カウンセリング受ける勇気がないと感じるあなたへ

執筆者:山崎 孝(公認心理師・ブリーフセラピスト・家族相談士)

私たちカウンセラーは、諸外国のようにカウンセリングが身近なものになり、気軽に受けられるものであってほしいと願っています。その願いを込めて、カウンセリングに対して抱く不安や懸念をあげてみます。

諸外国では身近でも、日本では敷居が高い(と感じる)カウンセリング

多くはありませんが、割と気軽な気持ちでカウンセリングにお越しになる方がいらっしゃいます。以下のような感じです。

「私はアメリカのドラマが好きでよく見ています。ドラマを見ていると、カウンセリグが日常生活に溶け込んでいて、身近なものとして描かれています。私もそのような感覚で受けてみたいと思って来ました」

このような方もいらっしゃいます。

「○○○(生活されている国名)では、カウンセリングは日常的なものですよ。ただ、日本語で受けられるカウンセラーは予約がいっぱいで、今回一時帰国したついでに来てみてみました」

一方で、

「ここのホームページを見つけたのは半年前でした。以来、たまに見に来ては、どうしようかと迷って、そんなことを繰り返して、迷っているだけでは何も変わらないと思って、勇気を出して来てみました」

という方もいらっしゃいます。期間の長短はあっても、一定期間悩んだ末に来談される方は、めずらしくありません。

それらの方々がカウンセリングに感じる不安や懸念をピックアップして、それらにカウンセラーの立場からコメントします。

カウンセリングに感じる不安とカウンセラーのコメント

病名をつけられるのが怖い

精神疾患の診断を受けることで、自分のアイデンティティが否定的に変わってしまうのではないかと心配する人は少なくありません。「うつ病」や「不安症」といった診断名が付くことで、周囲からの見方が変わったり、自分自身を否定的に捉えてしまったりすることを恐れるのは自然な反応です。

カウンセラーより

カウンセリングで病名の診断がつくことはありません。診断できるのは医師のみであり、カウンセラーが診断することはできません。

また、カウンセリングの目的は、あなたに病名などのラベルをつけることではありません。あなたの気持ちや状況を深く理解し、悩みや問題に対して適切なサポートを提供することです。

カウンセリングでは、あなたの強みや可能性に焦点を当て、あなたの個性や経験を重視しながら、現在の困難をどのようにして乗り越えるかを一緒に探っていきます。安心して、あなたの思いや経験を話してください。

自分のダメなところが判明するのが怖い

カウンセリングを通じて、自分の否定的な側面が明確になることを恐れる方がいらっしゃいます。自分の思考や行動のパターン掘り下げることによって、これまで気づかなかった自分の欠点や弱点が明らかになることに不安を感じるのは、当然のことかもしれません。

カウンセラーより

カウンセリングは、ダメなところを見つけ出す場ではありません。短所と長所はコインの裏表のようなものです。ある状況では短所にあり、別の状況では長所となることもあります。また、ダメと思っていることは、解決の試みがうまくいかなかったに過ぎないことがあります。そのチャレンジの姿勢は、改善・解決に向かうリソースでもあります。

あなたがダメと思っている思考と行動のパターンは、実は大切な個性であり、あなたがこれまで身を置いてきた環境に適応するために身につけた戦略かもしれません。それらを否定するのではなく、よく理解し、より建設的な方向に活かすことを目指すのもカウンセリングで行われることです。

こんなちっぽけな悩みを相談して良いのだろうか

自分の悩みは些細すぎて、カウンセラーの時間を無駄にしてしまうのではないか、あるいは他の人にはもっと深刻な問題があるのではないかと考えて、カウンセリングを躊躇することがあります。自分の問題を軽視したり、他人と比較したりして、支援を受けることをためらってしまうのは残念なことです。

カウンセラーより

あなたにとって重要な悩みは、決して「ちっぽけ」ではありません。悩みの大小を判断するのは外部の基準ではなく、あなた自身の感覚です。日々の生活に影響を与えている問題であれば、それは十分にカウンセリングで取り上げる価値があります。

実際、一見小さな問題でも、それが積み重なることで大きなストレスになったり、より深刻な問題につながったりすることがあります。早い段階で対処することで、問題が大きくなる前に解決の糸口を見つけられる可能性が高まります。

カウンセリングでは、あなたの悩みを真摯に受け止め、共に考えていきます。些細に思える悩みでも、それがあなたの生活の質に影響を与えているのであれば、十分に話し合う価値があります。どんな内容でも、遠慮なく相談してください。あなたの気持ちを大切に受け止め、サポートいたします。

あなたが悪いと言われないか

カウンセリングで自分の問題や状況について話すとき、カウンセラーにネガティブな感情を抱かれたり、批判されたりするのではないかと不安に感じる方は少なくありません。自己批判的な傾向がある方や、過去に否定的な経験をした方は、この不安が強くなりがちです。自分が悪いと言われることで、さらに傷つく恐れを感じるのは当然のことです。

