わが家には3人の子がいます。末っ子が間もなく20才を迎えます。子育てを終えるときが近づいています。子育てには多くの後悔があります。特に強い後悔は、子どもたちが幼い頃、(怒りなどの)力でコントロールしたことです。長男には特に強く当たっていました。申し訳ない思いで一杯です。この思いは生涯持ち続けるでしょう。
他者に頼るのは生きていく上で必要な能力
もし、子育てをもう一度やる機会を得られたら、子どもたちが頼れる存在でありたいと強く思います。そして、子どもたちには、援助希求的態度が育つような関わりをしたいと強く思います。
【援助希求的態度】問題や悩みを抱えて自分では解決しきれないと感じたときに、誰かに相談したり、 助けを求めたりしようとする態度のこと。
援助希求的態度という言葉が最初に使われたのは、子どもの自殺予防教育だと思われます。平成26年7月1日、文部科学省より「子供に伝えたい自殺予防(学校における自殺予防教育導入の手引)」及び「子供の自殺等の実態分析」が作成・通知されました。
学校における自殺予防教育の目標として、「早期の問題認識(心の健康)」と「援助希求的態度の育成」の2つがあげられています。
問題や悩みを抱えて自力で解決できないとき、他者に相談したり援助を求めたりするのは、生きていく上で必要な能力です。自殺予防に限ったことではありません。うつ病などメンタルヘルス不調に陥らないためにも必要です。
子どものその能力を育てるのは、親の重要な役割だと思います。
頼る能力が自主性・積極性を育てる
エリクソンの発達理論では、0才から2才くらいまでの乳児期の発達課題は「信頼VS.不信」です。赤ちゃんは自力では何もできません。泣くことによって空腹などを養育者に伝えます。その訴えが届いて世話を受けることにより、周囲への信頼が育まれます。
信頼という課題を達成することにより「希望」という力を得ます。それが次の課題に向かう土台となります。
次は、2才から4才くらいまでの幼児前期です。発達課題は「自主性VS.恥」です。歩くなどできることが徐々に増えていきます。自分でやりたがります。親が見守りながらも思うようにさせてあげると自主性が育ちます。
自主性という課題を達成することにより「意欲」という力を得ます。それが次の課題に向かう土台になります。
次は、4才から6才くらいまでの幼児後期です。発達課題は「積極性VS.罪悪感」です。家庭内から保育園や幼稚園と世界が広がります。子どもは遊びなどに積極性を示します。親は躾をしながらも積極性を見守ります。過度に抑えつけると罪悪感を抱きます。
積極性という課題を達成することにより「目的意識」という力を得ます。それが次の課題に向かう土台になります。
エリクソンの発達理論は全部で8つありますが、ここでは以降の段階を省略します。詳しくは以下のページで紹介しています。
エリクソンの発達理論を紹介したのは、頼る力が信頼の土台となり、信頼が自主性の土台となり、自主性が積極性の土台になるのを示すためです。私が自分の子育てを悔いているのは、子どもが充分に頼れる存在になれなかったことです。
頼る力が自己肯定感を育てる
自分に自信がない人(自己肯定感が低い人)の特徴の一つに「他者に頼るのが苦手」があります。拒絶されることに恐れを感じるからなどが理由です。
自信と頼るは、ニワトリが先かタマゴが先かの話です。以下は、自信がなくて他者に頼れない人に起きている循環です。
- (受け入れられる)自信がない
- ➡ 頼れない
- ➡(受け入れられる)経験ができない
- ➡(受け入れられる)自信が育たない
- ➡ ますます頼れない
- ➡ ますます(受け入れられる)経験ができない
- ➡ 繰り返し
この循環を繰り返しているうちは、自己肯定感が育つのはむずかしいでしょう。一方、他者に頼れる人に起きている循環は以下です。
- (受け入れられる)自信がある
- ➡ 頼れる
- ➡(受け入れられる)経験をする
- ➡(受け入れられる)自信が育つ
- ➡ ますます頼れる
- ➡ ますます(受け入れられる)経験ができる
- ➡ 繰り返し
好循環です。頼って断られることもあるでしょう。自己肯定感が低い人は、自分という人格を拒否された感覚になることが多いです。自己肯定感が高い人は、依頼の拒否と人格の評価を分けて捉えることができます。
他者に頼っていいという感覚は、生きていく上で精神的なセーフティーネットになると思います。
まとめ
- 援助希求的態度とは、問題や悩みを抱えて自分では解決しきれないと感じたときに、誰かに相談したり、 助けを求めたりしようとする態度のこと。
- 他者に頼る能力が、自主性、積極性、自己肯定感を育てる。
- 子どもの援助希求的態度を育てるのは、親の大切な役割の一つ。