「どうすれば自分に自信を持てるようになりますか?」の問いに、
「自分で自分をほめましょう」
「欠点も含めて自分を受け入れましょう」とアドバイスされることがあります。
「それができないから、悩んでいるのです」と言いたくなりませんか。私はそうでした。
自分で自分をほめても響かない、自己受容がむずかしいあなたへ
自分に自信を持つ方法としてよく耳にするのが、「自分をほめましょう」「自分を受け入れましょう」というアドバイスです。
しかし、これらの言葉が必ずしも心に響くとは限りません。自分をほめることが形式的に感じられ、「本心からではないので意味がない」と感じることはありませんか。また、「自分を受け入れることができないからこそ、悩んでいるのに」と思うことはありませんか。
私がそうでした。今もその気持ちは多少残っています。なので、そう言いたくなる人に共感を覚えます。
そのようなあなたに、自己受容の前に、自己理解に焦点を当てることを提案します。
自己理解を深めることによって、自分自身に対する共感、同情、慈悲の気持ちを持ちやすくなり、やりづらさを感じながらもやってきた自分をほめる気持ち、長所も短所もひっくるめて自分の全人格を受け入れる気持ちを持ちやすくなります。
自己理解の深化から自己受容へ、自己受容から自尊感情の向上へ
自己理解が深まると、自分自身を共感的に、同情的に、慈悲的に、見ることができるようになります。これは、自己受容への第一歩となり、自尊感情を高める基礎を築きます。
自己受容が高まると、失敗への耐性も自然と強まります。これは、失敗を自己価値の低下と捉えるのではなく、一つの体験として、成長と学びの機会として受け止められるようになるからです。
また、自己受容が高まると、新しいチャレンジに対する意欲も増します。失敗への耐性が強まることで、失敗への恐れが小さくなり、新しい試みへの勇気を持ちやすくなります。
新しいチャレンジを通じて得られる成功体験は、自己効力感を高めます。これが自尊感情のさらなる向上につながります。このプロセスは自己受容と自尊感情を強化し、個人の成長と発展を促進する良循環を生み出します。
自尊感情と自己肯定感は同じ意味と考えて差し支えありません。心理学では自尊感情を用いることが多いので、このサイトでもそれに倣っています。
自己効力感とは、自分がある状況において、目標達成できる、遂行できると信じる感覚のことです。「自分ならできる」「きっとうまくいく」という感覚のことです。
自己理解の深化がもたらすメリット
自己理解を深めることは、自信だけでなく、さまざまな面でのメリットをもたらします。
ストレスに対する理解が深まることで、ストレスを管理しやすくなります。自分がどのような状況でストレスを感じ、どう対処すれば良いのかをより理解できるようになります。メンタルヘルスにおけるセルフケアの能力向上に通じます。
自己理解の深化は意思決定能力を向上させます。自分の価値観や優先事項が明確になるため、決断を下す際に迷いが少なくなります。自分の選択への自信が高まり、日々の決断がスムーズになります。
自己理解の深化は対人関係の質を高めます。自分の感情や行動のパターンを理解することで、他人とのコミュニケーションに好影響を及ぼします。相手の立場を理解しやすくなり、より深い人間関係を築くことができます。
自己理解の深化は、これらのように多面的なメリットを提供し、日常生活においてより良い選択をし、充実した人間関係を築く助けにもなります。
自分の何を理解するのか
自分の何を理解するのか。以下が考えられます。
- 感情:自分がどのような感情を持っているか、そしてそれらの感情がどのような状況で生じるかを理解することが大切です。また、感情が引き起こされる原因や、それに対する反応の仕方も重要です。
- 思考パターン:自分がどのように考えるか、どのような信念や前提に基づいているかを認識すること。ネガティブな思考パターンや、ポジティブな思考傾向に気づくことが役立ちます。
- 行動:日常の行動や習慣がどのように自分の感情や思考に影響しているかを観察します。また、特定の状況でどのような行動を取りがちかを理解することも重要です。
- 価値観:自分の価値観や生活の優先順位を明確にし、それが日々の選択や行動にどのように影響しているかを考えます。
- 対人関係:人間関係において自分がどのように振る舞うか、他人とどのように関わっているかを理解すること。これには、友人関係、家族関係、職場の関係などが含まれます。
- 過去の経験:過去の重要な出来事や経験が、現在の自分にどのような影響を与えているかを振り返ります。これは、現在の行動や感情の理解に深みを加えることができます。
人には、その人固有の思考や行動の枠(パターン、フレームとも表現できる)があります。枠とは、物事の捉え方、感じ方、行動様式のことです。その人固有の枠があり、その枠は上記に挙げたものによって形成されています。
私たちが意識するしないに関わらず、その枠は自分の思考や行動を規定しています。
失敗したときに、「なぜ、あんなことをしたのだ。俺はバカだ」と自己否定させるのも枠です。自己否定を繰り返すと、怖くて行動を避けるようになります。成功体験が積めない、かつ逃げた自分を否定して、ますます自信をなくす悪循環に陥ることがあります。
自己理解を深めると、「この枠がそうさせたのか。仕方がない。改めて次に活かそう」と自分に慈悲的に関われるかもしれません。自己否定の繰り返しより、再チャレンジに向かいやすいのは明らかだと思います。
自己理解を深める方法
自己理解を深める方法として挙げられるのは以下です。
- 日記の記録:日々の感情や出来事を記録することで、自分の反応やパターンを客観的に見ることができます。
- 反省:一日の終わりに、その日の行動や感情について振り返り、自己理解を深めます。
- セルフカウンセリング:自分自身と対話する時間を設け、内面の声に耳を傾けることで、自分の本当のニーズや欲求を理解します。
- 読書:心理学や自己成長に関する書籍を読むことで、新たな視点や知識を得て、自己理解を深めます。
- 瞑想:瞑想を行うことで、心を静め、自分の内面に集中することができます。これは、自己理解を促進するのに役立ちます。
個人的には「書いて」います。頭の中にあるものを書き出します。コピー用紙に書き殴っています。すると、まだ言葉にされる前の感覚や感情の言語化が促されます。それらは、何もしなければ、言葉にされずに忘れ去られる感覚や感情でもあります。書くことで、それらに向き合う機会を持てます。
カウンセリングが提供できること
自己理解を深める取り組みにおいて、カウンセリングは以下のサポートを提供できます。
- 個人的な洞察の促進:自分自身の枠に加えて、心理学の理論の枠からの視点、カウンセラーの枠からの視点が得られます。多面的に自分自身を眺めることで、より自己理解が深まります。
- 感情の健全な処理:自分自身に向き合う際に、コントロールがむずかしいほどの強い感情が湧いてくることがあります。カウンセラーは、その感情と適切に向き合えるようにサポートします。
- 問題への対処を通じて自己理解をサポート:自分自身の枠が裏目に出て、具体的な問題や悩みが生じている場合は、問題の対処を通じて自己理解を深めるサポートが可能です。
カウンセリングは、自己理解の深化をサポートし、自己受容と自尊感情の向上を促進する強力なツールになるはずです。是非一度お試し下さい。