カウンセラーより

カウンセリングは、あなたやあなたの行動の良し悪しを評価する場ではないことを強調させて下さい。あなたを理解して、サポートするための場です。解決を一緒に構築するための場です。

継続して通うように勧められるのだろうか

カウンセリングを始めるにあたって、「一度始めたら長期間継続しなければならないのではないか」「自分の意思で終了できないのではないか」といった不安を抱かれることがあります。

カウンセラーより

カウンセリングの継続や終了は、あなたとカウンセラーの協議によって決めます。カウンセラーは、あなたの意思を尊重して、無理に継続を勧めることはありません。カウンセリングの頻度や期間も同様です。あなたのニーズや状況に応じて柔軟に調整できます。あなたと相談しながら決めていきます。

継続を提案する場合でも、それはあなたの利益を考えてのことです。その際には、継続することのメリットや理由を説明して、あなたの理解と同意を得た上で進めます。カウンセリングの進め方や終了のタイミングについて、疑問や不安がある場合は、遠慮なく相談してください。あなたの意思を尊重しながらサポートを提供していきます。​​​​​​​​​​​​​​​​

カウンセリングの内容が家族や職場に伝わらないだろうか

多くの方が、カウンセリングで話した内容が外部に漏れることを心配しています。特に、未成年者や学生、職場での問題を抱えている方は、親や教師、上司に知られることで、不利益を被ったり、関係性が悪化したりすることを恐れています。この懸念は、カウンセリングを受けること自体をためらう大きな要因となっています。

カウンセラーより

カウンセリングにおける守秘義務は、私たちの職業倫理の根幹をなすものです。所属する学術団体の倫理綱領、および法律に守秘義務が定められています。あなたがカウンセリングで話した内容は、法律で定められた例外(生命・身体・財産等の危険がある場合など)を除き、厳重に守られます。第三者に情報を開示する際は、あなたの同意を得ます。

カウンセリングルームは、あなたが安心して自分の思いを表現できる安全な空間です。記録の管理も厳重に行い、個人情報の保護には最大限の注意を払っています。もし、特定の人に知られたくない内容がある場合は、面接の冒頭でその旨を伝えていただければ、より慎重に対応いたします。あなたのプライバシーを守ることは、私たちの最優先事項の一つです。安心して、率直に話していただけるよう努めます。

話を聞いてもらうだけで、がっかりするだけではないか

カウンセリングに対して「ただ話を聞いてもらうだけ」という印象を持っている方が少なからずいらっしゃいます。話をしても具体的な解決策が得られないのではないか、時間とお金を無駄にするだけではないかと心配する声を聞くこともあります。

カウンセラーより

傾聴はカウンセリングの重要な要素の一つですが、それだけではありません。カウンセリングは、あなたの話を丁寧に聴くことから始まります。そこから問題の本質を理解し、改善・解決に向かう対処を一緒に見出していくプロセスです。

当相談室のカウンセラーが依拠するブリーフセラピーは、解決を志向しています。あなたの話を傾聴しながら、問題は何か、何が問題を維持しているのか、どうなれば解決と言えるのか、例外(既に起きている解決)はあるのか等を探索しています。

カウンセリングの進め方や目標について不安がある場合は、遠慮なく相談してください。あなたのニーズに合わせて、より効果的なアプローチを一緒に考えていきます。

話すことで、さらに傷つくことはないか

トラウマ体験やつらい経験を持つ方は、それらについて話すことで、再び強い感情に襲われたり、症状が悪化したりすることを恐れる場合があります。過去の痛みを思い出すことへの不安や、感情をコントロールできなくなることへの懸念が、カウンセリングを躊躇する理由となっています。

カウンセラーより

確かに、つらい経験について話すことは、一時的に不快な感情を呼び起こす可能性があります。しかし、カウンセリングでは、あなたの安全と安定を最優先に考えながら進めていきます。

トラウマやつらい経験の扱いには細心の注意を払い、あなたのペースに合わせて慎重に進めます。無理に話す必要はありません。まずは安全感を築くことから始めて、徐々に準備が整ってから、あなたが心の準備ができたときに、少しずつ話していく方法を取ることもできます。

不安や恐れを感じたら、すぐにカウンセラーに伝えてください。あなたの気持ちを尊重しながら、安全に進められるよう全力でサポートします。​​​​​​​​​​​​​​​​

信頼関係の不安

多くの人が、初めて会うカウンセラーに対して信頼関係を築けるかどうか不安を感じています。自分の内面や深い悩みを、ほとんど知らない人に打ち明けることへの抵抗感は自然なものです。過去に他人に裏切られた経験がある場合や、一般的に人間関係に不安を感じている場合、この懸念はより強くなります。

カウンセラーより

信頼関係の構築は、カウンセリングの中で最も重要な要素の一つです。私たちは、あなたが安心して自分の思いを話せる環境を作ることを最優先しています。

初回のセッションでは、まずお互いを知ることから始めます。あなたのペースに合わせて、徐々に関係性を築いていきます。信頼関係は一朝一夕には築けませんが、時間をかけて丁寧に構築していくものです。

