ストレスの原因となることがあります。
  • 決断に時間がかかる:深く考えるがゆえに、選択肢が多いときにどれを選ぶべきか迷ってしまい、決断に時間がかかることがあります。
  • 過剰な反芻(はんすう):過去の出来事を何度も考え直してしまう傾向があり、それがストレスや自己嫌悪につながることもあります。

刺激を受けやすい

HSPの方は外部からの刺激に敏感であり、特に感覚的な刺激(音、光、匂いなど)に強く反応します。

プラスの例

  • 環境の変化に迅速に対応できる:HSPの方は、細かな環境の変化にすぐに気づくため、変化に迅速に対応する力を持っています。これにより、環境適応能力が高くなることがあります。
  • 高い注意力と観察力:小さな異変や微妙な変化に敏感なため、細部にまで注意を払える能力を持ち、特にデザインや分析といった仕事で重宝されることがあります。
  • 豊かな感受性で美的センスを発揮:感覚的な刺激に敏感なため、美術や音楽、自然の美しさに深く感動し、その感受性を活かして表現力豊かな作品を生み出すことができます。

マイナスの例

  • 騒音や混雑などの過度な刺激に弱い:HSPの方は、騒音、人混み、強い光などの過度な感覚刺激に対して強いストレスを感じることがあります。これは、生活の質に影響を与えることもあります。
  • 情報過多による疲労感:一度に多くの情報を処理しようとすると、精神的な疲労が蓄積しやすく、集中力が続かないことがあります。
  • 刺激からの回復に時間がかかる:強い刺激を受けた後、心身の回復に時間がかかり、その間に他の活動が制限されることがあります。

情緒的な反応・共感性の高さ

HSPの方は、他人の感情や気分に強く共感し、それに応じて深く反応する傾向があります。

プラスの例

  • 人間関係を深める能力:共感力が高いため、他者の感情を理解しやすく、深い人間関係を築くのに役立ちます。特にサポート役としての役割を果たすことが得意です。
  • 他者への配慮が行き届く:人々の感情やニーズに敏感であるため、相手に対して思いやりのある行動ができ、信頼されやすい特性があります。
  • 強い感情移入と支援意欲:困っている人を助けたいという気持ちが強く、サポートやボランティア活動などで高いモチベーションを発揮します。

マイナスの例

  • ネガティブな感情を受け取りすぎる:他人の感情に敏感なため、ネガティブな感情(怒り、悲しみなど)を強く感じ取り、自身も影響を受けてしまうことがあります。
  • 感情的な疲れを感じやすい:周囲の感情に敏感であるため、過度な感情的交流によって精神的に疲れやすくなることがあります。
  • 境界線の設定が難しい:他人の問題に深く関与しすぎてしまい、自分自身の時間やエネルギーを削ってしまうことがあります。

微細な違いに敏感

HSPの方は、周囲の小さな変化や違いにすぐに気づき、それに対して敏感に反応します。

プラスの例

  • 細かいディテールに対する洞察力:小さな違いや変化に敏感であるため、芸術や科学研究、デザイン、分析などの分野で優れた洞察力を発揮します。
  • リスクの早期察知:微細な変化に気づくことで、リスクや問題の兆候を早期に察知し、迅速に対処できる能力を持っています。
  • 精密な作業や品質管理に優れる:精細さが求められる業務(例:検査、調査、編集など)で、その能力が活かされることがあります。

マイナスの例

  • 小さな変化にも反応しすぎる:他の人には気にならないような小さな変化や刺激にも過度に反応してしまい、それがストレスの原因となることがあります。
  • 不安やストレスの増加:些細なことにも反応するため、日常の些細な出来事でも大きな不安やストレスを感じやすいです。
  • 周囲との感覚のズレを感じる:他の人が気にしないことに対して自分だけが敏感すぎると感じ、孤立感を覚えることがあります。

