【HSP・アダルトチルドレン】ラベル付けの功罪

山崎 孝(公認心理師・ブリーフセラピスト・家族相談士)

普段は自転車通勤ですが、雨が続くので電車通勤が続いていました。先日、電車内で上記の広告を目にしました。

HSP(とても敏感な人)を目に耳にする機会が増えました

「HSP」という言葉を目に耳にする機会が増えています。来談された方に「HSPって知ってますか」「私、HSPなんです」と言われる機会も増えました。

「Highly Sensitive Person」の略語で、直訳すると「とても敏感な人」です。敏感すぎるが故に人間関係などで、やりづらさ、生きづらさを抱えやすい人という認識を持っています。

医学用語ではありません。「とても敏感」という状態をあらわす言葉です。AC(アダルトチルドレン)もそうです。

ラベル付けの効用

HSPやアダルトチルドレンのように、ラベルで表現することにはメリットがあります。

  • 納得感を得られる。
  • 自分と問題を切り離すことができる。
  • その結果、自分を過度に責めずにすむ(ことを期待できる)。
  • 他人に理解してもらいやすくなる。
  • 自分だけじゃないと安心感を得られる。

HSPを定義づけすることによって、現状に変化がなくても、感情的に多少なりとも気持ちが和らぐのを感じることがあります。今のままでいいのかもと感じる人もいるかもしれません。とてもいいことだと思います。

ラベル付けの悪影響

メリットがあればデメリットもあります。

  • HSPと思うことによってその傾向が強化される。
  • 同じHSPでも人や環境によって生きづらさの違いがありえるが、HSPとしてひとくくりにして思考停止しやすい。
  • HSPじゃない人にはわからないんだと溝ができやすい。自分から距離をとって支援を得られにくくなる。

一歩引いて眺めてみましょう

現在のHSPブームは、メディアによって作られた側面がとても大きいと感じています。目的はビジネスです。書籍などの情報を販売するためです。著者は純粋な思いで上梓されていると思いますが、その思いを(過剰に)ビジネスに利用されていると感じます。

(ビジネス自体を悪だと考えていません。私も営利事業としてカウンセリングルームを営んでおります。バランスの問題です)

以下のコンテンツは、HSPの研究者によるHSPブームへの警鐘です。「○○型HSP」のようなタイプ分けの研究はまったく行われていないなど、情報を鵜呑みにすることの危うさが理解できます。ぜひ一読下さい。

著名なセラピストによる以下のようなツイートもあります。海外でもHSPブームに警鐘が鳴らされているようです。

HSPカウンセラーを名乗る援助者がいるようです。そのマーケティング手法は否定しません。存在を知ってもらわなければお役に立つことができませんから。私のスタイルではありませんので採用しませんけど。

具体的な困りごとに取り組んでみませんか

当カウンセリングルームでは、HSPやアダルトチルドレンなどを改善しようとは考えません。仮にその人がHSPだとしたら、そのことにより日常で具体的にどのような問題が生じているのだろう、どのような悩みを抱えているのだろうと考えます。そして、その軽減・解決を目的とします。

同じHSPの方でも、その人が置かれている状況などによって問題や悩みは異なります。具体的な問題・悩みにに焦点を当てて軽減・解決を目指します。

もちろん、以上の考え方が唯一絶対の方法ではありません。HSPに焦点を当てて取り組みたい方もいらっしゃるでしょう。それも間違いではありません。ご自身が納得できるように取り組むのが望ましいです。

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