カウンセラーは、あなたの気持ちや経験を判断せず、受容的な態度で接します。また、専門的な訓練を受け、倫理規定を厳守しているため、あなたの話を慎重に扱います。

効果への疑問

カウンセリングが本当に効果があるのか、自分の問題が解決するのか疑問に思う人も多くいます。特に、長年抱えてきた問題や複雑な状況に直面している場合、短期間で劇的な変化が起こるとは考えにくく、カウンセリングの有効性に疑問を感じることがあります。

カウンセラーより

カウンセリングの効果は科学的に実証されています。しかし、その効果の現れ方や程度は個人によって異なります。即効性のある薬のように急激な変化が起こることは稀ですが、多くの方が時間をかけて着実な改善を経験しています。

カウンセリングでは、問題解決のスキルを学んだり、新しい視点を得たり、自己理解を深めたりすることで、長期的な変化をサポートします。また、定期的に進捗を確認し、必要に応じてアプローチを調整していきます。

効果を最大限に引き出すためには、セッション外でも学んだことを実践し、自己観察を行うことが重要です。カウンセリングは、あなた自身の変化への取り組みをサポートするプロセスです。

もし効果に疑問を感じたら、率直にカウンセラーと話し合ってください。一緒に目標を見直したり、より効果的な方法を探ったりすることができます。あなたにとって最も効果的なアプローチを見つけるため、柔軟に対応していきます。

社会的な偏見

心理的な支援を受けることに対して、偏見を持たれることを懸念する人もいらっしゃいます。「メンタルヘルスの問題がある人は弱い」「カウンセリングを受けるのは恥ずかしいこと」といった誤った認識が、カウンセリングを躊躇させる原因となっています。特に、職場や学校、家族などの環境で、こうした偏見が強い場合、サポートを求めることをためらう傾向があります。

カウンセラーより

心の病やトラブルに対する社会の見方は徐々に変わりつつありますが、依然として偏見が存在することは事実です。しかし、メンタルヘルスに気を配り、必要な時にサポートを求めることは、むしろ強さと賢明さの表れだと思います。

プライバシーは完全に保護されます。カウンセリングを受けていることを他人に知られる心配はありません。また、もし周囲の理解が得られにくい環境にいる場合は、どのように対処するか一緒に考えましょう。

自己効力感の低下

多くの人が、「自分の問題は自分で解決すべきだ」という考えに囚われています。他人の助けを借りることを、自分の弱さや無能さの表れだと捉えてしまい、カウンセリングを受けることをためらう場合があります。

カウンセラーより

「自立とは依存先を増やすこと」という言葉があります。一人でできることには限界があります。問題に直面したときに助けを求めることは弱さの表れではなく、むしろ、それが大人の自立と言えるのではないでしょうか。

カウンセリングは、あなたの問題解決能力を否定するものではなく、むしろそれを強化し、拡大するためのものです。私たちの役割は、あなたが自分の力で問題に対処できるようになるためのサポートを提供することです。

過去の残念なカウンセリング経験

過去にカウンセリングや類似のサポートを受けた際に、良くない経験をした人がいます。例えば、カウンセラーとの相性が合わなかった、期待していた効果が得られなかった、または不適切な対応を受けたなどの経験が、再びカウンセリングを受けることへの抵抗感につながっています。

カウンセラーより

過去に不満足な経験をされたことについて、大変残念に思います。そのような経験が、再びカウンセリングを試みることへの障壁となっていることは十分理解できます。

カウンセリングには複数の学派があります。すべてが同じではありません。また、カウンセラーにとって相性は言い訳になりませんが、人間が行うことなので、相性の影響は否定できません。一度うまくいかなかったからといって、すべてのカウンセリングが同じと思わないでいただければ幸いです。

カウンセリングの進め方や目標設定について、あなたの意見を積極的に取り入れます。不安や疑問があれば、いつでも遠慮なく伝えてください。あなたにとって安全で効果的な体験となるよう、最大限努力いたします。

依存への恐れ

カウンセリングを始めることで、カウンセラーや治療プロセスに依存してしまうのではないかと心配する人もいます。「自分で問題解決する力が弱くなる」「カウンセリングがなければ生活できなくなる」といった懸念が、カウンセリングを躊躇させる原因となっています。

カウンセラーより

カウンセリングへの依存に対する懸念は理解できます。しかし、実際のカウンセリングの目標は、あなたが自立的に問題に対処できるようになることです。カウンセリングの目的の一つは、自分自身のカウンセラーになることの支援でもあります。

カウンセリングは、杖のようなものではなく、むしろ自分で歩む力を強くするトレーニングのようなものです。最終的には、カウンセリングがなくても自信を持って人生の課題に立ち向かえるようになることが目標です。

最後に

あなたの不安や懸念は当然のものであり、多くの人が同じように感じています。ブログで紹介できるのは一般的な例になることをご理解下さい。個別の疑問・質問はお問い合わせフォームやLINEにて、遠慮なくお問い合わせ下さい。