常にプラスはなく、常にマイナスもない

ここまで見てきてわかるように、個性は、プラスに作用することもあれば、マイナスに作用することもあります。すべてにおいて、プラスまたはマイナスに作用することはありません。

ある仕事では、人や事業を育てるために多少の失敗を許容して、リスクを取って挑戦することを奨励します。そのような環境では、慎重さより挑戦する姿勢を評価することが多いです。慎重すぎると評価が低くなることもあります。

一方、機密情報の取り扱いや航空機の整備など、絶対に失敗が許されない仕事もあります。そのような環境では、何より慎重さが求められます。

性格を変えようとするのではなく、マイナスに作用する環境や状況を把握して、対処する術を身につけることが、HSPの生きづらさを解決に導く一つの考え方になります。

カウンセリングがお役に立てる理由

手前味噌ではありますが、HSPの方にとって、カウンセリングは特有の悩みや課題に対する効果的なサポート手段です。カウンセリングが有益である理由を、いくつかの側面からご紹介します。

個別の対応の重要性

友人や知人に悩みを相談したときに経験する嫌な体験の代表は、その人が自分の体験を語り、その経験に基づいてアドバイスしてくることです。また、一般的な情報やアドバイスも同様です。

似たような悩みでも、関わる人や状況が異なれば、まったく別の固有の悩みです。他人の体験をそのまま適用できることはほとんどありません。また、一般的なアドバイスは既に試していることがほとんどです。

カウンセリングでは、一人ひとりの抱える悩みや状況に合わせたサポートを行います。他の誰でもない、あなた自身にフィットするサポートを行います。

感情の処理と管理

HSPの方は、他人の感情や出来事に対して非常に敏感で、感情的な負荷がかかりやすい傾向があります。感情の処理方法やストレスケアのスキルを学ぶことも重要です。カウンセリングでは、問題の対処だけではなく、感情の適切な処理とケアの方法を学び、自分の感情に翻弄されずに、冷静に対処する方法もサポートします。

安全な場

HSPの方にとって、自分の思いや感情を自由に表現できる「安全な場」が必要です。カウンセリングでは、信頼できる専門家のもと、安心して自分を開示できる環境が提供されます。このような場で、自分の感情や考えを整理し、新たな視点から問題に取り組むことができます。

自己理解を深める

HSPであることは、決してネガティブなものではなく、個性の一部です。自己理解が深まることで、自分の強みを活かしつつ、生きづらさを感じる状況での対処法を見つける手助けとなります。

対人関係のサポート

HSPの方は、対人関係でのストレスや誤解を感じやすいことがあります。カウンセリングでは、コミュニケーションスキルや自己主張の方法を学ぶことで、より良い人間関係を築くためのサポートを行います。人間関係でのストレスを軽減し、他者との適切な距離感を保つための技術を身につけることができます。

専門家のフィードバック

インターネットや書籍から得られる情報とは異なり、カウンセリングでは専門家からの直接的なフィードバックを受けることができます。これにより、自分の行動や思考パターンに対する具体的な改善策を知ることができ、より効果的な自己改善が可能となります。

継続的なサポート

HSPの特性による生きづらさは、一度の解決策で終わるものではありません。カウンセリングは、長期的に続けることで、その都度変わる状況や課題に対して適切に対応する力を養います。継続的なサポートを受けることで、自己成長を促し、安定した精神状態を維持することが可能になります。

HSPのカウンセリングアプローチ

心理療法には多数の学派があります。当カウンセリングルームでは主に、家族療法・ブリーフセラピー認知行動療法にてサポートします。

参考ページHSP様の個性を持つ女性のカウンセリングの感想

家族療法・ブリーフセラピー

家族療法・ブリーフセラピーは、対人関係のパターン、人と人との相互作用に焦点を当てます。人間関係における悩みや問題は、人と人との相互作用の悪循環によって生じて、維持されています。家族療法・ブリーフセラピーは、相互作用の悪循環から良循環への変化をもたらすサポートを行います。

