【クライエントの声】私は私の好きなように生きていいのだと自信がつきました

執筆者:山崎 孝(公認心理師・ブリーフセラピスト・家族相談士)

※ご本人を許可を得て紹介しています。
※個人の感想です。効果を保障するものではありません。

大阪で教育関係のお仕事をされているAさん(女性20代)。相談はこのようなものでした。

「何かを発言するとき、『周囲は何を期待しているか?』が気になり、あれこれ考えすぎてうまく話せません」

「周囲の期待に応えることばかりを考えているうちに、自分の本音がわからなくなってしまいました」

拝啓

春という季節を感じないままずいぶん暑い季節になりましたが、いかがお過ごしでしょうか。体調など崩されていないでしょうか。

私が初めて山崎さんのもとを訪ねたのはこの雨の日々が終わり、ぎらぎらした夏の季節ですね。考えてみればあれから1年ほどしか経っていないのに、随分昔のことのような気がします。

Aさんのお便り

私が山崎さんを訪ねた頃は、とにかく自分のことが何にも見えていませんでした。自分の気持ち、何がしたいのか、何を目指してどうなりたいのか、好きなもの、嫌いなもの。まるで霧の中にいるように、自分のことが見えていませんでした。

そのくせ、他人の目ばかりが気になって、いつも失敗と非難を恐れて生活していました。「失敗してはならない」「他人の気に障ることをしてはならなし」「必要と思われなければならない」。そんな思いにがんじがらめになっていました。

もちろん、失敗しないなんて不可能です。むしろ、そう思えば思うほど、どんな些細な失敗も気になり、怯えるようになりました。その度に、「自分はなんてダメなんだ」「 きっと失望させたに違いない」「自分を必要とする人なんていない」と、どんどん”負のスパイラル”に迷い込む。そんなことの繰り返しにうんざりしていました。

カウンセリングを受けようと思ったきっかけは、仕事でカウンセラーとご一緒することがあったことでした。一緒に仕事をさせてもらううちに、今の自分に必要なのはこの作業だと思うようになり、母親の後押しもあって、カウンセリングを受ける決心をつけました。

カウンセリングでまず初めに見直したのは父親との関係でした。私はずっと今まで、自分の両親、家族にはとても恵まれて幸せいっぱいに育ったと思い込んでいました。でも、自分の嫌いなところを書き出すたびに、父親の嫌いな部分と一致していることに気づきました。

さらに、「失敗してはならない」「他人の気に障ることをしてはならない」「必要と思われなければならない」という言葉は父が幼い頃から私に言い続けたものでした。

それから、宿題でもなかったのに父親に求めていたものを書き出しました。書いている間、ぼろぼろ涙が出て止まりませんでした。私は家の中で自分の気持ちをこんなふうに吐き出したことがない。それどころか、こんなに求めていたものがあったなんて自覚すらしていなかったことに気づきました。

それ以来、自分をがんじがらめにしていた縄が解けていくように、少しずつ自分の気持ちを自覚できるようになりました。

カウンセリングを繰り返すうちに、取り繕わない自然な自分で人と関われるようになってきました。嫌なことには嫌と言えるようになってきました。他人の目には怯えつつも自分から行動できるようになってきました。

特に、自分の今の「感情」を振り返る作業は効果てきめんでした。今までこんなに感情に嘘をついて、自覚せずに過ごしてきたんだなあと改めて気づきました。

そして不思議なことに、自分が変わり始めたタイミングで、仕事で大きな失敗をしました。逃げ出したい気持ちはもちろんありましたが、失敗を報告し、周りの人に助けを求め、たくさん謝罪をし、自分が失敗をしたことを全力で受け止めました。

それでも自分や周りの環境が何も変わっていないこと、周りの人に助けてもらえるということを体験しました。

驚愕でした。自分が恐れていた「失敗」は、たったそれだけで自分の価値を落としたりしないということにようやく気づきました。

山崎さんがおっしゃった言葉で今も心に残っているものがあります。たわいもない話のなかで、「今、私は山崎さんに変なことを言ったのではないかと気になってしまいました」という私の発言に、「あなたの言葉で不快になるかどうかは、あなたの課題ではなくて、私の課題なんですよ」と答えてくださったことです。

人の反応ばかり気にしてうまくおしゃべりができなかった私に、「ああ、私は好きなように話していいのだ」と思わせてくださった言葉でした。

カウンセリングを終えて、今の私は半年前よりずいぶん心に余裕があります。私は私の好きなように生きていいのだと自信がつきました。自分の気持ちを素直に受け止められるようになりました。

今でもたまに”負のスパイラル”に落ちそうになることがありますが、もう霧の中にいた頃とは違い、自分がどうしたいのかが見えているので短期間で抜け出せるようになってきました。

自分に素直でいられるようになると、他人にも心配りができるようになることにも気づけました。今まで「配慮」と思ってやってきたことが「見放されないための策」だったことにも気づきました。

今思えば、そんなふうに生きていた私は、生きる責任を放棄していたように思います。「自分はダメだから、できないから」 という言葉を言い訳にし、抱えるべき責任から逃げていただけなんだなとおもいます。

私は父親に背負わされていた「理想像」を下ろして、父と私は別人で、言われるとおりになる必要がないのだと思えるようになったとたん、私が望む形ではなかったにしろ、父の私への愛だったのだなあと感じることができました。

そして、最後の自分の課題として、父親に自分がして欲しかったことを伝えることもできました。その作業はとっても辛くて過呼吸を起こすほどでしたが、父が私の気持ちを不器用ながら受け入れてくれ、歩み寄ってくれたことで、本当に私は救われました。今やっと自分の足で立って生きている気がします。

自分の気持ちを素直に受け止め、自分の好きなように生きるということは、勇気がいります。そうやって生きていくことで、自分をよく思わない人、自分を受け入れない人をはっきりすることになるからです。私はずっと、それが怖かったんだということにも気づきました。

でも、自分の好きなように生きることで、自分を受けて入れてくれる人もいることが分かりました。

きっとうまくいかないこともあると思うけど、もう怖くありません。

山崎さん、本当にお世話になりました。これからは山崎さんが私に与えてくれた勇気を、周りの人に私が与える側になっていきたいと思います。

山崎さんの益々のご活躍をお祈り申し上げます。

敬具

「なぜ心理カウンセラーをやっているのだろう?」と昨年あたりからずっと考えていました。仕事をやる意味、理念と言っていいのでしょうか。

Aさんの最後のセッションとなった日、彼女の笑顔を見て思いました。

「笑顔を見たいんやな」
「笑顔を増やしたいんやな」

笑顔には、人の気持ちを和ませる力があります。赤ちゃんの笑顔は最たるものですね。下手なカウンセリング・セラピーよりも人を癒してくれます。

Aさんのカウンセリングを通じて、そんなことに気づきました。忘れられないケースの一つとなりました。

ありがとうございました。これからもずっと応援してます。