
Aさん「実際にやってみると、妻がやっていることは大変なことなんやなと共感しました」
Bさん「実際にやってみると、妻の考えは理解できるけど、共感はできません」
この2人は、「共感」の意味を誤解しています。
AさんとBさんのエピソードの詳細を紹介します。
Aさんの同感エピソード
Aさん(40代男性)は、妻が体調を崩した一週間、4人家族の家事を一手に引き受けることになりました。一人暮らしが長かったAさんは最初、家事を甘く見ていましたが、実際にやってみると想像以上に大変でした。
特に食事の準備に苦労しました。自分一人なら適当でも良いのですが、妻や子どもたちのことを考えると、栄養バランスの取れた食事を作りたいですし、同じようなメニューで飽きられたくないという思いもあり、毎日の献立に頭を悩ませました。
「妻は毎日こんなことを考えながら家事をしているんだな」と妻の気持ちを体験する機会になりました。「食事の準備が大変って言ってた君の気持ちに共感したわ」と妻に伝えました。特別な言葉での返事はありませんでしたが、妻の表情からは喜びの気持ちが伝わってきました。
Aさんは「共感しました」と言ってますが、正確には「同感」「賛同」しています。
Bさんの共感エピソード
Bさん(30代男性)の子どもたち2人は、塾、スイミング、ピアノを習っています。習いごとが休みになるのは日曜日だけです。送り迎えはすべて妻が担当していますが、いつも疲れた様子が見られます。仕事の都合上、夫が代わることは難しい状況です。妻だけでなく、子どもたちにも疲労の色が見え始めています。
Bさんは習いごとの数が多すぎるのではないかと懸念を抱いています。しかし、妻自身が子どもの頃、経済的な理由で習いごとができなかった経験から、自分の子どもたちには様々な機会を与えたいという強い思いがあります。Bさんは妻の気持ちを理解し、意見することは控えていますが、彼女が疲弊してしまわないか心配しています。
共感と同感
同感とは、相手の考えや感情に「私も同じように感じる」と賛同することです。例えば、友だちが「この映画は感動的だった」と言ったとき、「私もそう思う!」と同じ気持ちになることが同感です。
Aさんのエピソードには、「共感しました」とありますが、正確には「同感」「賛同」しています。
「食事の準備が大変って言ってた君の気持ちに『共感』したわ」と言っていますが、正確には『同感』です。妻と同じように感じて賛同しているからです。
一方、共感とは、相手の感情や考えを理解し、その人の立場に立って気持ちを感じ取ることです。例えば、友だちが失恋して悲しんでいるとき、その悲しみに寄り添い、相手の気持ちを理解しようとすることが共感です。
Bさんのエピソードには、「共感はできません」とありますが、していないのは同感で、しっ共感はしてます。
Bさんは習いごとの数が多すぎると懸念していますが(妻に賛同していませんが)、妻が自分の子ども時代の経験から、子どもたちには様々な機会を与えたい考えを「理解」しています。
相手と同じ考えや気持ちにならなくても、相手の考えや気持ちを理解しているのが共感です。
2つの共感
共感には、主に2つの種類があります。認知的共感と情動的共感とです。
認知的共感とは、相手の立場に立って物事を考え、その人の気持ちを想像し理解する能力のことです。これは視点取得とも呼ばれます。例えば、「この状況で相手はこう感じているだろう」と、相手の気持ちを頭で理解することです。
認知的共感は頭で理解すれば良いので(同じ気持ちになる必要がありませんので)、訓練次第で向上が可能な能力です。
情動的共感とは、相手の感情を自分のことのように感じ取る能力のことです。これは感情の共有とも呼ばれます。例えば、泣いている人を見て自分まで悲しい気持ちになったり、笑顔の人を見て自分も嬉しくなったりする反応です。
同感と情動的共感の違いがむずかしいかもしれません。
最も大きな違いは、「自分の価値観が入るか入らないか」という点です。
同感は、自分の価値観や考えが基準になります。「私もそう思う」「私も同じ」という形で、自分の価値観と照らし合わせて賛同することです。例えば、友だちが「この仕事は大変だ」と言ったとき、「本当にそうだよね。私も同じように感じる」と、自分の経験や価値観に基づいて同意することが同感です。
一方、情動的共感は、相手の感情をそのまま感じ取ることです。自分がどう思うかは関係なく、純粋に相手の感情に反応します。例えば、友だちが「この仕事は大変だ」と言ったとき、自分はその仕事を簡単だと思っていても、友だちの疲れや大変さを感じ取っている状態です。もらい泣きやつられ笑いも同じケースがあります。
同上と情動的共感は自然に起きる部分が大きいので、意識して向上させるのがむずかしい能力です。
同感はむずかしくても共感は可能
「アドバイスがほしいのではなく、共感してほしいだけ」
「夫婦とはいえ別人格なのだから、共感してと言われても無理」
あるあるの夫婦のスレ違いですが、同感と共感の意味がわかれば、決して無理ではないことが理解できると思います。
コツは理解しようとする姿勢です。共感しなければと思うからむずかしくなるのであって、理解すればOKと思えば、ハードルが下がると思います。
逆も然りです。配偶者に求めるのは、同感や情動的共感ではなく、認知的共感にするのが望ましいです。