ストレス反応とストレッサー
ストレスは元々、物理学の言葉です。『【ストレスの理論】3段階のストレス反応』で紹介した、生理学者のハンス・セリエが生物学に持ち込み、医学や心理の領域でも用いられるようになりました。
ストレスの説明によく用いられるのが上図です。外側から圧力がかかり、ひずんだ状態になっているのをストレス反応といいます。外部からの圧力をストレッサーといいます。ストレッサーは以下の3種類に分けられます。
- 物理的ストレッサー:気温、騒音
- 化学的ストレッサー:薬物、お酒
- 心理・社会的ストレッサー:仕事、人間関係
セリエはストレスを「外界のあらゆる要求によってもたらされる身体の非特異的反応」を表す概念として提唱しました。
「非特異的反応」とは、ストレスの原因が何であれ、身体が示す反応は同じであることを意味します。仕事の締め切りによるストレスも、人間関係の悩みによるストレスも、同じ「ストレス」として認識され、同じような反応(心拍数上昇、緊張感、警戒感など)を引き起こすということです。
ライフイベントによるストレス
生活における出来事は、ストレスとして体験されることがあります。
ホームズとレイによって作成された社会的再適応評定尺度は、さまざまなライフイベントのストレス度を数値化したものです。結婚や転職、家族の死などの「生活変化イベント」に点数を割り当てています。
この尺度の特徴は、望ましくない出来事だけでなく、好ましい出来事もストレスとして経験されるとしたことです。個人差が反映されていない等の指摘もありますが、ストレス研究に大きな影響を与えたことに違いはありません。
イベント | ストレススコア | イベント | ストレススコア |
---|---|---|---|
配偶者の死 | 100 | 息子や娘が家を離れる | 29 |
離婚 | 73 | 親戚とのトラブル | 29 |
別居 | 65 | 個人的な輝かしい成功 | 28 |
刑務所に入る | 63 | 妻の就職や離職 | 26 |
家族の死 | 63 | 就学・卒業 | 26 |
負傷や病気 | 53 | 生活条件の変化 | 25 |
結婚 | 50 | 個人的習慣の修正 | 24 |
解雇・失業 | 47 | 上司とのトラブル | 23 |
夫婦の和解・調停 | 45 | 労働条件の変化 | 20 |
退職 | 45 | 住居の変更 | 20 |
家族の健康の大きな変化 | 44 | 学校を変わる | 20 |
妊娠 | 40 | レクリエーションの変化 | 19 |
性的関係の問題 | 39 | 教会活動の変化 | 19 |
新しい家族の誕生 | 39 | 社会活動の変化 | 18 |
仕事上の再調整 | 39 | 1万ドル以下の抵当 | 17 |
経済状況の大きな変化 | 38 | 睡眠習慣の変化 | 16 |
親友の死 | 37 | 団欒する家族の数の変化 | 15 |
転職 | 36 | 食習慣の変化 | 15 |
配偶者との口論の大きな変化 | 35 | 休暇 | 13 |
1万ドル以上の抵当 | 31 | クリスマス | 12 |
担保・貸付金の損失 | 30 | ささいな違反行為 | 11 |
仕事上の責任の変化 | 29 |
ストレスの深刻さを決めるのは
ストレスの深刻さに影響する要素は主に3つあります。
- 制御可能性:対処できる程度
- 予測可能性:その出来事を予測できる程度
- 持続期間:その出来事を経験する期間
対処できると思える出来事が深刻なストレスになりにくいのは、容易に予想できると思います。逆に対処できない出来事は深刻なストレスになる可能性が高くなります。
発生を予測できれば準備が可能です。準備には心の準備も含まれます。すぐに対処できないことであっても、心の準備ができていれば深刻さが軽減されます。
深刻度の小さい出来事でも、慢性化すると大きなストレスになります。上司の嫌味もたまになら流せますが、日常化すると会社が憂うつな場所になることがあります。
まとめ
- ストレスとは、外側から圧力がかかり、ひずんだ状態になっている状態に例えられます。圧力をストレッサー、その状態をストレス反応といいます。
- 望ましくない出来事だけでなく、好ましい出来事も変化への適応を求められる機会となり、ストレスとなることがあります。
- ストレスの深刻さを決める要素として、制御可能性、予測可能性、持続期間があげられます。