このエントリーは信田さよ子先生(日本公認会計士協会会長)のインタビュー記事の紹介です。「弱さ」についての考察が行われています。大変共感したため、是非紹介したいと思いました。
記事の要約
記事の内容を要約すると以下のようにまとめられると思います。
信田先生は「弱者」という言葉を使用するものの、「弱い・強い」という表現を避けているとのことです。
「弱さ」は個人の特性や心理的な問題ではなく、社会的な構造上の問題であるとの立場を取っています。例として、非正規雇用者や女性が社会的に不利な立場に置かれていることをあげ、これらの問題が「弱さ」として感じられる背景には社会的な構造が影響していると説明しています。
また、「自己責任」と「自己肯定感」の関連性についても触れ、現代の「ポジティブ」なムードに対する批判的な意見が述べられています。
以下、3つのポイントを要約して紹介します。
- 個人の「弱さ」は社会構造の問題
- 現代の「ポジティブ思考」への批判的視点
- 自己責任と自己肯定感
個人の「弱さ」は社会構造の問題
私たちが直面する困難や「弱さ」は、実際には自分の選択や能力だけの結果ではないかもしれません。その背景には、社会全体のルールや文化、制度などが関わっていることが多いのです。
「社会的構造」とは、私たちの生活の中での関係や役割、お金や教育、仕事のチャンス、そして人々の考え方や価値観などを指します。例えば、一部の仕事をしている人や女性が経済的に不利な状況になることは、彼らの選択や能力だけの問題ではありません。実際、仕事のルールや社会の考え方、男女の役割など、社会のルールや文化が影響しているのです。
この考え方を持つことで、私たちが経験する困難の原因を再考することができます。すべてを自分の「責任」として考えるのではなく、社会のルールや背景も考慮することで、問題をより深く理解することができます。
そして、この考え方は、社会のルールや制度をより良くするための動きを生む可能性があります。男女平等や一部の仕事の人たちの権利を守る動きなどは、この考え方から生まれています。
結論として、私たちが感じる「弱さ」や困難は、自分だけの問題ではなく、社会全体の問題として考えるべきです。この視点を持つことで、自分と社会との関係をより深く理解することができます。
現代の「ポジティブ思考」への批判的視点
現代社会での「ポジティブ」なムードや思考の強調は、多くの議論を呼び起こしています。このムードに対する主な批判的な意見を以下にまとめます。
過度な楽観主義
「ポジティブ」の過度な強調は、現実のリスクを見過ごす楽観的な態度を生む可能性があり、これが適切な対策の欠如を招く恐れがある。
感情の無視
「ポジティブ」を絶対視することで、悲しみや怒りなどの感情を抑圧する傾向が生まれ、これが長期的な心の問題を引き起こす可能性がある。
過度な自己責任
困難や失敗を個人の「態度」の問題として捉えることで、外部の要因を無視し、すべてを個人の責任とする考えが強まる恐れがある。
表面的な幸福
SNS文化の影響で、他者との比較や表面的な幸福の追求が強化され、真の幸福や満足感の追求が後回しになる傾向がある。
問題の本質の見落とし
「ポジティブ」に偏ることで、問題の深層的な原因を見落とし、真の解決策を見逃すリスクが高まる。
これらの批判は、「ポジティブ思考」が悪いわけではなく、その過度な強調や一側的な解釈に対する懸念を示しています。現実的な評価とバランスの取り方が求められています。
自己責任と自己肯定感
「自己責任」と「自己肯定感」は、私たちの心や行動に大きな影響を与える概念です。これらは異なるものですが、深く関連しています。
自己責任は、私たちが自分の行動やその結果に対して持つべき責任感を指します。成功や失敗は、個人の選択や努力によるという考えが基盤にあります。しかし、これを過度に強調すると、外部の状況や社会的要因を見過ごし、すべてを「努力不足」として捉えるリスクが生まれます。
一方、自己肯定感は、自分の価値や能力をどれだけ肯定的に捉えるかを示すものです。高い自己肯定感を持つ人は、困難にも前向きに対処します。しかし、低い自己肯定感は、挫折や失敗を経験すると、さらに自己評価を下げる傾向があります。
これらの関連性は、過度な自己責任の強調が、自己肯定感を低下させる可能性があることにあります。特に、現代社会での「ポジティブ」なムードや「成功」の価値観の強調は、この関連性に影響を与えていると考えられます。
結論として、自己責任と自己肯定感のバランスを理解し、適切に取り組むことが、健全な心の状態や行動を促進する鍵となります。
自己肯定感ブームへの警鐘
「過度な自己責任の強調が自己肯定感を低下させる」が私に刺さりました。また、自己肯定感ブームへの警鐘でもあると感じました。
最近の私は、「弱くても、自己肯定感が低くても、そのままの自分を、良し悪しの評価なしに受け入れる『自己受容』から始まる」との考えが強くなっています。自己受容については改めてエントリーにしたいと思います。