アタッチメント(1):自信が育つ土台

執筆者:山崎 孝
公認心理師・ブリーフセラピスト・家族相談士

アタッチメントは自信を育てる土台

自分に自信を持てないのはなぜ?

多くの人が、人生の中で「自信のなさ」に直面します。何か失敗したとき、思い通りにいかないとき、つい「自分が悪いんだ」と責めてしまうことは誰にでもあります。

もし、そのような考え方が習慣になっているとしたら、それは単なる性格の問題ではなく、幼少期に形成されたアタッチメント(愛着)の影響かもしれません。

アタッチメントとは、幼い頃に主に養育者との関係を通じて築かれる情緒的な絆のことです。このアタッチメントのあり方が、その後の人生における自己評価や人間関係の築き方に大きな影響を与えます。

自己肯定感や自己効力感といった「自信」の土台となる要素も、アタッチメントの影響を受けています。

自己肯定感:自分自身を大切に思い、「自分には価値がある」と感じる気持ちのことです。自分のありのままを受け入れ、良いところも不完全なところも含めて、自分を認めることができる状態を指します。

自己効力感:「自分はこれができる」と信じる気持ちのことです。仕事や新しい課題に取り組むとき、「私にはできる」と感じる自信のことを指します。簡単に言えば、自分の能力を信じる力です。

「自信が持てない」「人とうまく関われない」と感じる背景には、あなたの過去の環境が関係している可能性があります。しかし、それは決してあなたのせいではありません。この投稿では、アタッチメントと自信の関係について解説します。

​​アタッチメントとは何か

元々はくっつくこと(アタッチメント)で安心感を得る行為

アタッチメントとは、特定の相手(主に養育者)との間に築く情緒的な絆のことです。特に幼少期の養育者との関係が、アタッチメントの形成に大きく影響します。

元の意味は、子どもが不安や恐怖を感じたときに、特定の人にくっつくことで安心感を得ようとする行為や欲求を指します。しかし、情緒的な絆情緒的な結びつきという意味で使われることが多く、このページでもその意味で用います。

赤ちゃんは、不安や恐怖を感じると、自然と養育者にしがみついたり、泣いて注意を引いたりします。そして、養育者が適切に応答することで、子どもは「自分は守られている」と感じ、安心感を得ます。

アタッチメントは、ただ触れ合うだけでなく、心のつながりにも深く関わっています。養育者がいつも子どもの気持ちに寄り添い、適切に応答することで、子どもは「自分は大切な存在だ」と感じるようになります。

逆に、養育者の応答が不安定だったり、冷たかったりすると、子どもは安心感を得にくくなります。その結果、「自分は愛されていないのかもしれない」「人は信頼できない」といった考えが根付き、人間関係や自己肯定感に影響を与えることがあります。

アタッチメントは、幼少期だけでなく、大人になってからの人間関係にも影響します。私たちが親しい人とどのように関わるのか、自分をどう評価するのかといった、心のあり方の土台となります。

アタッチメントスタイルの4つの型

アタッチメント(愛着)のスタイルは、大きく分けると安定型不安定型に分類されます。不安型はさらに回避型アンビバレント型無秩序型に分けられます。

アタッチメントスタイルの4つの型
  • 安定型:自分の価値を肯定し、他者と適切な距離を取りながら関係を築ける。
  • 不安定型
    • 回避型:人に頼ること、他者と親密な関係を避ける。
    • アンビバレント型:人間関係に対する不安が強く、見捨てられることを恐れる。
    • 無秩序型:対人関係への恐怖と強い依存心の間で揺れ動く。

このアタッチメントスタイルは、幼少期の養育者との関係の中で形成され、大人になってからの人間関係や自己認識にも影響を与えます。

安定型

  • 養育者の関わり方:一貫して子どもの感情に寄り添い、安心感を与えることで形成される。
  • 子どもの特徴:自分の価値を肯定し、他者と適切な距離を取りながら関係を築ける。
  • 大人の特徴:信頼関係を築くのが自然で、他者の愛情を素直に受け入れられる。

回避型

  • 養育者の関わり方:感情的に距離を取り、冷淡だった場合に形成される。
  • 子どもの特徴:幼少期に「甘えても受け入れてもらえない」という経験を重ねることで、人に頼ることを避けるようになる。
  • 大人の特徴:大人になっても、他者との親密な関係を避け、自立を過度に重視する傾向がある。

アンビバレント型

  • 養育者の関わり方:養育者の対応が一貫せず、時に優しく、時に拒絶的だった場合に形成される。
  • 子どもの特徴:子どもは「愛されるとき」と「拒絶されるとき」があるため、常に不安を抱えながら関係を求めるようになる。
  • 大人の特徴:大人になっても、人間関係に対する不安が強く、見捨てられることを恐れる傾向がある。