HSPのカウンセリングにおいては、ご本人と他者との交流パターンに焦点を当て、悪循環を突き止めて、良循環に変える介入を行います。ご本人の行動の変化を無理せずスムーズに実現して、維持させるのが目的となります。

家族療法の家族とは、複数の人間からなる集団を意味します。人間集団を一つのシステムと考えます。人間集団の中でも家族はメンバー間の結びつきが強く、家族に適用されることが多いため、家族療法と呼ばれています。適用先は家族に限りません。職場やサークル、友人関係など、複数の人が関わるすべての状況に適用できます。

家族療法は問題を個人に求めるのではなく、システムの歪みが問題としてあらわれていると捉えます。個人に問題を求めないという点で、人にやさしいカウンセリングと言えると思います。ブリーフセラピーは家族療法の一学派です。

認知行動療法

認知行動療法は、状況や環境に合わせて思考と行動を柔軟に選択することで、悩みや問題の解決を目指します。家族療法・ブリーフセラピーとは異なり、個人の内面に焦点を当てます。

思考と行動には、人それぞれの特有のパターン、クセや習慣のようなものがあります。同じ出来事や状況に遭遇したときに、人によって異なる考え・感情・行動が起こるのは、パターンの違いによるものです。クセや習慣が自分を苦しめていることがあります。

認知行動療法では、思考と行動のパターン、クセや習慣を明確にして、状況に応じて柔軟に選択できるようになるサポートを行います。先にHSPの特性によるプラス面とマイナス面を先に説明しましたが、今のパターンがプラスに作用する場面ではそのままに、マイナスに作用する場面では別のパターンを採用できるようにサポートします。

思考と行動の幅を広げて、柔軟に選択できるなることで、HSPの生きづらさに対処できるようになるサポートを行います。

カウンセリングのご案内

料金・その他詳細

個人60分:8,000円
90分:12,000円
夫婦・カップル90分:12,000円
お支払い方法現金・クレジットカード・電子マネー
備考税込価格、延長料金等ナシ、面接報告書は有料にて

電子マネーは一部お取り扱いできないものがあります。詳しくは詳細ページでご確認下さい。

カウンセリングの流れ

お申し込みから終結・フォローアップまでの流れについて説明しています。完全予約制で対面とオンラインの両方に対応しています。事前の手続きをオンラインで行うことにより、面接時間はカウンセリングに集中できるようにしています。

カウンセラーのメッセージ

心はどこにあるのでしょうか。脳や心臓を指す人もいますが、「人間」という言葉が示すように、心は「人の間」、人間関係の中にも存在します。これは、私が依拠する家族療法の理論とも一致する考え方です。

人間関係は、心の傷の原因にも、そして癒しの源にもなります。多くの悩みは人間関係から生じますが、同時に、人間関係を通じて癒されます。例えば、上司の言葉に傷つき、同僚や友人に話を聞いてもらってリフレッシュする経験は、まさにこのことを示しています。

しかし、「日々の生活が息苦しい」「自分らしく生きるのが難しい」といった深い悩みや、家庭内トラウマのような心の傷には、単に話を聞いてもらうだけでは不十分な場合があります。専門的なサポートが必要となります。

同時に、安心・安全な場所(人間関係)も重要です。自由に話せ、否定されず受容され、無用なアドバイスをされない環境が、大きな悩みや深い心の傷の回復を可能にします。

私がライフワークとする自信も人間関係を通じて育まれます。自信には「自己効力感」(能力的な自信)と「自己肯定感」(存在や人格への肯定的評価)があります。特に自己肯定感の問題を解決するには、そのままの自分でOKという体験を積み重ねる必要があり、これは人間関係を通じてしか得られません。

私は、専門的なサポートと安心・安全の人間関係を提供することを通じて、あなたの心の健康に貢献します。

このページの執筆者
山崎 孝(公認心理師)

親バカのカウンセラー / 人に原因を求めるのではなく、人と人との相互作用の悪循環に求めます。人に優しいカウンセリングをモットーとしています。

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