心理学における学習とは「経験によって生じる比較的永続的な行動の変化」と定義されています。自らが体験した経験に加えて、他人の行動を観察する経験も行動を変化させます。
テレビの暴力シーンは子どもの暴力を助長するのか?
テレビやゲームの暴力シーンを繰り返し体験することは、暴力に関連する考えや感情を増加させるのか。バンデューラは3才から5才の子どもたちに、大人が暴力をふるっているビデオを見せる実験を行いました。
子どもたちは3つのグループに分けられました。3つのグループはそれぞれ、前半部分は同じ内容で、後半部分のみ内容が異なるビデオを見せられました。後半の内容は以下の3つです。
- 暴力をふるった大人が報酬を得る
- ビデオの後半を見せない
- 暴力をふるった大人が別の大人から罰を受ける
前半の内容は、大人が暴言を吐きながら人形に殴る蹴るの暴力を加えるシーンです。後半は上記の内容です。ビデオの視聴後、3グループの子どもたちを同じ人形がある部屋に連れて行きました。
子どもたちは人形で遊んでよい言われて遊び始めました。3グループの中で、罰を受けたシーンをを見たグループの子どもたちは、他のグループより暴力を行う率が低い結果となりました。観察学習によって暴力行為を学び、記憶に知識として暴力の構造をとどめたと考えられています。
バンデューラはカナダの心理学者です。行動心理学の大家の一人です。「自己効力感(self-efficasy)」を提唱したことでも知られています。自己効力感とは「物事に対して、上手く行動できる、達成できる」という感覚です。自信(自尊感情・自己肯定感)を構成する要素の一つです。
メディアの影響による攻撃性に関する様々な研究の結果によると、現段階では、攻撃的な行動には複数の要因が関わっていて、暴力シーンの視聴だけで暴力行為が増大するとは断言できないようです。
モデリング(観察学習)の過程
バンデューラは観察学習の検討を進めて、その過程を提唱しました。以下の4つの過程です。
- 注意過程(モデルの行動に注目する)
- 保持過程(観察した行動を記憶する)
- 運動再生過程(その行動を再生する)
- 動機づけ過程(行動を強化する)
運動再生過程は、監査した行動を実際にやってみて、行動を修正しながら習得していく過程です。動機づけ過程における行動の強化には、他者からほめられるなどする外的強化、自力で達成する自己強化、他者が賞や罰を受けているのを観察する代理強化があります。
カウンセリングへの応用
カウンセリングでは、望ましい行動を増やして、好ましくない行動を減らすための技法してモデリングを用いることがあります。ロールプレイ(ロールプレイ)はモデリングの例の一つです。恐怖症の克服や基本的な生活習慣を獲得する社会技能訓練(SST)などに用いられています。
ロールプレイの例
母娘でロールプレイしたのだろうと推測されるツイートが拡散されていたので紹介します。
母娘のがんばりの結果、すばらしい結末が訪れます。続きはTwitterでご覧ください。
NLPのモデリング
NLPという心理学では、理想的なモデルの行動を真似ることによって、自分を理想の状態へ導くテクニックとして、モデリングが紹介されています。
うちの子が通っていた中学の吹奏楽部は毎年優秀な成績を残しています。公立校なのでスカウトなどありません。なのに毎年安定して優秀な理由の一つは、当たり前のレベルが高いからだと思います。
多くの新入部員は楽器未経験で入部します。うちの子も同じでした。そんな子たち目の前で、先輩たちは全国レベルの練習をしています。自然と質の高い考えと行動がモデリングされます。
ただ行動を真似れば良いというわけではなく、思考や感情など目に見えないところが重要とする考えがあります。必ずしもそうではありません。うつ病のカウンセリングでは、行動活性化という技法がよく用いられます。行動を変えることによって、思考や感情の変化につなげます。
心理学を勉強した人にとって、モデリング(観察学習)の提唱者がバンデューラであるのは基礎中の基礎です。ですが、検索するとNLPのテクニックとする情報がたくさんヒットします。なぜなのでしょう?