感情の中でも「怒り」に手を焼く人は多いと思います。そのような人たちに朗報です。先般、名古屋大学大学院情報学研究科の研究グループが、怒りを「紙に書いて捨てる」と、気持ちが鎮まることを実証しました。
「怒り」は厄介な感情と思う人が多いのは、以下の理由があげられます。
- 【コントロールがむずかしい】怒りは強い感情の1つであり、感情が高ぶると理性的な判断がむずかしくなり、思わず過激な行動をとってしまうことがあります。
- 【破壊的な影響】怒りは対人関係を損ねたり、健康面でも悪影響を及ぼすことがあります。自分や他者に害を与えてしまう可能性があります。
- 【原因が複雑】怒りの原因は個人差が大きく、ストレス、プライドの傷つき、不公平感など、複雑な要因が絡む場合が多いです。原因の特定と対処がむずかしいものです。
- 【適切な表現がむずかしい】怒りを適切に表現する方法が分からない人も多く、言い過ぎたり暴力的になったりしてしまうことがあります。
- 【習慣化のリスク】怒りに頼る癖がつくと、感情の爆発を繰り返してしまい、問題を悪化させる悪循環に陥ることがあります。
感情が揺さぶれたその瞬間に役立つのは、「その場ですぐにできる簡単な方法」です。考え方のクセを見直す技法は有効度の高い方法ですが、効果を発揮するのは感情が落ち着いているとき。感情が高ぶっているその瞬間に、考え方を変えるのは無理です。感情が落ち着いてから行う技法です。
その点、紙に書いて捨てる方法は、怒りが高ぶった状態でも多少の爽快感が得られるでしょうし、怒りを手放す儀式的な意味合いも期待できます。
劇的な効果は得られないと思います。しかし、簡単な手続きで(少しであっても)効果が得られるのは大きな意味があります。次の一手を打つ態勢に入れるからです。セルフケアの肝は、小さな効果的な方法の積み重ねです。
名古屋大学大学院情報学研究科の研究グループのプレスリリースは以下のページをご覧下さい。
実験では、「怒りを感じた状況をなるべく客観的に紙に書いて、その紙を捨てるか、シュレッダーで裁断すると怒りが消失した」とあります。
それなら、紙をビリビリに破いてゴミ箱に叩きつけるなど、怒りを強く表現すると効果的かもしれないと思うかもしれません。しかし、強い感情表現は、しばしばその感情を増幅させます。あくまで、怒りの感情を手放す、捨てるという姿勢で行うことだと思います。