無秩序型

  • 養育者の関わり方:養育者が暴力的・支配的だった場合や、恐怖を伴う養育環境で育った場合に形成される。
  • 子どもの特徴:子どもは「人は信頼できないが、一人でいるのも怖い」というジレンマを抱える。
  • 大人の特徴:大人になっても、対人関係への恐怖と強い依存心の間で揺れ動く傾向がある。

アタッチメントスタイルは、幼少期に形成されるものですが、大人になってからも変化することがあります。次の章では、アタッチメントが自己肯定感や自己効力感にどのような影響を与えるのかを解説します。

アタッチメントと自己肯定感・自己効力感の関係

養育者が安全な基地であるからこそ、子どもは活動範囲を広げて様々な経験を積み重ねることができる
子どもは養育者を拠点にして活動範囲を広げていく

私たちが自分自身をどう捉えるか、どれほど自信を持てるかは、幼少期のアタッチメント(愛着)のあり方と深く関わっています。

自己肯定感とは

自己肯定感とは、自分には価値があると感じられる心の状態です。安定したアタッチメントを持つ子どもは、養育者から一貫した愛情を受けることで、自分は大切にされる存在だと学びます。この経験が積み重なることで、成長しても「自分は愛される価値がある」「自分には存在する意味がある」と感じることができるのです。

一方で、不安定なアタッチメントのもとで育つと、子どもは「自分は愛されるに値しないのではないか」「自分は何かが欠けているのではないか」と考えるようになります。その結果、自分自身を低く評価し、他者と比べて劣等感を抱きやすくなることがあります。

自己効力感とは

自己効力感とは、自分にはできるという感覚のことです。挑戦に対して「きっとやり遂げられる」と思えるか、「どうせ無理だ」と諦めるかは、自己効力感の強さによって変わります。

安定したアタッチメントを持つ子どもは、「自分が困ったときには誰かが支えてくれる」という安心感を持っています。そのため、新しいことに挑戦する際も、大きな不安を抱えずに取り組むことができます。結果として、成功体験を積みやすく、「やればできる」という感覚が自然と育っていくのです。

一方、不安定なアタッチメントを持つ子どもは、「頑張っても認められないかもしれない」「失敗したら誰にも助けてもらえない」という恐れを抱きやすくなります。挑戦する前から諦めてしまったり、失敗を過度に恐れるようになったりすることが多く、自己効力感が低くなりがちです

アタッチメントとアダルトチルドレン

アダルトチルドレンとは、幼少期に機能不全な家庭で育ち、大人になっても生きづらさを抱える人を指す言葉です。

機能不全家庭とは、親の虐待やネグレクト(育児放棄)、過干渉、家族内の不和など、子どもが安心して成長できる環境が整っていない家庭を指します。ACの多くは、不安定なアタッチメントを経験しており、その影響が自己評価や人間関係に及んでいます。

アタッチメントが大人になっても影響を与える

自己肯定感や自己効力感は、大人になってからの人間関係や仕事、人生の選択にも大きな影響を与えます。例えば、安定したアタッチメントを持つ人は、人と関わることに安心感を持ち、自分の価値を疑うことが少ないため、人間関係を築くのが比較的スムーズです。また、困難に直面しても、「自分なら乗り越えられる」と信じやすく、前向きに行動できます。

安定したアタッチメントを持つ人は、困ったときに他者に助けを求めることができます。「一人で抱え込まなくてもいい」と思えるため、必要な場面では周囲の支援を受けながら問題を乗り越えることができます。

一方、不安定なアタッチメントを持つ人は、困ったときに他者に助けを求めることが苦手です。人を頼ることで拒絶されるかもしれないという不安が強いため、「自分で何とかしなければ」と考え、結果として孤立しやすくなることがあります。

アタッチメントは、私たちの「自信」を支える土台となるものです。幼少期に築かれたアタッチメントスタイルは、生涯にわたって人間関係や自己評価に影響を与えます。

しかし、悲観する必要はありません。信頼できる人との出会いや新たな経験によって、アタッチメントのあり方は変化しうるものだからです。自分のアタッチメントの影響を理解し、自ら自己肯定感や自己効力感を育てていくことは可能です。

最後に

アタッチメントは、私たちの自己肯定感や自己効力感の土台となる重要な要素です。幼少期にどのようなアタッチメントを築いたかは、その後の人生に大きな影響を与えます。

しかし、信頼できる人との出会いや、新しい経験を通じて、アタッチメントのあり方は変化しうるものです。過去の影響に縛られるのではなく、「今」からどのように自分を育てていくかが大切です。

アタッチメントは、幼少期に養育者との関係において築かれるものです。

それは、「自分に自信を持てなくなったのは、決してあなたのせいではない」ことを示しています。自分を過剰に責めるのは終わりにしましょう。

もう一つ確かなことは、「大人になった今、自分で自信を育てるしかない」ことです。

次の投稿では、アタッチメントスタイルがどのように変化しうるのか、そして自信を育てるための具体的な方法について述べていきます。

参考文献・参考サイト

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